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2022.05.17

オペラ『リゴレット』を初心者でもわかりやすく解説します

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石川了(音楽・舞踊ナビゲーター)

新演出版で今が旬の歌手たちの競演!
パルマでの出来事
 今でも忘れられない、2012年パルマのヴェルディ・フェスティバル「リゴレット」を取材したときの出来事を紹介したい。
 休憩時にトイレに行くと、一人のおじいさんが口笛を吹きながら用を足していた。音楽は、「リゴレット」第三幕の四重唱。すると、トイレに居た男性たちも次々とその旋律を口笛で吹き始め、テアトロ・レージョ(パルマ王立歌劇場)の男子トイレが口笛による「リゴレット」の四重唱で満たされた。
 そう、「リゴレット」の魅力は、この誰もが口ずさめる(口笛でも吹ける)音楽なのだ。

 「リゴレット」は、19世紀のイタリアの作曲家ジュゼッペ・ヴェルディの中期三大傑作のひとつ(他二作は「椿姫」「イル・トロヴァトーレ」)。マントヴァ公爵に仕える道化師リゴレットは、一人娘のジルダを公爵にもてあそばれ、殺し屋スパラフチーレに彼の殺害を依頼するが、公爵を愛するジルダは身代わりとなって殺されるというストーリーだ。
 ヴェルディは、若くして2人の子供と妻マルゲリータを亡くし、二番目の妻ジュゼッピーナ・ストレッポーニは私生児の母であったことから世間の冷たい視線を浴びた。そのような悲しみや苦しみ、そしてヴェルディの父親としての亡き子供たちへの想いが、身体に障害を持つ道化という社会的弱者を主人公に、父娘の愛情を描く心揺さぶられる音楽ドラマを生んだのだと思う。

新プロダクションでのパフォーマンス
 本作は英国ロイヤル・オペラ・ハウスのシーズンの開幕を飾った公演で、演出家のオリバー・ミアーズにとっては、ROHオペラ・ディレクターとして2017年3月に就任以来、初演出となる新プロダクションだ。
この演出では、富と特権を享受する好色なマントヴァ公爵が、美術品の目利きでもあるという設定がユニーク。第一幕では、会員制クラブ風の部屋にティツィアーノの傑作『ウルビーノのヴィーナス』が大きく飾られ、公爵は「女性」と「美術品」の収集家で、両方ともモノ扱いしているという性格が暗示される。
 格差、ジェンダー、社会の分断といった問題も反映され、古典(クラシック)は決して古臭いものではなく、現代にも通じるテーマであることを感じる舞台だ。

 タイトルロールを歌うスペインのバリトン、カルロス・アルバレスは、4年前の筆者のインタビューで、リゴレット役には特別な想いがあると語っている。
 「1993年ミラノ・スカラ座の新制作「リゴレット」で、リッカルド・ムーティよりタイトルロールのオファーをいただきました。彼は声楽的に私の声がリゴレットに合っていると確信していましたが…私は思ったのです。リゴレットをやるには、もう少し歳を取らなくちゃいけない。もう少し人生の苦悩も知らなくてはならないし、ましてや父親であるという経験も必要なのではと。まだ26歳でしたからね。だからマエストロに手紙を書いて丁重にお断りしました。でも50歳を越えて、今がリゴレットを演じるときです。」
大学の医学部に行きながら声楽家になったアルバレス。さまざまな経験を重ねた今、彼のリゴレットは、まさに旬を迎えている。
 この「リゴレット」では、ジルダを歌うソプラノのリセット・オロペサがキューバ系アメリカ人(2022年9月に来日予定)、マントヴァ公爵のテノール、リパリット・アヴェテイスヤンがアルメニア人、スパラフチーレ役のバス、ブリンドリー・シェラットが英国人、マッダレーナを歌うメゾ・ソプラノのラモーナ・ザハリアがルーマニア人と、国際都市ロンドンの歌劇場らしく、出演者がインターナショナル。ROHシネマシーズンは、今欧米で活躍する国際色ゆたかな歌手たちのパフォーマンスを観ることができるのも魅力だ。

