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2022.12.12

ロイヤル・バレエ『うたかたの恋 ーマイヤリングー』タイムテーブルのご案内


 


平野亮一が堂々シーズン・オープニングアクトの主演を飾り絶賛された
ドラマティック・バレエの傑作がスクリーンに登場!

1889年、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフが、17歳の愛人マリー・ヴェッツェラと心中したマイヤリング事件。
英国バレエを代表する巨匠ケネス・マクミランは、1978年にこの実話をバレエ化。両親に愛されず、政略結婚を強いられ、宮廷内の策略など政治的にも翻弄されてきた皇太子ルドルフは次から次へと愛人を作り、苦悩し病んでいくー。本作は、『ロミオとジュリエット』、『マノン』と並んで彼の最高傑作となった。
ルドルフ皇太子を演じるのは、日本出身の平野亮一。バレエ作品には珍しく男性が主人公である本作で6人もの女性ダンサーと超絶技巧のパ・ド・ドゥを繰り広げる。いつかは演じてみたいと男性バレエダンサーたちが熱望するこの役のシーズン初日に抜擢され、さらに、その模様が世界中の映画館で中継されたのは、平野の高い演技力とパートナーリング技術の確かさが信頼を勝ち取っている証。辛口で有名な英国の批評家たちから大絶賛を浴び、主要紙すべてで4つ星を獲得した。
ルドルフ皇太子を取り巻く登場人物たちも、ナタリア・オシポワ、ラウラ・モレーラ、マリアネラ・ヌニェス、フランチェスカ・ヘイワードとロイヤル・バレエを代表する綺羅星のようなスター揃い。またルドルフが唯一心を許す御者のブラットフィッシュには、日本出身で上昇気流に乗るアクリ瑠嘉が扮し、軽妙で鮮やかな踊りと心温まる人間性を見せてくれる。
(2022年10月5日上演作品)


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【振付】:ケネス・マクミラン 【音楽】:フランツ・リスト
【美術】:ニコラス・ジョージアディス 【指揮】:クン・ケセルズ
【出演】ルドルフ皇太子(オーストリア・ハンガリー帝国皇太子):平野亮一
マリー・ヴェッツェラ(ルドルフの愛人) ナタリア・オシポワ
ラリッシュ伯爵夫人(ルドルフの元愛人):ラウラ・モレ―ラ
皇妃エリザベート(ルドルフの母):イツィアール・メンディザバル
ステファニー王女(ルドルフの妻) フランチェスカ・ヘイワード
ミッツィー・カスパー(高級娼婦でルドルフの愛人):マリアネラ・ヌニェス
ブラットフィッシュ(ルドルフのお気に入りの御者):アクリ瑠嘉
4人のハンガリー将校 リース・クラーク 他

2022.12.06

特別編:オペラ『蝶々夫人』を解説します

家田 淳(演出家・翻訳家 洗足学園音楽大学准教授)

多様性の時代におけるオペラ

2021年秋のこと。
「ロイヤル・オペラ・ハウスが、演目から人種差別的な要素を撤廃する方針」というニュースを、たまたまネットで目にした。
近年、欧米では#MeToo運動、Black Lives Matter運動に背を押され、エンタテインメント業界でも人種・性的マイノリティを積極的に登用したり、マイノリティの社会をフィーチャーした作品を作る動きが盛んで、有色人種や女性を入れて多様性を出すことは、一時的なトレンドにとどまらない大きな流れになっている。
「ついにオペラも時代の波に乗ったか」と感心しながら記事を読んだ数日後、ロイヤル・オペラ・ハウスから一通のメール。
なんと劇場が「蝶々夫人」の既存演出をアップデートするプロジェクトを立ち上げるので、日本側の代表の一人として参加してもらえないか、という打診だった。

「蝶々夫人」は言わずと知れた明治の長崎を舞台にしたプッチーニの名作だが、欧米で上演される場合、そこに登場する日本は80年代のハリウッド映画に描かれるような妙ちくりんなフジヤマ・サムライ・ニンジャのジャパンであることが、残念ながら多かった。
このロイヤル・オペラ・ハウスの既存プロダクション(2003年初演)も、比較的ましな方ではあるものの、衣裳やメイクは、もうどこから突っ込んでいいか判らないほど間違いだらけ。日本人役のメイクは歌舞伎風の白塗りで、目は吊り目、着物は単なるVネックのローブ。明治時代なのに髪型は平安時代。
そこについにメスが入るのか…!! 時代は変わるものだ。果たして自分がその重責に相応しいのか不安には思いつつも、オンラインで会議に出席して意見を述べたり、専門家を紹介して会議の通訳や資料の翻訳をする形で、2022年春、改訂「蝶々夫人」が上演されるまでプロジェクトに参画した。

