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2022.03.09

オペラ『トスカ』を初心者でもわかりやすく解説します

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石川了(音楽・舞踊ナビゲーター)

海外ドラマにも匹敵するストーリー~《トスカ》はドラマ好きにも面白い!
まるでジェットコースタードラマ!
 『24 -TWENTY FOUR-』『ウォーキング・デッド』『愛の不時着』『イカゲーム』…。皆さんはどんな海外ドラマがお好きだろうか。今やアメリカ、韓国のみならず、中国や東南アジア、北欧、トルコなどのドラマも視聴可能になり、海外ドラマの人気はジャンルや老若男女を問わない。そんなドラマ好きが、もしクラシック音楽にちょっと興味があり、オペラも一度は観てみたいと思っているなら、この「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22」の《トスカ》は、そのきっかけとしてオススメだ。
 オペラ自体は2時間位と見やすく、ストーリーは恋愛から疑い、嫉妬、罠、拷問、殺人へと一気に展開する、まるでジェットコースタードラマ。《蝶々夫人》《ラ・ボエーム》《トゥーランドット》で知られるイタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニの音楽はどこまでも美しく、1話40分を3話分(全3幕)イッキ見する感覚で楽しめる。

オペラの宝石
 舞台は、ナポレオン軍がヨーロッパを席巻中の1800年6月。共和国が廃止され、ナポリ王国の警察長官スカルピアが恐怖政治を敷くローマ。共和派の画家カヴァラドッシは脱獄したアンジェロッティをかくまうが、カヴァラドッシの恋人トスカは彼の行動を疑う。スカルピアはトスカの嫉妬心を利用して罠にかけ、カヴァラドッシを逮捕し拷問にかける。トスカは、カヴァラドッシの命と引き替えに彼女の身体を要求してきたスカルピアを殺害。恋人たちはスカルピアの手から逃れたようにみえたのだが…。
 カヴァラドッシがトスカへの愛を歌う「妙なる調和」、トスカに罠を仕掛けたスカルピアの「行け、トスカ~テ・デウム」、自らの過酷な運命に絶望するトスカの絶唱「歌に生き、愛に生き」、処刑を前にカヴァラドッシがトスカを想う「星は光りぬ」など、緊迫のドラマに散りばめられた名アリアの数々は、このオペラの宝石だ。

旬のアーティスト!
 この「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22《トスカ》」は、日本ではあまり知られていないヨーロッパで今旬のアーティストにも注目したい。日本の音楽ファンにとっては、噂で聞く彼らの活躍ぶりを自分の目と耳でチェックできる絶好の機会だ。
 まずはトスカを演じる1986年ロシア生まれのソプラノ、エレナ・スティヒナ。2019年ザルツブルク音楽祭《メデイア》を皮切りに、マリインスキー歌劇場《炎の天使》(ヴァレリー・ゲルギエフ指揮)やミラノ・スカラ座《サロメ》(リッカルド・シャイー指揮)など、主要歌劇場で評判となっている若手ソプラノだ。カヴァラドッシを歌う1994年英国生まれのフレディ・デ・トンマーゾは、20代半ばにして名門レーベル、デッカ・クラシックスと契約したテノールの若き逸材。スカルピアを演じるラッセル・クロウ似のアレクセイ・マルコフは、マリインスキー歌劇場来日公演でもおなじみのロシアのイケメンバリトンだ。
 指揮は、本公演でロイヤル・オペラ・ハウスデビューを飾った1978年ウクライナ出身の女性指揮者オクサナ・リーニフ。2021年にバイロイト音楽祭初の女性として《さまよえるオランダ人》を指揮。2022年1月からボローニャ歌劇場音楽監督(イタリアの歌劇場初の女性監督)に就任。破竹の勢いで、今もっとも目が離せないオペラ指揮者だ。
 彼女は、バイエルン州立歌劇場の当時の音楽総監督キリル・ペトレンコ(現在はベルリン・フィル首席指揮者・芸術監督)のアシスタントを務め、劇場たたき上げのキャリアを積み上げてきた。この《トスカ》では、歌手とオーケストラをコントロールし、歌手の声を守りながらオーケストラも存分に歌わせる、師匠譲りの歌心と絶妙なバランス感覚が素晴らしい。第2幕と第3幕の休憩時に挿入される彼女のインタビューとリハーサル風景も必見だ。