パッパーノ!
 最後に指揮者、ROH音楽監督アントニオ・パッパーノを紹介したい。
 彼は1959年生まれ。両親はイタリア人で、ロンドン生まれのアメリカ育ちというコスモポリタンだ。21歳の時、ニューヨーク・シティ・オペラでコレペティトゥア(ピアノを弾きながら歌手に音楽稽古をつける人)としてキャリアをスタート。その後、バルセロナやリセウ歌劇場やフランクフルト歌劇場、シカゴ・リリック・オペラ、さらにバイロイト音楽祭ではダニエル・バレンボイムのアシスタントを務めるなど、歌劇場に育てられた生粋の劇場人である。1992年よりブリュッセルのモネ劇場音楽監督を10年間務め、現在は、サンタ・チェチーリア国立音楽院管弦楽団音楽監督(2005~ )も兼任している。
 劇場とシンフォニーオーケストラの両方を熟知するパッパーノだけに、この「リゴレット」でも、歌手の歌いやすいテンポや音量のバランス、ドラマを牽引するオーケストラの緩急自在なコントロールなど、劇場指揮者としての手腕をスクリーンで堪能したい。特に、パッパーノのリハーサルシーンは必見。マエストロ、メチャ歌がうまい!
 海外情報によると、1億円以上とも報じられるパッパーノの年収に批判もあるらしいが、この映像でもおわかりのように、彼が登場するだけでBravo!が出るほど、ロンドンっ子たちからの絶大な信頼を勝ち得ているようだ。

 そのパッパーノも2024年7月をもってROH音楽監督を退任し、同年9月よりロンドン交響楽団音楽監督に就任予定。さあ、次のROH音楽監督は誰に?

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2022.04.07

ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』タイムテーブルのご案内



英国ドラマティック・バレエの最高峰!!
伝説の初演から530回以上も上演、今なお新鮮さを失わない、ケネス・マクミラン版!

1965年に初演されて以来、世界中で現代の偉大な古典作品と評価されているケネス・マクミラン振付の『ロミオとジュリエット』。ルドルフ・ヌレエフとマーゴ・フォンテーンが主演した伝説の初演からこれまで、530回以上も上演され、ロイヤル・バレエの演技性と、あまりにも美しく儚いロマンティックなバルコニーシーンの二人に心奪われる、まさに英国ドラマティックバレエの最高峰といえる作品です。 主演は、ジュリエット役に、昨年プリンシパルに昇格し、ニューヒロインとして今後の活躍が期待される英国出身のアナ=ローズ・オサリバン、ロミオ役には、しなやかで高い身体能力を誇る若手プリンシパルのマルセリーノ・サンベ。ロイヤル・バレエ・スクールで同級生、私生活でも仲が良いという2人が、運命に翻弄された恋人たちをフレッシュに、ロマンティックに好演。ロミオの親友・マキューシオには端正な実力派のジェームズ・ヘイ、ジュリエットの従兄弟でロミオの恋敵となるティボルトには、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』でザ・スワン/ザ・ストレンジャーを演じたこともあるトーマス・ホワイトヘッドと魅力的なキャスティング。また佐々木万璃子がジュリエットの友人役で華を添えています。  シネマシーズンのお楽しみ、幕間の映像では名ジュリエットとして知られ、現在は指導者として活躍するリャーン・ベンジャミンと、カフカ原作『変身』等強烈な個性で知られ、本年ローレンス・オリヴィエ賞にノミネートされているエドワード・ワトソンが作品の魅力を語っているほか、主演陣のインタビュー、迫力あるソード・ファイトなどのリハーサル映像と見どころが盛りだくさんとなっています!
(2022年2月3日上演作品)