アップデートの現場では
劇場側の真摯な姿勢は、差別されてきた側の日本人の方が頭が下がるほど。「20世紀初頭の西洋優位の価値観で書かれたこのオペラを、レパートリーに残しておくべきなのか?」というそもそも論に始まり、「バタフライ(蝶々さん)の家の使用人たちの姿勢や態度が卑屈すぎる。日本人を格下に置くような演技を修正すべき」「衣裳、メイクはできるだけリアルにしたい」といった提案が次々となされた。
ただ衣裳については、本来であれば一から作り直すか、現地に日本人の専門家が飛んで現物を使って手取り足取り教えないことには、とても小手先で直せる範囲ではない。しかしコロナ禍でのプロジェクト、こちらはオンライン参加にとどまるしかできず、どこまで意図が伝わり正確に現場に反映されるのか、フラストレーションもあった。

舞台衣裳デザイナーの半田悦子氏を招いて、衣裳とヘアメイクの具体的な改善点を伝えていた時のこと。大量の参考写真やイラストを見せながら、一つ一つの役柄についてダメ出しをしていくが、Zoomではなかなかニュアンスが伝わりづらい。
しびれをきらした半田氏がズバリ一言。「あの、皆さんは、こういう吊り目のメイクが日本人らしい顔を表しているとお考えなのでしょうか?」
…シーン。
向こう側の空気が凍りついたのが、画面越しでもわかった。
(「えっ、違うの?」「でもそれって言っちゃいけないやつだよね(汗)」)という彼らの脳内セリフが見える。
しばしの沈黙ののち、向こうから一言。「それこそが、私たちが教えてほしいことなのです」
半田氏、少しため息をついて「ええとですね、日本人の女性は、自分を可愛く見せるために、目は丸みをもって描きます」 なるほど、と納得の空気。
そうか。日本人といえば吊り目なんだ、今でも。
いわゆるアジア人ステレオタイプが、今そこにいる人たちの頭の中にもしっかり生きていることが、露わになった瞬間であった。

更に別の回で、キャスティングが話題になった際の話。参加者の一人として呼ばれていた若い中国人メゾソプラノ歌手が、明るく言い放った。「私にはしょっちゅうスズキ役のオファーが来るけど、断っています。一度受けるとその役ばっかりが来て、他の役ができなくなってしまうから」
軽くガツンとやられた。もし私だったら、ヨーロッパの歌劇場からオファーがもらえるだけで嬉しいと思ってしまう気がする。少なくとも過去にはアジア人歌手はそうやって、バタフライやスズキのスペシャリストとして生きていくケースが多かったのではないだろうか?
近年は中国人や韓国人の歌手が世界の歌劇場で大躍進しているが、この歌手も「人種枠」はハナから念頭になく、むしろお断りなわけだ。時代はどんどん進んでいるのだなあ。
この「人種枠で特定の役に縛られると、歌手本人のキャリアが狭められてしまう問題」についても色々と意見が出た結果、「アジア人の役にはアジア人を積極的に起用する。ただし『人種だけではなく実力で選んでいる』と歌手本人に示すために、例えばスズキ役をオファーする場合には、別の作品の役も同時にオファーすれば良いのでないか」というところで締め括られた。

また、演技面ではムーヴメントの専門家の上村苑子氏が現地で稽古に参加し、歌手に和の所作を指導した。その様子は付録映像で紹介されている。

心からの敬意を
このようなプロセスを経てお披露目となったのが、このシネマシーズンで上映される「蝶々夫人」。衣裳の細部などは完全とは言えないものの、欧米で上演される「蝶々夫人」の舞台としては相当に自然かつリアルで、音楽とドラマに集中できる仕上がりとなっているのではないだろうか。
何より、こういった問題認識がなされ、劇場をあげて解決に取り組もうという姿勢、オペラ・ハウスもまた現代社会を担う一端であり、発信する作品は社会に対して責任があるという信条は学ぶべきことが多く、心から敬意を表したいと思う。

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2022.12.05

ロイヤル・オペラ『蝶々夫人』タイムテーブルのご案内


あのミュージカルの原作で、フィギュアスケートの選曲としても知られる『蝶々夫人』
英国ロイヤルの名舞台が日本をリスペクトした改訂版で帰ってくる!