 ドラマファンにとってもクラシック音楽ファンにとっても、「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」は、感染対策が万全な映画館における新しいエンターテイメントとして楽しめるはずだ。海外ドラマのワクワク・ハラハラをオペラでも共有できる《トスカ》を、オペラハウスの臨場感が味わえる大スクリーンと迫力のサウンドで、ぜひ一度体験してみてほしい。

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2022.02.18

ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』タイムテーブルのご案内



世界中で上演される名作バレエの決定版、人気のピーター・ライト振付『くるみ割り人形』。
大きくなるクリスマス・ツリー、美しい雪の精たち、そしてお菓子の国で繰り広げられる華やかな宴。

2020年4月から新型コロナウイルスの影響によってロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスは長い間閉鎖され、同年12月には、演出を一部変更して『くるみ割り人形』が上演されるも、わずか4公演で中止に。その後、徐々に復活し、昨年12月には、中止となった公演はあったものの、無事に上演され、パンデミック下で沈んでいた人々に舞台の魔法で喜びと希望を与えてくれました。

当初、金平糖の精役は高田茜が出演予定でしたが、怪我のために降板、代わりに若手実力派ヤスミン・ナグディが優雅で洗練された踊りで魅了します。王子役には、驚くべき高い跳躍と輝かしいテクニックの持ち主セザール・コラレス。
くるみ割り人形とハンス・ピーター役には、日本出身で上昇気流に乗るアクリ瑠嘉。クララ役は同じく若手の可憐なイザベル・ガスパリーニ。花のワルツをリードするローズ・フェアリー役は日本出身の崔由姫が華やかに舞い、他にも前田紗江、佐々木万璃子、佐々木須弥奈、五十嵐大地など期待の日本人ダンサーも随所で登場しています。

映画館上映ならではの幕間映像では、高田茜やアクリ瑠嘉らのリハーサルシーンやインタビューもお楽しみ頂けます。
ロイヤル・バレエならではの豪華さとドラマティックさ満載の夢の世界へ、ようこそ!(2021年12月9日上演作品)

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【振付】ピーター・ライト【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー【指揮】クン・ケセルス
【出演】ドロッセルマイヤー:クリストファー・サウンダーズ
クララ:イザベラ・ガスパリーニ、 ハンス・ピーター/くるみ割り人形:アクリ瑠嘉
金平糖の精:ヤスミン・ナグディ、 王子:セザール・コラレス、 ローズ・フェアリー(薔薇の精):崔由姫 ほか

2021.12.24

『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22』日本版予告映像とポスタービジュアル解禁!全6演目の公開日決定! プリンシパル高田茜さん、金子扶生さんのコメントも到着!

世界最高の名門歌劇場「英国ロイヤル・オペラ・ハウス」で上演されたバレエとオペラの舞台、そして、特別映像をスクリーンで体験できる人気シリーズ『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン』の最新作を、『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22』と題し、2022年2月18日(金)~7月21日(木)までの期間中、全6演目を各1週間限定にて全国公開することが決定いたしました。昨シーズンは新型コロナウイルスの影響によってロイヤル・オペラ・ハウスは長い間閉鎖されていましたが、来年は遂に、バレエとオペラを愛し応援してくださる皆様の元に帰って来ます。

https://youtu.be/cqiUESiq-wU

『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン』は、ロンドンのコヴェント・ガーデンにある歌劇場“ロイヤル・オペラ・ハウス” (通称ROH)で上演された世界最高峰のバレエとオペラを映画館で鑑賞できる人気シリーズ。世界最高クラスのパフォーマンスを大スクリーンで体験できることに加え、リハーサルの様子や舞台裏でのインタビューなどの特別映像も堪能できるということで、シネマシーズンを重ねるごとにファンが増えています。

この度、到着した日本版予告編には、冒頭、プロコフィエフ作曲『ロミオとジュリエット』の荘厳なオーケストラ音楽とともにシネマシーズンを彩る人気演目のワンシーンやリハーサルの様子が次々と登場、シネマシーズンならではの場面がおさめられています。最後は、大きな拍手とチャイコフスキー作曲『くるみ割り人形』の音楽にのせてラインナップが紹介され、臨場感あふれる鑑賞体験への期待が高まる予告編となっています。併せて到着した日本版ポスターには、ロイヤル・オペラ『椿姫』、ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』のカットと共に「再開の時、そして再会の時。ロンドンで再び、白鳥たちが舞い、ディーバたちが歌う。」というコピーと、世界屈指の名門による選りすぐりの名プログラム全6演目がずらりと並び、新型コロナウイルスの影響で延期していた英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズンが遂に“再開”、あの感動と興奮に“再会”となります。