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【振付】ケネス・マクミラン 音楽】セルゲイ・プロコフィエフ 指揮】ジョナサン・ロー
【出演】
ジュリエット:アナ=ローズ・オサリバン  ロミオ:マルセリーノ・サンベ  
マキューシオ:ジェームズ・ヘイ  ティボルト:トーマス・ホワイトヘッド  ベンヴォーリオ:レオ・ディクソン  パリス:ニコル・エドモンズ
キャピュレット夫人:クリステン・マクナリー  キャピュレット卿:ギャリー・エイヴィス  エスカラス:ルーカス・B・ブレンスロッド
ロザライン:クレア・カルヴァート  乳母:ロマニー・パイダク  ローレンス神父╱モンタギュー卿:フィリップ・モーズリー

2022.04.06

バレエ『ロミオとジュリエット』を初心者でもわかりやすく解説します

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森 菜穂美 (舞踊評論家)

2022年は「ロミオとジュリエット」の当たり年!
 今年2022年は日本のバレエ界では『ロミオとジュリエット』の当たり年。国内バレエ団でもK-Ballet Company、東京バレエ団、松山バレエ団、NBAバレエ団と上演が続きます。また映画では『ロミオとジュリエット』を下敷きにしたミュージカル映画の金字塔『ウェスト・サイド・ストーリー』が巨匠スピルバーグの手でリメイクされ、アカデミー賞にもノミネートされ、助演女優賞を受賞しました。他にも昨年11月にリリースされた、アイドルグループなにわ男子のデビュー曲「初心LOVE(うぶらぶ)」では、「二人はめげないロミジュリ」という一節が登場するなど、耳にも形を変えて飛び込んできています。

時代を超えて
 400年以上前に生まれた『ロミオとジュリエット』がなぜ、今も多くの人々に支持されるのでしょうか?そして1965年初演の、ケネス・マクミランの振付による『ロミオとジュリエット』はなぜ数ある『ロミオとジュリエット』の中でも決定版と言われているのでしょうか?そこには、今だからこそ心に響く普遍的なメッセージがあるからです。
 二つの名家キャピュレット家とモンタギュー家の争いは、2022年の世界に暗い影を落としたロシアとウクライナの紛争に見られるように、今も絶えない国際紛争や、Black Lives Matterに象徴されるような人種差別や貧富の差、格差による分断を象徴するように感じられます。スピルバーグ版『ウェスト・サイド・ストーリー』が生まれたのは、この分断がより顕著になってきた今だからこそ伝えたいメッセージがあるという背景からでした。憎しみの連鎖がより大きな悲劇を生み、無垢だったはずの若者が悲劇を迎えてしまうことで争いの虚しさを伝えています。

ジュリエットは世界で最初のフェミニスト
 もう一つ忘れてはならないのは、ジュリエットの描き方です。マクミラン版の『ロミオとジュリエット』を踊った歴代のダンサーの中でも、特にこの役を当たり役としたロイヤル・バレエ団、元プリンシパルのアレッサンドラ・フェリ、そして現役でジュリエットを踊っているロイヤル・バレエ団プリンシパルのサラ・ラムは共に、「ジュリエットは世界で最初のフェミニスト」だと語っています。ジュリエットは14歳と少女の設定ですが、その彼女が、たった一人で家の権威に立ち向かい、両親の意思に反して愛を貫く決意をして勇気ある選択をします。バレエの中では、わずか数日間の間に大人への階段を駆け上り、成長していくジュリエットの姿が印象的ですが、このような強いヒロイン像が400年以上も前に生まれたことに、シェイクスピアの先進性を感じます。
 スピルバーグ版の『ウェスト・サイド・ストーリー』のヒロイン、マリアも自分の方から積極的にロミオにキスをし、そして働いてお金を稼ぎ、大学に行って学ぶという夢を語るなど、自立した女性として描かれています。