明治時代の長崎を舞台に、アメリカ海軍士官ピンカートンの現地妻となった蝶々さんが、夫に捨てられ日本の社会から孤立し、ついには愛する息子まで奪われ…という悲劇を、イタリア・オペラならではの旋律美で余す所なく描き出す。
19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパで起こった日本ブームによって、日本をテーマにした絵画、小説、演劇などに加え、日本を題材にしたオペラがいくつも生まれたが、その中の決定版がプッチーニ作曲の『蝶々夫人』。アリアはフィギュアスケートの音楽などに使われ、大ヒットしたミュージカル「ミス・サイゴン」の原作としても知られている。
モッシュ・ライザー&パトリス・コーリエによる演出は、2003年に英国ロイヤル・オペラで初演されたもの。今回の上演は、近年の芸術分野に求められるアジア文化への尊重という課題を反映して、劇場側が、舞台のムーヴメントを指導する上村苑子氏、衣裳デザイナー半田悦子氏、ロンドン大学日本近現代史 博士鈴木里奈氏、演出家の家田 淳氏をコンサルタントとして招き、1年かけてアップデートし作り上げた改訂版。
蝶々さんを歌ったのは、イタリアを代表するソプラノ歌手・マリア・アグレスタ。蝶々さんは15歳の少女として登場し、第2幕以降はその3年後というごく若い娘の役でありながら、厚みのあるオーケストラを突き抜けて響く声も必要。マリア・アグレスタは、リリック・ソプラノであり、丸みを帯びた美声と情熱的な歌唱、そして舞台を支配するカリスマ性でロンドンの観客を熱狂させた。
(2022年9月27日上演作品 上映時間3時間14分)


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【作曲】ジャコモ・プッチーニ
【演出】モシェ・レイザー&パトリス・コーリエ
【指揮】ニコラ・ルイゾッティ
【出演】マリア・アグレスタ、ジョシュア・ゲレーロ 他

2022.11.24

『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23』全13演目の公開日決定!日本版予告映像とポスタービジュアル解禁!バレエは、世界が絶賛した平野亮一主演『うたかたの恋 ーマイヤリングー』で開幕!!

世界最高の名門歌劇場である英国ロイヤル・オペラ・ハウスで上演されたバレエとオペラの舞台を、特別映像を交えてスクリーンで体験できる「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」。“ロイヤル・オペラ・ハウス”は、9月8日に崩御したエリザベス2世が長年パトロンを務めてきたことでも知られています。 この度、新シーズンを、『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23』と題し、2022年12月9日(金)~2023年9月28日(木)までの期間中、史上最大のスケールとなる全13演目を、各1週間限定にて全国公開することが決定いたしました。ライブでの観劇の魅力とは一味違う、映画館の大スクリーンと迫力ある音響で、日本にいながらにして最高峰のオペラとバレエの公演を堪能できる、至極の体験をお届けします。

未だかつてないスケールで贈る「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23」がいよいよ開幕!
選りすぐられた6本のバレエと7本のオペラ!
日本版予告映像とポスタービジュアルが到着&全13演目と公開日が決定!

「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」は、ロンドンのコヴェント・ガーデンにある歌劇場“ロイヤル・オペラ・ハウス” (通称ROH)で上演された世界最高峰のバレエとオペラを映画館で鑑賞できる人気シリーズ。世界最高クラスのパフォーマンスを大スクリーンで体験できることに加え、リハーサルの様子や舞台裏でのインタビューなどの特別映像も堪能できるということで、シーズンを重ねるごとにファンが増えています。

新シーズン、オペラのオープニングは、日本を舞台にしたプッチーニ作曲、悲劇の傑作オペラ『蝶々夫人』(12月9日公開)が日本をリスペクトした改定版で幕を開けます。続いて、バレエのオープニングは、ドラマティック・バレエの傑作、 平野亮一が堂々と主役を演じた『うたかたの恋 ーマイヤリングー』(12月16日公開)。英国で10月5日に上演された本作は、主要紙すべてで4つ星を獲得、彼の演技は、辛口で有名な英国の批評家たちから大絶賛を浴び、世界に生中継されたことでも話題を呼びました。また、日本出身で上昇気流に乗るアクリ瑠嘉も出演。日本にゆかりのあるオペラの演目、そして、バレエは、日本出身のダンサーたちがオープニングを飾るという大注目の新シーズン。以降の作品も、あまりにも有名な演目が揃い踏みで、史上最大規模の13作品はどれも見逃せません。
この度、到着した日本版予告編には、冒頭、ヴェルディ作曲の『イル・トロヴァトーレ』のスケール感あふれる音楽とともに、シーズンを彩る各作品のワンシーンが次々と登場、後半は、プッチーニ作曲『蝶々夫人』より、「ある晴れた日に」の美しいアリアと共に、全13作品の豪華ラインナップの詳細が紹介され、期待高まる予告編となっています。併せて到着した日本版ポスターには、各作品のシーンカットと「人生を満たす、情熱のオペラ、魅惑のバレエ。」というコピーと共に「女王陛下に、愛と感謝を込めて。」と長年、ROHのパトロンを務めてきたエリザベス女王2世へ向けての思いが添えられ、世界屈指の名門による選りすぐりの名プログラム全13演目がずらりと並びます。