【全6演目】
◆バレエ演目:『くるみ割り人形』、『ロミオとジュリエット』、『白鳥の湖』
◆オペラ演目:『トスカ』、『リゴレット』、『椿姫』

また、今年5月、ロイヤル・バレエ団に在籍している金子扶生さんがプリンシパルに、佐々木万璃子さんがファーストアーティストに昇格したことは日本でも大きなニュースとなって報じられました。既に、高田茜さん、平野亮一さんはプリンシパルとして活躍中ですが、他にも、
アクリ瑠嘉さん、崔由姫さんなど、日本出身のダンサーが現役で活躍しており、その姿を日本で観られることでも大きな注目を集めています。
そして、この度、プリンシパルの高田茜さんと金子扶生さんよりシネマシーズン開幕によせてコメントが到着しました!!


高田 茜さん(プリンシパル)
やっとROHシネマシーズンで、皆様に舞台をお届けできる日が来ました!夢の世界の「くるみ割り人形」、心に深く残る恋物語「ロミオとジュリエット」、一度は是非観てほしいロイヤル・バレエ団の「白鳥の湖」です。ロンドンの舞台の空気を是非、お楽しみください!


金子扶生さん(プリンシパル)
ロイヤル・バレエ団のメンバーは、いつも日本のファンの皆様からの心あたたまる励ましに感謝しています。シネマシーズン2021/22は選りすぐりの演目をご覧いただきます。スクリーンを通して素晴らしい音楽に包まれて私たちのベストパフォーマンスを味わっていただけると幸いです。

2022年2月18日(金)より、いよいよ開幕する『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22』が贈る感動と至福の時間を、是非映画館でご体験ください!

【2021/22 全6演目と公開日】

●ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』:2022年2月18日(金)~2月24日(木)
●ロイヤル・オペラ『トスカ』:2022年3月11日(金)~3月17日(木)
●ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』:2022年4月8日(金)~4月14日(木)
●ロイヤル・オペラ『リゴレット』:2022年5月20日(金)~5月26日(木)
●ロイヤル・オペラ『椿姫』:2022年6月10日(金)~6月16日(木)
●ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』:2022年7月15日(金)~7月21日(木)

<上映劇場>

*TOHOシネマズ 日本橋(東京)
*イオンシネマ シアタス調布(東京)
*TOHOシネマズ ららぽーと横浜(神奈川)
*TOHOシネマズ 流山おおたかの森(千葉)
*ミッドランドスクエアシネマ(愛知)
*イオンシネマ 京都桂川(京都)
*大阪ステーションシティシネマ(大阪)
*TOHOシネマズ 西宮OS(兵庫)
*サツゲキ(北海道)
*フォーラム仙台(宮城)
*中州大洋映画劇場(福岡)

2021.05.19

英国ロイヤル・バレエ <祝>金子扶生さん プリンシパル昇進!そして佐々木万璃子さんはファースト・アーティストに昇進!

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズンを楽しみにして下さっている皆様

既にご存知の方もいらっしゃいますが、嬉しいニュースがロンドンから届きました。
先シーズン「眠れる森の美女」で主役のオーロラ姫を演じた金子扶生(ふみ)さんが最高位のプリンシパルに昇進しました!!!怪我を克服しながら実績を積んできた金子さん、シネマシーズンでも「眠れる森の美女」以前から重要な役をたくさん任されて期待に応えてきました。これからも益々のご活躍を楽しみにしたいと思います。

英国ロイヤル・バレエでは、既に高田 茜さん、平野亮一さんもプリンシパルとして活躍中ですが、今回、同バレエ団に在籍している佐々木万璃子さんもファースト・アーティストに昇進しました。金子さん、佐々木さん、お二人とも おめでとうございます!