踊らない振付
 もちろん、プロコフィエフ作曲による音楽の魅力もバレエ『ロミオとジュリエット』の大きな魅力の一つです。甘美な「バルコニーのパ・ド・ドゥ」、重厚な「騎士たちの踊り」(CMでもおなじみ)、躍動感のある市場の踊り。時に雄大で時に繊細、ドラマティックで華麗な旋律が心を揺さぶります。登場人物のキャラクターを象徴させるライトモチーフの使い方も印象的です。
 そしてマクミラン版『ロミオとジュリエット』の魅力は、何より3つのパ・ド・ドゥの振付の巧みさと音楽との一体化です。「バルコニーのパ・ド・ドゥ」での恋のときめきと高揚感、疾走感は比類のないものです。
さらにそれまでのバレエ作品では見られなかった、常識を覆すような振付も登場します。象徴的なのは、3幕で窮地に追い込まれたジュリエットが、バレエダンサーにも関わらずベッドの上にただ座り、身動きもせず、ただ前を見据える屈指の名場面。雄弁な音楽が流れていき、ジュリエットが愛を貫く決意をする心情が伝わってきます。
 最終場面、墓所で仮死状態になったジュリエットとロミオのパ・ド・ドゥは、「死体は踊らないのでは?」と初演当初には賛否両論を巻き起こしましたが、作品の悲劇性を強調する場面として強烈な印象を残します。マクミランは、若い二人が両家の対立の結果、むごたらしく死ぬ様子をこの作品で描きたかったと語り、ダンサーには醜く見えることを恐れるなと伝えていました。

次世代を代表するフレッシュなダンサー
 ドラマティック・バレエの最高峰である『ロミオとジュリエット』は演技力に優れた英国ロイヤル・バレエを代表する作品です。街の人々や貴族など一人一人の登場人物が、その人の人生を舞台上で生きています。
ジュリエット役のアナ=ローズ・オサリバンは27歳、昨年プリンシパルに昇格したばかりのフレッシュなダンサー。ロイヤル・バレエ・スクール育ちの英国人で、若き日のキャメロン・ディアスを思わせる煌めく青い瞳、愛らしい微笑みが印象的です。往年の名バレリーナ、レスリー・コリアに伝授された正確なテクニックと音楽性に加え、ナチュラルでデリケートなニュアンスを伝える演技力も素晴らしく、これからも楽しみなニューヒロインです。
 ロミオ役のマルセリーノ・サンベはポルトガル出身、アフリカン・ダンスからバレエの世界に入りました。天性の身体能力から導き出される超絶技巧とリズム感もさることながら、明るくチャーミングなキャラクターも魅力的です。ロイヤル・バレエでは史上2番目の黒人男性プリンシパル・ダンサーです。
 二人はロイヤル・バレエ・スクールの同級生として長くパートナーシップを築いてきており、『ロミオとジュリエット』ではその相性の良さが最大限に発揮されています。彼らの「バルコニーのパ・ド・ドゥ」の清新さには、思わず胸がキュンとします。原作ではロミオもジュリエットも10代という若さであるため、初々しくエネルギーにあふれたこの若手キャストによる舞台は特にリアリティが感じられます。

 このシネマシーズンでは、生の舞台の興奮を楽しめますが、特にドラマ性が高い『ロミオとジュリエット』は、出演者の顔の表情のクローズアップも要所で登場し、生の舞台では得られない体験もできます。幕間のインタビューやリハーサル映像も楽しいですが、本作では2013年までプリンシパルとして活躍し、新国立劇場バレエ団にもこの役でゲスト出演するなど名ジュリエットの一人であるリャーン・ベンジャミンと、先日引退し指導者になったエドワード・ワトソン、二人の元プリンシパルによる生のトークも興味深くファンには見逃せません。

~ご参考まで~
https://www.nbs.or.jp/stages/2022/romeo/index.html

http://www.matsuyama-ballet.com/newprogram/romeo_juliet_all.html

https://nbaballet.org/official/romeo_and_juliet/

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2022.03.10

ロイヤル・オペラ『トスカ』タイムテーブルのご案内



逮捕された恋人の命を助ける条件として、警察長官スカルピアがトスカに求めたものは?
スリルとサスペンスに満ちた傑作オペラを重厚なセットで堪能!