【全13演目】
◆バレエ演目:①『うたかたの恋 ーマイヤリングー』、② 『ダイヤモンド・セレブレーション』、③『くるみ割り人形』、 ④『赤い薔薇ソースの伝説』、⑤『シンデレラ』、⑥『眠れる森の美女』
◆オペラ演目:①『蝶々夫人』、②『アイーダ』、③『ラ・ボエーム』、④『セビリアの理髪師』、⑤『トゥーランドット』、 ⑥『フィガロの結婚』、⑦『イル・トロヴァトーレ』

12月9日(金)より、いよいよ開幕する『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23』が贈る情熱と魅惑に満ちた至福の時間を、是非映画館でご体験ください!

【2022/23 全13演目と公開日】※1週間限定公開※

①ロイヤル・オペラ『蝶々夫人』:2022年12月9日(金)
②ロイヤル・バレエ『うたかたの恋 ーマイヤリングー』:2022年12月16日(金)
③ロイヤル・オペラ『アイーダ』:2023年1月6日(金)
④ロイヤル・オペラ『ラ・ボエーム』:2023年1月20日(金)
⑤ロイヤル・バレエ『ダイヤモンド・セレブレーション』:2023年2月17日(金)
⑥ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』:2023年2月24日(金)
⑦ロイヤル・バレエ『赤い薔薇ソースの伝説』:2023年3月24日(金)
⑧ロイヤル・オペラ『セビリアの理髪師』:2023年5月19日(金)
⑨ロイヤル・オペラ『トゥーランドット』:2023年6月2日(金)
⑩ロイヤル・バレエ『シンデレラ』:2023年6月16日(金)
⑪ロイヤル・オペラ『フィガロの結婚』:2023年7月7日(金)
⑫ロイヤル・バレエ『眠れる森の美女』:2023年8月25日(金)
⑬ロイヤル・オペラ『イル・トロヴァトーレ』:2023年9月22日(金)

<上映劇場>

*札幌シネマフロンティア(北海道)
*フォーラム仙台(宮城)
*TOHOシネマズ 日本橋(東京)
*イオンシネマ シアタス調布(東京)
*TOHOシネマズ 流山おおたかの森(千葉)
*TOHOシネマズ ららぽーと横浜(神奈川)
*ミッドランドスクエア シネマ(愛知)
*イオンシネマ 京都桂川(京都)
*大阪ステーションシティシネマ(大阪)
*TOHOシネマズ 西宮OS(兵庫)
*中洲大洋映画劇場(福岡)

2022.07.15

ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』タイムテーブルのご案内



天才振付家の新演出で一新、生まれ変わったあの「白鳥の湖」がシーズンのフィナーレを飾る!!
日本人ダンサーの活躍にも注目!

 チャイコフスキーのあまりにも美しく心を揺さぶる旋律に乗せた、クラシック・バレエの不朽の名作『白鳥の湖』。2018年5月、ロイヤル・バレエ団によって31年ぶりに新演出によるプロダクションに一新された本作が、スクリーンに帰ってきました!従来の白鳥たちが舞う湖畔のシーンはそのままに、気鋭の美術家ジョン・マクファーレンによる絢爛たる舞台美術と初演当時弱冠31歳の天才振付家、故リアム・スカーレットによる新しい振付を加えたプロダクション。英国バレエ伝統の演劇性を強調した、鮮烈で壮麗な「白鳥の湖」決定版です。
2022年5月19日に収録された今回のシネマでは、昨年の出産から舞台復帰を果たした英国バレエ界の名花、ローレン・カスバートソンがオデットとオディールを繊細に、詩情豊かに演じます。ジークフリート王子役は、映画版『ロミオとジュリエット』のフレッシュなロミオ役で人気が急上昇し、この5月プリンシパルに昇進した新星ウィリアム・ブレイスウェル。女王の側近で、その正体は悪魔ロットバルトを、ロイヤル・バレエを代表する名優ギャリー・エイヴィスが持ち前のカリスマ性で重厚に演じます。
 王子と友情を越えた強い絆で結ばれている友人ベンノ役には、日本出身で躍進が続くアクリ瑠嘉。また大きな白鳥の一人には、『くるみ割り人形』の薔薇の精などで抜擢が続く佐々木万璃子、小さな4羽の白鳥の一人と、イタリアの王女には注目の前田紗江。この他にも随所に日本人ダンサーの活躍が見られるのも見どころのひとつです。今回の公演はローレン・カスバートソンのロイヤル・バレエ団在籍20周年を記念し特別なカーテンコールが行われました。衝撃と感動の幕切れ、壮麗な愛の傑作をぜひともスクリーンでご堪能下さい。
(2022年5月19日上演作品)