それから今回の昇進のニュースには、シネマシーズンでもおなじみのセザール・コラレスさん、9月からはマヤラ・マグリさん、アナ = ローズ・オサリヴァンさんもプリンシパルに昇進するほか、ファースト・ソリストにミーガン・グレース・ヒンキスさん、カルヴィン・リチャードソンさん、ニコル・エドモンズさんが昇進しています。

またコロナ禍で長らく閉まっていたロイヤル・オペラ・ハウスは17日(現地時間)からロイヤル・オペラの「皇帝ティートの慈悲」で ようやく再開し、ロイヤル・バレエは18日(現地時間)「21世紀の振付家たち」で再開されました。金子扶生さんがプリンシパルとして初めて舞台に立つのは、20日(現地時間)の「21世紀の振付家たち」の中の「ウィズイン・ザ・ゴールデン・アワー」になります。
(なお、金子さんはロイヤル・オペラの「皇帝ティートの慈悲」にも出演中です)

英国ロイヤル・バレエでは、今回昇進した金子扶生さん、佐々木万璃子さんのほか、プリンシパルの高田茜さん、平野亮一さん、ファースト・ソリストのアクリ瑠嘉さん、崔由姫さん、ファースト・アーティストの桂千理さん、アーティストの中尾太亮さん、前田紗江さん、佐々木須弥奈さん、研修生の五十嵐大地さんと、多くの日本出身のダンサーが活躍中です。
今後の皆さんのご活躍を楽しみに応援していきたいと思います。

               2021年5月19日

                            東宝東和株式会社

2020.12.24

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズンのファンの皆様へ

師走の候、皆様におかれましては、ご清祥のこととお慶び申し上げます。

平素より英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズンへのご愛顧を頂戴しまして厚く御礼申し上げます。今年度のシネマシーズン2019/20につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、予定しておりました演目の上映中止が相次ぎ、ファンの皆様に作品をお届けする事が叶わず、残念なシーズンでありました事を大変心苦しく思っております。
またご周知の通り英国ロンドンでは、更なる感染拡大によりロックダウンに至っているとのニュースが入っております。例年通りであれば、既に来シーズンの日程、演目などのアナウンスは終わっている所でありますが、いまだ本国より現況、情報が入ってきておりません。本国から正式なアナウンスがあり、公開への準備が整いましたところで改めてご案内申し上げ、更なるご厚情を賜りたいと考えております。

例年とは異なるクリスマス、年末年始となりますが、本国のロイヤル・オペラの関係者、オーケストラ、合唱の団員の方々、ロイヤル・バレエ団のダンサー、及びスタッフの皆様方の健康と、一日も早い劇場の復活を祈ると共に、日本でのシネマシーズンを楽しみにして下さっています皆様方の健康をお祈り申し上げます。

                      2020年12月24日

                            東宝東和株式会社

2020.09.03

バレエ『眠れる森の美女』 金子扶生さんへの電話インタビューが届きました


オーロラ役・金子扶生
「ファンの皆さんに、そして同僚や教師など皆さんに応援していただけることが私のパワーになります」

9月4日(金)より再公開される英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン、ロイヤル・バレエ『眠れる森の美女』。降板したローレン・カスバートソンに代わり、映画館中継の当日に急きょ主役のオーロラ役を務めた金子扶生(ふみ)。突然のキャスト変更にも関わらず落ち着いた演技で見事に代役を務め、ひときわ華やかな存在感、エレガントで美しく正確な踊りで観客を魅了してニューヒロインの誕生を印象づけた。ロンドンでステイホーム生活を送っている最中の彼女に、この公演についての電話インタビューが届きました。

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リラの精役を踊る予定が、当日の午後に急きょ主役を踊ることに。

Q: 今回、映画館中継の当日に急きょオーロラ役に抜擢されましたが、当初はリラの精を踊る予定だったところ、当日の午後に変更を伝えられた際の気持ちはいかがでしたか?

金子扶生(以下 金子):「こんな急な代役での主演は初めての経験でした。ここまでのプレッシャーを感じたのも初めてでした。火曜日の公演だったのですが、その前の土曜日にローレン・カスバートソンさんが一度『眠れる森の美女』のオーロラ役を踊っていて、その時も私はリラの精を踊っていました。1幕が終わってからローレンさんがあまり調子良くないと言っていて、それでも2幕を踊っていました。この『眠れる森の美女』では2幕と3幕の間の休憩がないのですが、もう彼女が踊れないということになりました。私はまだリラの精の衣装を着ていたのですが、ケヴィン・オヘア監督がオーロラを踊ってくださいと言って、その日は3幕だけオーロラ役を踊りました。その時もびっくりだったのですが、月曜日にはローレンさんは大丈夫ということで火曜日は踊る予定と監督からも聞いていたので、私はリラの精役に集中していました」

「映画館中継当日の午後2時くらいに、この日もローレンさんが踊れないとなったので、急遽パートナーのフェデリコ・ボネッリさんと振りを確認することになり、振りを合わせてそのまま舞台に出ることになりました。普段は1か月以上かけて練習して役の準備をするのですが、その時はもう1か月以上オーロラ役を踊っていない状態だったので、不安で泣いてしまったりもしたのです。映画館中継もあったので、怖かったのです。でも出るからには気持ちを切り替えて思い切って舞台に立ちました。」

Q:王子役のフェデリコ・ボネッリさんとの共演はいかがでしたか?