プッチーニの傑作オペラ《トスカ》。激動の時代のローマを舞台に、悪の手によって引き裂かれる恋人たちの物語。アリア「歌に生き、愛に生き」に代表されるイタリア・オペラならではの美しいメロディが本作では目白押しです。この情熱とスリルに満ちたストーリーが、ジョナサン・ケントの写実的な演出に、英国ロイヤルならではの重厚なセットと衣裳の美しさも加わり、その世界観をスクリーンで十二分に堪能できます。演劇的にきめ細かいアプローチが深く味わえるのは、細部にわたり映し出される映像だからこそと言えます。
歌手には、一流アーティストたちが集結。トスカ役に、その美貌に加え、声と演技が高く評価され、イギリスの評論でも「神々しいディーバ」と絶賛されたエレナ・スティヒナ、そして、カヴァラドッシ役には、当初予定されていたブライアン・イメルが不調により降板し、若手のフレディ・デ・トンマーゾが出演、イタリア的な音色で聴衆を圧倒し、劇場では拍手とブラボーが飛び交いました。スカルピアのアレクセイ・マルコフは、説得力たっぷりに悪役を演じます。
本作では、近年イタリアを含むヨーロッパ各地で大躍進を遂げているウクライナ出身の女性指揮者オクサナ・リーニフがタクトを取り、エレガントでありながらダイナミックな世界を表現していることにもご注目ください。

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【作曲】ジャコモ・プッチーニ【原作】ヴィクトリアン・サルドゥ「ラ・トスカ」【指揮】オクサナ・リーニフ
【演出】ジョナサン・ケント【再演演出】エイミー・レーン【デザイン】ポール・ブラウン
【出演】 カヴァラドッシ:フレディ・デ・トンマーゾ、 トスカ:エレナ・スティヒナ、 スカルピア:アレクセイ・マルコフ

2022.03.09

オペラ『トスカ』を初心者でもわかりやすく解説します

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石川了(音楽・舞踊ナビゲーター)

海外ドラマにも匹敵するストーリー~《トスカ》はドラマ好きにも面白い!
まるでジェットコースタードラマ!
 『24 -TWENTY FOUR-』『ウォーキング・デッド』『愛の不時着』『イカゲーム』…。皆さんはどんな海外ドラマがお好きだろうか。今やアメリカ、韓国のみならず、中国や東南アジア、北欧、トルコなどのドラマも視聴可能になり、海外ドラマの人気はジャンルや老若男女を問わない。そんなドラマ好きが、もしクラシック音楽にちょっと興味があり、オペラも一度は観てみたいと思っているなら、この「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22」の《トスカ》は、そのきっかけとしてオススメだ。
 オペラ自体は2時間位と見やすく、ストーリーは恋愛から疑い、嫉妬、罠、拷問、殺人へと一気に展開する、まるでジェットコースタードラマ。《蝶々夫人》《ラ・ボエーム》《トゥーランドット》で知られるイタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニの音楽はどこまでも美しく、1話40分を3話分(全3幕)イッキ見する感覚で楽しめる。

オペラの宝石
 舞台は、ナポレオン軍がヨーロッパを席巻中の1800年6月。共和国が廃止され、ナポリ王国の警察長官スカルピアが恐怖政治を敷くローマ。共和派の画家カヴァラドッシは脱獄したアンジェロッティをかくまうが、カヴァラドッシの恋人トスカは彼の行動を疑う。スカルピアはトスカの嫉妬心を利用して罠にかけ、カヴァラドッシを逮捕し拷問にかける。トスカは、カヴァラドッシの命と引き替えに彼女の身体を要求してきたスカルピアを殺害。恋人たちはスカルピアの手から逃れたようにみえたのだが…。
 カヴァラドッシがトスカへの愛を歌う「妙なる調和」、トスカに罠を仕掛けたスカルピアの「行け、トスカ~テ・デウム」、自らの過酷な運命に絶望するトスカの絶唱「歌に生き、愛に生き」、処刑を前にカヴァラドッシがトスカを想う「星は光りぬ」など、緊迫のドラマに散りばめられた名アリアの数々は、このオペラの宝石だ。