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【振付】:リアム・スカーレット(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ原振付に基づく)【追加振付】:フレデリック・アシュトン(3幕ナポリの踊り)
【音楽】:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 【演出】:リアム・スカーレット【美術】:ジョン・マクファーレン 【指揮】:ガブリエル・ハイネ
【出演】 オデット/オディール:ローレン・カスバートソン  ジークフリート王子:ウィリアム・ブレイスウェル  女王:クリスティーナ・アレスティス
ロットバルト:ギャリー・エイヴィス  ベンノ:アクリ瑠嘉  ジークフリートの妹たち:イザベラ・ガスパリーニ、ミーガン・グレース・ヒンキス

2022.07.11

英国ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』公開記念&ロイヤル・バレエ・ガラ来日公演記念 日本への思い、日本人ダンサーへの称賛を熱く語る!!

英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルダンサーで、
本作ではジークフリート王子を演じるウィリアム・ブレイスウェルが登壇!
『白鳥の湖』公開&ガラ来日公演記念トークショーを実施しました!!

7月15日(金)から全国公開となる英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン「白鳥の湖」の先行上映前に、ゲストを呼んでのトークショーを実施。当初登壇を予定していたケヴィン・オヘア芸術監督の日本到着が遅れ、急遽、本作「白鳥の湖」でジークフリート王子を演じるプリンシパルダンサーのウィリアム・ブレイスウェル氏が登壇することになった。ブレイスウェル氏は、7月13日(水)から渋谷のBunkamuraオーチャード・ホールで始まるロイヤル・バレエ・ガラ公演の為に来日、日本に到着してから間もないにもかかわらず、疲れをみせず、日本のファンに向けて温かいメッセージを寄せてくれた。

まず冒頭では、「お招きをいただきありがとうございます。この場に来られたことがとても光栄で、ご覧いただけることを嬉しく思っています。この数年世界は大変で、さらにこの数日、日本は大変な時期だった思いますが、「白鳥の湖」を観て楽しんで欲しいです」と挨拶。続いて、今期シネマシーズンのラストを飾る「白鳥の湖」の見どころについては、「リアム・スカーレットの振付、ジョン・マクファーレンのセットデザイン、さらには、チャイコフスキーの音楽とこの三つが一緒になることで素晴らしい作品になっています。個人的には、第一幕のジークフリート王子が狩りに行くシーンが好きです。また、オデット&オディール役の大ベテランのローレン・カスバートソンとは、過去に一度だけ「くるみ割り人形」で踊ったことがあったのですが、ケヴィン・オヘア芸術監督が私とローレンの相性が良いということで、才能溢れる彼女と再び踊れることができ、とても幸せでした。また、彼女が産後に初めてフルの作品にでるということで、一緒に役柄を追求する場にいれたことも大変光栄でした。」とコメント。

来期のシネマシーズンのラインナップ(「うたかたの恋 -マイヤリング-」「くるみ割り人形」「ダイアモンド・セレブレーション」「赤い薔薇ソースの伝説」「シンデレラ」「眠れる森の美女」)より「くるみ割り人形」で金子扶生(ふみ)さんのシュガープラム(金平糖の精)とのパ・ド・ドゥで王子役を踊ることについては、「金子扶生さんとは以前も踊ったことがあるのですが、他のダンサーにはだせないエレガントで技術的な素晴らしさを持ち合わせ、それは夢のような体験です」と最大の賛辞を贈った。

また、7月13日からのガラ公演に関しては、「何よりも日本に来れたことが嬉しくて、とても楽しみにしていました。Aプロでは、佐々木万璃子さんと「白鳥の湖」2幕のパ・ド・ドゥを踊るのですが、彼女ほど努力する人はないのではと思うほど、この数週間、一生懸命に稽古されていました。努力家でそして美しい人です。「白鳥の湖」では大きな白鳥を演じていて、こちらも素晴らしいので楽しみにしてください。Bプロでは、大ベテランのマリアネラ・ヌニェスさんと「グラン・パ・クラシック」を初めて踊ります。彼女も初めてとのことですが、彼女ほどの大ベテランが新しいことに挑戦するのは珍しいなと思いました。完璧主義者で、ディテールにこだわって稽古されているので、私も対等に踊るために稽古を苦労しました」とエピソードを披露した。