金子:「フェデリコ・ボネッリさんとは、一度クリストファー・ウィールドン振付の『冬物語』で主役を一緒に踊らせていただいたきりです。でも彼は本当に素晴らしいパートナーなので、安心して踊ることができました」

カンパニーみんなの応援で力をもらい、大役を踊りきる。

Q:今回の「眠れる森の美女」の映像を拝見すると、周りの共演者の皆さん、そして司会のダーシー・バッセルさんが扶生さんに対して見守る気持ちを込めていて、とても応援されているのを感じました。舞台に立っていらした扶生さんも、同僚の皆さんからのサポートは感じられましたか?

金子:「カンパニーのすべて、みんながとても応援してくれました。いつもそうなのですが、皆さんいい人ばかりで、本当にそこに救われました。この舞台の前も皆さんはとても応援してくださって、急なことだったのに手紙やプレゼントも贈ってくれたり楽屋で応援してくれたり。これがないと踊り切れなかったと思います。」

「(オーロラ役としても名高い)ダーシー・バッセルさんは面白い方なのですが、とても私を応援してくださっています。私が11月にオーロラ役のデビューをしたときにずっとコーチングをしてくださいました。役デビューが終わって一度バイバイ、という感じだったのですが、当日はいきなり私がオーロラ役になって驚かれていました。が、この当日も応援してくださいました。経験を積んでこられたバレリーナの方たちがこうしてコーチングしてくださるのはとても貴重だと思います。」

「私の16歳のバースデー・パーティにようこそ!」

Q:『眠れる森の美女』のオーロラ姫を演じて、ご自身で最も印象に残っているシーンなどはありますか?

金子:「『眠れる森の美女』の中では、やはりローズ・アダージオが一番印象的なシーンですね。登場するところからローズ・アダージオまでが一番大事というか、緊張します。いきなり舞台に出てきて、とても緊張するバランスがあります。これを最初にしなければなりません。ここを踊るのを楽しめたら、嬉しいです。ローズ・アダージオは音楽が素晴らしくて、音楽を聴くだけで体が震えて、音楽に助けられました。主役を演じる時、ずっと舞台に立っていたらだんだん体も慣れてくるのですが、オーロラ役は最初が見せ場なので、難しいですね。1幕は若々しい16歳の姫です。友達と言っていたのが、「私の16歳のバースデー・パーティにようこそ❤」、それくらいの楽しい気持ちで踊ります。2幕はもっと繊細な感じで。この幕での衣装が大好きなのです。3幕は結婚式でクラシックな踊りをします。体力的にも大変なバレエですが、特に1幕が一番体力的にきつい作品です。今回のこの中継の時には頭が真っ白になりました。だからお客様に応援していただくのが力になります。」
※なお、この1幕のローズ・アダージオをリハーサルするシーンは、この映画館上映での幕間映像で上映される。ダーシー・バッセルとケヴィン・オヘアが金子さんを指導する様子を観ることができる。

Q.ロイヤル・バレエでは3月半ばに急に公演がキャンセルされて、ダンサーの皆さんは自粛期間に入りました。その間はどのように過ごされていましたか?

金子:「ロイヤル・バレエの舞台が3月にキャンセルされてしまったのですが、2週間後に『白鳥の湖』のオデット、オディール役のデビューの予定でした。ずっとこの役を練習し続けていたのですが、急に劇場が止まってしまったのでかなりショックで落ち込んでしまいました。でもここでも立ち直って、狭い家の中でできる限りのことをしていました。ピラティスといった家でできることを見つけ、自分の体に向き合うようになりました。今までは踊って疲れてまた次の日になるという繰り返しの毎日だったので、この自粛期間で自分の体に向き合う時間ができましたね。ローリング・ストーンズの曲を使った「ゴースト・ライト」やアシュトン財団の映像など、いくつかの映像プロジェクトにも参加しました。」