旬のアーティスト!
 この「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22《トスカ》」は、日本ではあまり知られていないヨーロッパで今旬のアーティストにも注目したい。日本の音楽ファンにとっては、噂で聞く彼らの活躍ぶりを自分の目と耳でチェックできる絶好の機会だ。
 まずはトスカを演じる1986年ロシア生まれのソプラノ、エレナ・スティヒナ。2019年ザルツブルク音楽祭《メデイア》を皮切りに、マリインスキー歌劇場《炎の天使》(ヴァレリー・ゲルギエフ指揮)やミラノ・スカラ座《サロメ》(リッカルド・シャイー指揮)など、主要歌劇場で評判となっている若手ソプラノだ。カヴァラドッシを歌う1994年英国生まれのフレディ・デ・トンマーゾは、20代半ばにして名門レーベル、デッカ・クラシックスと契約したテノールの若き逸材。スカルピアを演じるラッセル・クロウ似のアレクセイ・マルコフは、マリインスキー歌劇場来日公演でもおなじみのロシアのイケメンバリトンだ。
 指揮は、本公演でロイヤル・オペラ・ハウスデビューを飾った1978年ウクライナ出身の女性指揮者オクサナ・リーニフ。2021年にバイロイト音楽祭初の女性として《さまよえるオランダ人》を指揮。2022年1月からボローニャ歌劇場音楽監督(イタリアの歌劇場初の女性監督)に就任。破竹の勢いで、今もっとも目が離せないオペラ指揮者だ。
 彼女は、バイエルン州立歌劇場の当時の音楽総監督キリル・ペトレンコ(現在はベルリン・フィル首席指揮者・芸術監督)のアシスタントを務め、劇場たたき上げのキャリアを積み上げてきた。この《トスカ》では、歌手とオーケストラをコントロールし、歌手の声を守りながらオーケストラも存分に歌わせる、師匠譲りの歌心と絶妙なバランス感覚が素晴らしい。第2幕と第3幕の休憩時に挿入される彼女のインタビューとリハーサル風景も必見だ。

 ドラマファンにとってもクラシック音楽ファンにとっても、「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」は、感染対策が万全な映画館における新しいエンターテイメントとして楽しめるはずだ。海外ドラマのワクワク・ハラハラをオペラでも共有できる《トスカ》を、オペラハウスの臨場感が味わえる大スクリーンと迫力のサウンドで、ぜひ一度体験してみてほしい。

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2022.02.18

ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』タイムテーブルのご案内



世界中で上演される名作バレエの決定版、人気のピーター・ライト振付『くるみ割り人形』。
大きくなるクリスマス・ツリー、美しい雪の精たち、そしてお菓子の国で繰り広げられる華やかな宴。

2020年4月から新型コロナウイルスの影響によってロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスは長い間閉鎖され、同年12月には、演出を一部変更して『くるみ割り人形』が上演されるも、わずか4公演で中止に。その後、徐々に復活し、昨年12月には、中止となった公演はあったものの、無事に上演され、パンデミック下で沈んでいた人々に舞台の魔法で喜びと希望を与えてくれました。

当初、金平糖の精役は高田茜が出演予定でしたが、怪我のために降板、代わりに若手実力派ヤスミン・ナグディが優雅で洗練された踊りで魅了します。王子役には、驚くべき高い跳躍と輝かしいテクニックの持ち主セザール・コラレス。
くるみ割り人形とハンス・ピーター役には、日本出身で上昇気流に乗るアクリ瑠嘉。クララ役は同じく若手の可憐なイザベル・ガスパリーニ。花のワルツをリードするローズ・フェアリー役は日本出身の崔由姫が華やかに舞い、他にも前田紗江、佐々木万璃子、佐々木須弥奈、五十嵐大地など期待の日本人ダンサーも随所で登場しています。

映画館上映ならではの幕間映像では、高田茜やアクリ瑠嘉らのリハーサルシーンやインタビューもお楽しみ頂けます。
ロイヤル・バレエならではの豪華さとドラマティックさ満載の夢の世界へ、ようこそ!(2021年12月9日上演作品)

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【振付】ピーター・ライト【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー【指揮】クン・ケセルス
【出演】ドロッセルマイヤー:クリストファー・サウンダーズ
クララ:イザベラ・ガスパリーニ、 ハンス・ピーター/くるみ割り人形:アクリ瑠嘉
金平糖の精:ヤスミン・ナグディ、 王子:セザール・コラレス、 ローズ・フェアリー(薔薇の精):崔由姫 ほか

2021.12.24

『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22』日本版予告映像とポスタービジュアル解禁!全6演目の公開日決定! プリンシパル高田茜さん、金子扶生さんのコメントも到着!