また、日本のバレエファンへ向けて「日本は大好きな国の一つで、日本で踊れることが楽しみで仕方ありません。日本のお客様は温かくて、バレエに対しての敬意を感じます。本当に心の底から感謝しています。また実は、今日ご覧いただく「白鳥の湖」のシネマ公演直後に舞台袖で、ケヴィン・オヘア芸術監督から、プリンシパルの昇進を告げられて、大泣きしました。そんなこともあり、この作品は私にとってとても特別な作品になりました。皆様に是非楽しんでいただきたいです。」と温かいメッセージを寄せ、場内は大きな拍手でイベントは終了した。

2022.07.05

【出演者変更のお知らせ】英国ロイヤル・バレエ「白鳥の湖」公開記念& ロイヤル・バレエ・ガラ来日公演記念 7/10(日)トークショー開催!

7月10日(日)TOHOシネマズ日本橋にて予定していましたトークショー付先行上映ですが、
ゲストとして予定していました英国ロイヤル・バレエ団 ケヴィン・オヘア芸術監督につきまして
昨日ロイヤル・バレエ・ガラ公演の招聘元を通し、以下の連絡が入りました。

「ケヴィン・オヘア氏の来日が急遽予定よりも遅れることになり、トークイベントへの出演が不可能になりました。その為「白鳥の湖」の王子役でプリンシパル・ダンサーのウィリアム・ブレイスウェルが先に日本に到着予定になっていますので、同団内で代わりに出演の打診をした所、快諾してもらいました」

上記がバレエ団より入ったとのことでした。
急な変更で、ケヴィン・オヘア氏のお話を楽しみにされて来場されるお客様には、本当に申しわけありませんが、
ぜひウィリアム・ブレイスウェル氏のお話を楽しんで頂ければ幸いです。  東宝東和株式会社

『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22』より、フィナーレを飾る6作目は、チャイコフスキーによる美しくも心揺さぶる旋律に乗せたクラッシック・バレエの不朽の名作『白鳥の湖』が、7月15日(金)より全国公開。

2018年5月、ロイヤル・バレエ団によって31年ぶりに新演出で一新された本作は、従来の白鳥たちが舞う湖畔のシーンはそのままに、気鋭の美術家ジョン・マクファーレンによる絢爛たる舞台美術と初演当時弱冠31歳の天才振付家、故リアム・スカーレットによる新しい振付を加え、高い評価を得ているプロダクション。ライブでの観劇とは一味違う体験を、再びお届けします。

チケットは、7/6(水)0:00~(TOHOシネマズ会員は7/5(火)21:00~先行)、劇場HPにて販売開始となります(料金:一般3,700円/学生2,500円)。

7月10日(日)13:00開演 @TOHOシネマズ日本橋 
https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/073/TNPI2000J01.do

2022.06.10

ロイヤル・オペラ『椿姫』タイムテーブルのご案内



ロンドンの観客が熱狂し、新たな伝説が生まれたー

 アレクサンドル・デュマ・フィスの戯曲をヴェルディがオペラ化した『椿姫』は、『リゴレット』と並ぶ中期三大傑作の一つ。舞台は19世紀半ばのパリ、貴族や富豪たちの寵愛をほしいままにしていた高級娼婦ヴィオレッタは、青年アルフレードとの真実の愛に目覚めるも、やがて引き返すことのできない事態へと進んでいく悲劇の物語。英国ロイヤル・オペラの『椿姫』は、巨匠リチャード・エアが1994年に初演出し、以来上演され続けている人気の看板プロダクションです。エアの演出は伝統的なスタイルを保持しながらも、気品のあるスタイリッシュな美しさで登場人物たちのドラマを際立たせます。
 ヴィオレッタを演じるのは、南アフリカ出身のソプラノ歌手プリティ・イェンデ。しなやかで光沢のある稀にみる美声の持ち主で、今やオペラ界に欠かせない存在としてスター歌手になった彼女は、2019年パリ・オペラ座の『椿姫』ヴィオレッタ役でブレイク。本作では卓越したテクニックと芸術性、気取りのない自然なスタイルで、善良な若い娘が純愛を貫く姿を情熱的に演じています。また、アルフレード役のスティーヴン・コステロは愛情深い恋人を好演、彼の父ジェルモンはブルガリア出身のバリトン歌手ウラディーミル・ストヤノフが格調高い歌と演技を披露します。指揮は若きイタリア人マエストロ、ジャコモ・サグリパンティ。ワルツのリズムに乗った透明感のある弦楽の響きが美しく、しかも緊迫した場面の推進力も見事。
円熟期のプリティ・イェンデの絶唱にロンドンの観客が熱狂、名舞台『椿姫』に新たな伝説が生まれました。