Q: 6月27日には、有料配信されたロイヤル・オペラハウスの無観客公演に出演されて、リース・クラークさんと踊られました。

金子:「この公演ではマクミラン振付の『コンチェルト』に出演しましたが、これも急に出演してほしいと電話がかかってきたのです。1週間ほど練習しました。3か月間は家でだけで踊っていたので、かなりチャレンジングでしたが、楽しく踊ることができました。舞台に戻ってこられるだけで嬉しかったです。ケネス・マクミランの『コンチェルト』は名作で素晴らしい作品なので、もう少し時間をかけて練習して、指導もしっかり受けてから出演したかったのですが、1週間でできることをやりました。『コンチェルト』は、ジャンプや回転がたくさん入ったとてもハードな第3楽章は踊ったことがあったのですが、ガラっと違う美しい第2楽章は今回が踊るのがほとんど初めてでした。6年位前に日本で平野亮一さんと踊ったので久しぶりということになります。」

「少しでも劇場でバレエを観ている気持ちになっていただけたら」

Q:  本作で劇場へ久々に足を運ぶ方も多いと思いますが、そんな日本のファンの方へ、金子さんからのメッセージをお願いいたします。

金子:「コロナ禍など、このような暗いニュースがある中、そして劇場にも足を運べなくなっている中、少しでも映画館で劇場にいるような気持になっていただけたら嬉しいです。こうして応援していただけることでパワーをもらえます。日本の皆さんにはいつも応援していただきありがとうございます。」

最近では“クマ”という名前の子犬も飼い始めたという金子さん、おっとりとした上品な口調の中に、愛らしさと意志の強さが伝わってくる。今後ますますの活躍が期待される。

英国ロイヤル・バレエの『眠れる森の美女』は、第二次世界大戦後の1946年に、ロイヤル・オペラハウスの再オープニングを飾った作品。今回の上映の幕間の映像では、その当時、戦後の物資がない中で衣装や舞台装置を苦労して揃えた逸話なども披露される。戦争で傷ついた人々の心を美しいバレエが癒し、英国の復興を後押しした。コロナ禍で傷ついたバレエファンの心も、この素晴らしい『眠れる森の美女』で輝いた新しいヒロイン、金子扶生で癒されることだろう。事態が落ち着いて、バレエが観られる平和な毎日となることが待ち遠しい。

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2020.08.19

ロイヤル・オペラ『フィデリオ』<タイムテーブルのご案内>



2020年はベートーヴェン生誕250周年にあたるアニバーサリー・イヤー!ベートーヴェンが手がけ完成させた唯一のオペラ作品がシネマシーズンに登場! 100万人に1人の声の持ち主と言われるノルウェー人ソプラノ、リーゼ・ダヴィドセンが、男装で<フィデリオ>に臨み熱唱!

18世紀後半、政治犯として投獄され監獄に囚われた夫、フロレスタンを救い出す為に、レオノーレは男装し<フィデリオ>と名乗り、監獄の仕事に就く。救出の機会を伺うが、政敵ピツァロが夫を亡き者にしようとやってきて。。。
第1幕は当時の時代考証に合わせた重厚な舞台装置で展開されるが、第2幕は超現実的な設定で舞台上にスクリーンを設置する等、前衛的な演出でクライマックスへと突き進む。
ベートーヴェン作曲の唯一のオペラ作品となるが、レオノーレが夫フロレスタンへの愛を歌う「訪れよ、希望よ」とフロレスタンの歌う「人の世の美しき春にも」などのアリアが知られている。指揮はロイヤル・オペラ・ハウスの顔、アントニオ・パッパーノ。

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【作曲】ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン  
【演出】 トビアス・クラッツアー
【指揮】 アントニオ・パッパーノ
【出演】レオノーレ/フィデリオ:リーゼ・ダヴィドセン
フロレスタン:ディヴィッド・バット・フィリップ
ピツァロ:シモン・ニール
マルツェリーネ:アマンダ・フォーサイス
ロッコ:ゲオルク・ツェッペンフェルト 

2020.08.13

オペラ『ラ・ボエーム』を初心者でもわかりやすく解説します

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石川了(音楽・舞踊プロデューサー)

<何気ない日常がこんなに愛おしい―――胸を熱くする『ラ・ボエーム』>
コロナ禍の中で―――音楽を楽しむ選択肢
 誤解を恐れずに言えば、数百年の間、戦争や革命、疫病や社会の変化に適合しながら生き残ってきたクラシック音楽は、ウィルスのようなものだと思う。その音楽に触れた者を幸せにし、死ぬまで夢中にさせるウィルス。クラシック音楽はきっと、今回のコロナ禍でも自らの存在価値を急速に変容させながら、その楽しみ方を多種多様に増殖させていくのだ。
 しかし、今はまだ、大人数の飛沫が懸念されるオペラは、通常の形での再開が厳しい。だから、生のオペラが叶わないならば、大きなスクリーンと劇場の音場を持つ映画館でのオペラ鑑賞を、音楽を楽しむ選択肢の一つに加えてみてはどうだろう。

夢を糧に生きる若者たちを描いたオペラ
 その第一歩として最適なのが、8月14日から上映予定の英国ロイヤル・オペラ公演『ラ・ボエーム』だ。
 お金は無くても夢を糧に生きる若者たちの日常を描いた、イタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニ(1858~1924)4作目のオペラで、作曲家自らの青春時代が投影された瑞々しいサウンドが、約2時間という映画のようなコンパクトな長さに凝縮されている。その余りに切ないストーリーと音楽に、オペラをあまり観たことがない方でも涙腺崩壊必至だ。
 原作は、フランスの文人アンリ・ミュルジェールの実体験に基づく小説『ボヘミアンの生活の情景』。因みに、ボエームとはボヘミアンのフランス語で、自由に生きることに憧れた19世紀パリの芸術家の卵たち(もしくは芸術家気取りの若者たち)のことを指す。
 オペラでは、詩人ロドルフォと画家マルチェッロ、音楽家ショナール、哲学者コルリーネが、ひとつ屋根の下で、その日暮らしの生活に四苦八苦。薪も買えず自らの作品(紙)をストーヴに燃やして暖をとる始末だ。大家の家賃の催促をあの手この手で逃れ、なけなしの稼ぎで買った1匹の魚とワインをみんなで分け合う彼ら。そんな中、ロドルフォはお針子ミミと出会い、お互いに心を寄せ合う。一方、マルチェッロと歌手ムゼッタは愛し合っているのに喧嘩ばかり。しかし、ミミの病気は進行し、彼女はロドルフォに別れを切り出す。そして、ミミはみんなに見守られながら死んでいく・・・。
 ロドルフォとミミが出会うアリア「冷たき手を」「私の名はミミ」、彼らが心を寄せ合う二重唱「愛らしい乙女よ」、マルチェッロの気を引きたいムゼッタのアリア「私が街を歩くと」、ロドルフォに別れを告げるミミのアリア「さようなら、あなたの愛の呼ぶ声に」、2組のカップルの別離の四重唱「楽しい朝の目覚めも、さようなら」、別れた恋人を忘れられないロドルフォとマルチェッロの二重唱「もう帰らないミミ」、病気のミミを助けようと自分の外套を売るコルリーネのアリア「古い外套よ、聞いてくれ」など、誰もが一度は耳にしたことがある名旋律が満載だ。

ソニア・ヨンチェヴァ独壇場の最終幕
 今回の映像は、日本での知名度は低いが歌に演技に秀でた歌手が多く出演し、いい意味でスター歌手のカリスマに邪魔されないリアルな芝居が楽しめるのがポイント。まさにシェイクスピアの国、英国ならではの演劇オペラが堪能できる。演出は演劇畑でも知られるリチャード・ジョーンズ。舞台装置はミュージカル『タイタニック』のスチュワート・ラングで、特に第2幕は、舞台がパリの雑踏からカフェ・モミュスのレストランに自然に転換するなど、驚きの連続だ。
 歌手では、やはりミミを歌うブルガリア生まれのソプラノ、ソニア・ヨンチェヴァに注目だろう。東欧出身らしい豊潤な声と確かな演技力で、英国ロイヤル・オペラとNYメトロポリタン歌劇場を中心に世界中で活躍している。特に、第3幕はヨンチェヴァの独壇場。最終幕のミミの死も、その迫真の演技から目が離せない。

 『ラ・ボエーム』は、今青春を謳歌している若者たちにも、若き日に青春を謳歌した熟年層にも胸を熱くするオペラだ。
 幸い、国内の映画館は再開され、館内の換気やソーシャルディスタンスの確保など、観客と従業員の安全のためのさまざまな感染予防対策が講じられている。今こそ、ウィズコロナ社会の新しい生活様式の中で、映画館でクラシック音楽を楽しむ第一歩を踏み出してみようじゃないか!