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【作曲】:ジュゼッペ・ヴェルディ 【台本】:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ(原作:アレクサンドル・デュマ・フィスの戯曲『椿姫』)
【指揮】:ジャコモ・サグリパンティ 【演出】:リチャード・エア 【美術】:ボブ・クロウリー
【出演】:ヴィオレッタ・ヴァレリー:プリティ・イェンデ  アルフレード・ジェルモン:スティーヴン・コステロ
アンニーナ:クセニア・ニコライエワ  ジョルジョ・ジェルモン:ウラディーミル・ストヤノフ

2022.06.07

オペラ『椿姫』を初心者でもわかりやすく解説します

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石川了(音楽・舞踊ナビゲーター)

大ヒット映画「プリティ・ウーマン」と「椿姫」
 もう30年以上も前になるが、世界的に大ヒットした『プリティ・ウーマン』という映画を覚えているだろうか。リチャード・ギア扮する敏腕実業家のエドが、LA出張中に、ジュリア・ロバーツ扮する高級娼婦ヴィヴィアンと一緒に過ごすうちにお互いに惹かれ合い、境遇の差を越えて結ばれるというロマンティック・コメディだ。
 映画の中で、エドがヴィヴィアンと一緒に盛装してオペラを観に行く、その演目が『椿姫』である。第1幕冒頭の華やかなパーティーの音楽から、ヴィオレッタのアリア「花から花へ」、第2幕の別離の絶唱「私を愛してアルフレード、私があなたを愛するくらい」、そして終幕のヴィオレッタの死へと続く。ヴィオレッタとヴィヴィアン、2人の高級娼婦の心情を重ね合わせるようなジュリア・ロバーツの表情が、とても印象的であった。
 エドがバラの花束を持ってヴィヴィアンを迎えに行くラストでは、前述の第2幕の別離の絶唱がドラマティックに奏でられる。ハッピーエンドになぜ別離の音楽が? まあそれはご愛嬌として、筆者にとって『プリティ・ウーマン』は、宣伝文句だった現代版『マイ・フェア・レディ』というより、ヴィオレッタが幸福をつかんだ現代版『椿姫』という感覚の方が近い映画であった。

ロンドンの観客が熱狂し、新たな伝説が生まれた「椿姫」!
 “プリティ”つながりでいえば、英国ロイヤル・オペラハウス シネシーズン2021-22『椿姫』でヒロインのヴィオレッタを演じるのが、1985年南アフリカ生まれのソプラノ、プリティ・イェンデだ。
 筆者は以前クラシック音楽専門チャンネル「クラシカ・ジャパン」で、若手アーティストを紹介する「明日のスターたち」というシリーズを編成したのだが、2012年収録の同番組で、彼女がベッリーニの歌劇『清教徒』の狂乱の場を圧倒的な声で歌っていたのを思い出す。あれから10年、30代半ばのイェンデは、ヴィオレッタを歌うのに欠かせないコロラトゥーラ(コロコロ転がすように歌う軽めの声)と強くドラマティックな声の両方を兼ね備えたソプラノに変貌した。この映像で、その成長ぶりを実感できるのが嬉しい。
 英国ロイヤル・オペラハウス(ROH)公演は、国際色ゆたかなアーティストたちの饗宴も楽しさのひとつ。アルフレードを歌うスティーブン・コステロは、1981年生まれのアメリカ人テノール。海外ドラマ『ベター・コール・サウル』『ブレイキング・バッド』や映画『Mr.ノーバディ』の主演俳優ボブ・オデンカークに少し似ているところも、ドラマ好きには注目してほしいポイントだ。アルフレードの父親ジェルモン役は、当初予定のディミトリ・プラタニアスが病気のため降板し、今や50代のベテランとなったブルガリア人バリトン、ウラディーミル・ストヤノフが代役で出演した。

 指揮は、本公演でROHデビューを果たした気鋭のイタリア人指揮者ジャコモ・サグリパンティ。日本デビューとなった2020年2月の東京二期会『椿姫』公演も記憶に新しい。この『椿姫』では、マエストロ独特のテンポ感が見どころで、歌とオーケストラの多少のズレも何のその、ライブならではの緊張感と音楽の推進力が、映画館で観るオペラの面白さを倍増させている。なお、第3幕が始まる前に挿入されるイェンデとサグリパンティのピアノ稽古は必見!お見逃しなく。

プリティ・イェンデの「椿姫」に全員号泣必至!
 1994年12月初演のリチャード・エア演出が、30年近く経った今なお上演されていること自体、このプロダクションのロンドンでの根強い人気を物語っていると言えよう。サー・ゲオルグ・ショルティが指揮し、ルーマニア人ソプラノのアンジェラ・ゲオルギューが一夜でスター誕生となった初演の模様は、テレビやDVDで観たことのある方も多いだろう。
筆者は、2008年1月に現地ロンドンで、エア演出の『椿姫』を観劇した。キャストは、当時人気絶頂のアンナ・ネトレプコとディミトリ・ホロストフスキー、人気が出始めたばかりのヨナス・カウフマン、指揮はマウリツィオ・ベニーニという布陣だった。初日の公演チケットを、当日の早朝に並んでゲット。筆者も家族も、そして周りに座っていた朝一緒に並んだオヤジたちも全員号泣した、あの興奮は忘れられない。
 身を堕としたヒロインが真実の愛に目覚め、一時の幸福を味わうが、恋人の父親に仲を引き裂かれ、最後に孤独に死んでいく。再演の度に歌手が変わっても、一人の女性の命が燃え尽きようとする一瞬の輝きに、誰もが胸が熱くなるストーリーとヴェルディの音楽。『椿姫』は、『プリティ・ウーマン』のヴィヴィアンのようなオペラを観たことがない人でも、必ず泣けるオペラなのだ。
 映画館の中では、泣いたって大丈夫。ただし、必ずハンカチは持っていくように。

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2022.05.19

ロイヤル・オペラ『リゴレット』タイムテーブルのご案内



ヴェルディの悲劇的オペラの傑作が特別記念上演!
最強の制作陣×ドリーム・キャストで贈る、新たなる「リゴレット」誕生!!

 ヴィクトル・ユゴーの戯曲「王は愉しむ」をもとにしたヴェルディの悲劇的オペラの傑作『リゴレット』。シーズンのオープニング・アクトで上演されたのは、オペラ芸術監督のオリバー・ミアーズが監督就任後初めて演出を手掛けるニュー・プロダクション。指揮は、英国ロイヤルとの長年のコラボにおいても「リゴレット」を指揮するのは初めてという音楽監督のアントニオ・パッパーノ。ミアーズとパッパーノによる最強の組み合わせと言える今回の舞台は、思い切りのよいドラマチックな表現で、1851年の初演から171年を迎えた特別記念上演にふさわしく、ロンドンの聴衆を熱狂させました。
 最大の見どころともいえるのが、現在望みうる最高の歌い手たちによる心揺さぶる名演。世間知らずの恋する乙女・ジルダを演じるのは、ソプラノのトップ歌手リセット・オロペサ。ジルダの心情を見事に表現し尽くし、辛口批評で知られるガーディアン紙が「オロペサの比類なきジルダ」と絶賛。さらに、テノールのリパリット・アヴェティシャンは自分勝手だが憎めないマントヴァ公を輝かしい声で、ブリンドリー・シェラットはコワモテ殺し屋・スパラフチーレを迫力ある低音で、ラモーナ・ザハリアはスパラフチーレの妹マッダレーナを濃厚な美声で好演しました。そして極めつきに、スペインの名歌手カルロス・アルバレスが、タイトル・ロールのリゴレットの苦悩を、声と演技の至芸で表し、聴衆に深い感動を与えます。ドリーム・キャストによる本公演は、まさに「リゴレット」の決定版といえます。(2021年9月24日上演作品)

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【作曲】:ジュゼッペ・ヴェルディ   【台本】:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ(原作:ヴィクトル・ユゴー「王は愉しむ」)
【指揮】:アントニオ・パッパーノ  【演出】:オリバー・ミアーズ  【美術】:サイモン・リマ・ホールズワース  【衣裳】:イローナ・カラス
【出演】マントヴァ公爵:リパリット・アヴェティシャン  リゴレット:カルロス・アルバレス  ジルダ:リセット・オロペサ  スパラフチーレ:ブリンドリー・シェラット  マッダレーナ:ラモーナ・ザハリア  ジョヴァンナ:クセニア・ニコライエワ  モンテローネ:エリック・グリーン