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2020.08.05

ロイヤル・オペラ『ラ・ボエーム』<タイムテーブルのご案内>



誰もが忘れられない青春の歌。活気にあふれた19世紀のパリを舞台に
若者たちの愛と死を描くプッチーニの傑作

「冷たき手を」「私の名はミミ」「私が街を歩けば」「さらば古外套よ」など、オペラを愛する人なら誰でも聴いたことがある名アリアの数々。ミュージカル『レント』の原作としても知られている《ラ・ボエーム》は、初めてオペラを観る人にも真っ先に薦めたい作品だ。プッチーニの旋律はなぜこんなにも人の心を捉え、揺さぶるのだろうか?誰もが一度は若者だった。そして将来の夢をかなえようと葛藤していたはずだ。プッチーニ自身の人生も投影されている若き芸術家たちの物語は、観客の胸を熱くさせる。

英国ロイヤル・オペラで40年以上ものあいだ上演されてきた伝統的な《ラ・ボエーム》の舞台が新しくなったのは2017年のこと。リチャード・ジョーンズの演出は、よりモダンでシンプルな舞台装置と、細部に凝った演技が特徴だ。特に映像ではその良さが堪能できるだろう。第1幕の屋根裏部屋のグレーを基調にした色彩から、第2幕のパリの華やかなクリスマス・イヴへの変化も見事。ヒロインのミミにはスター歌手ソニア・ヨンチェヴァが出演、リリックな声と情熱的な歌唱で涙を誘う。詩人ロドルフォは容姿と声のバランスがとれたテノール、チャールズ・カストロノボが出演。他にもムゼッタのシモーナ・ミハイ、マルチェッロのアンジイ・フィロニチックを始めとする若々しいキャストが出演。指揮のエマニュエル・ヴィヨームはプッチーニの書いたオーケストラの色彩を引き出し高い評価を得た。更に英国ロイヤル・オペラの合唱団は歌も達者だが、各々が役者としても秀逸で、第2幕における彼らの活躍も見逃せない。

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【作曲】ジャコモ・プッチーニ 
【演出】リチャード・ジョーンズ  
【指揮】エマニュエル・ヴィヨーム
【出演】ミミ:ソニア・ヨンチェヴァ
ロドルフォ:チャールズ・カストロノボ
ムゼッタ:シモーナ・ミハイ
マルチェッロ:アンジイ・フィロニチック 他

2020.08.05

ロイヤル・バレエ『コッペリア』<タイムテーブルのご案内>(再上映)

 Cast Swanilda: Marianela Nunez, Franz: Vadim Muntagirov, Dr Coppélius: Gary Avis, Coppelia; Asley Dean, Aurora; Claire Calvert, Prayer; Itziar Mendizabel, Conducted by Barry Wordsworth

コミカルな人形振りから、クラシック・バレエの粋まで楽しめる
ロマンティック・コメディの名作が、久しぶりにロイヤルの舞台に帰ってくる!

『コッペリア』はE.T.A.ホフマンの小説「砂男」を原作とし、1870年にパリ・オペラ座で初演。美しい人形コッペリアに恋したフランツとその恋人スワニルダ、そしてコッペリアを生み出したコッペリウス博士が織りなす、ロマンティック・コメディ。

英国ロイヤル・バレエで踊られているのは、バレエ団創設者ニネット・ド・ヴァロア版で、1954年の初演からレパートリーとして大切に踊られてきた。クラシック・バレエの技巧からコミカルな人形振り、民族舞踊までちりばめられ、ドリープ作曲による美しいメロディと共に、幅広い世代に愛されている。マリアネラ・ヌニェスのコメディエンヌぶり、ワディム・ムンタギロフの華麗な超絶テクニックは必見。
尚、特別映像の中にはデビュー時のヌニェスの姿が映るが、その時主役スワニルダ役を演じたのは吉田都だった。

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【振付】二ネット・ド・ヴァロア(イワ-ノフ、チェケッティ原振付)
【音楽】レオ・ドリーブ 【指揮】バリー・ワーズワース
【出演】スワニルダ:マリアネラ・ヌニェス フランツ:ワディム・ムンタギロフ
コッペリウス博士:ギャリー・エイヴィス 市長:クリストファー・サウンダース 宿屋の主人:エリコ・モンテス
スワニルダの友人:ミカ・ブラッドベリ、イザベラ・ガスパリーニ、ハンナ・グレンネル、ミーガン・グレース・ヒンキス、ロマニー・パイダク、レティシア・ストック
ペザントの女性:マヤラ・マグリ 公爵:ルーカス・ビヨルンボー・ブレンツロド
オーロラ(曙):クレア・カルヴァート 祈り:アネット・ブヴォル