世界最高の名門歌劇場「英国ロイヤル・オペラ・ハウス」で上演されたバレエとオペラの舞台、そして、特別映像をスクリーンで体験できる人気シリーズ『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン』の最新作を、『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22』と題し、2022年2月18日(金)~7月21日(木)までの期間中、全6演目を各1週間限定にて全国公開することが決定いたしました。昨シーズンは新型コロナウイルスの影響によってロイヤル・オペラ・ハウスは長い間閉鎖されていましたが、来年は遂に、バレエとオペラを愛し応援してくださる皆様の元に帰って来ます。

『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン』は、ロンドンのコヴェント・ガーデンにある歌劇場“ロイヤル・オペラ・ハウス” (通称ROH)で上演された世界最高峰のバレエとオペラを映画館で鑑賞できる人気シリーズ。世界最高クラスのパフォーマンスを大スクリーンで体験できることに加え、リハーサルの様子や舞台裏でのインタビューなどの特別映像も堪能できるということで、シネマシーズンを重ねるごとにファンが増えています。

この度、到着した日本版予告編には、冒頭、プロコフィエフ作曲『ロミオとジュリエット』の荘厳なオーケストラ音楽とともにシネマシーズンを彩る人気演目のワンシーンやリハーサルの様子が次々と登場、シネマシーズンならではの場面がおさめられています。最後は、大きな拍手とチャイコフスキー作曲『くるみ割り人形』の音楽にのせてラインナップが紹介され、臨場感あふれる鑑賞体験への期待が高まる予告編となっています。併せて到着した日本版ポスターには、ロイヤル・オペラ『椿姫』、ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』のカットと共に「再開の時、そして再会の時。ロンドンで再び、白鳥たちが舞い、ディーバたちが歌う。」というコピーと、世界屈指の名門による選りすぐりの名プログラム全6演目がずらりと並び、新型コロナウイルスの影響で延期していた英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズンが遂に“再開”、あの感動と興奮に“再会”となります。

【全6演目】
◆バレエ演目:『くるみ割り人形』、『ロミオとジュリエット』、『白鳥の湖』
◆オペラ演目:『トスカ』、『リゴレット』、『椿姫』

また、今年5月、ロイヤル・バレエ団に在籍している金子扶生さんがプリンシパルに、佐々木万璃子さんがファーストアーティストに昇格したことは日本でも大きなニュースとなって報じられました。既に、高田茜さん、平野亮一さんはプリンシパルとして活躍中ですが、他にも、
アクリ瑠嘉さん、崔由姫さんなど、日本出身のダンサーが現役で活躍しており、その姿を日本で観られることでも大きな注目を集めています。
そして、この度、プリンシパルの高田茜さんと金子扶生さんよりシネマシーズン開幕によせてコメントが到着しました!!


高田 茜さん(プリンシパル)
やっとROHシネマシーズンで、皆様に舞台をお届けできる日が来ました!夢の世界の「くるみ割り人形」、心に深く残る恋物語「ロミオとジュリエット」、一度は是非観てほしいロイヤル・バレエ団の「白鳥の湖」です。ロンドンの舞台の空気を是非、お楽しみください!


金子扶生さん(プリンシパル)
ロイヤル・バレエ団のメンバーは、いつも日本のファンの皆様からの心あたたまる励ましに感謝しています。シネマシーズン2021/22は選りすぐりの演目をご覧いただきます。スクリーンを通して素晴らしい音楽に包まれて私たちのベストパフォーマンスを味わっていただけると幸いです。

2022年2月18日(金)より、いよいよ開幕する『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22』が贈る感動と至福の時間を、是非映画館でご体験ください!

【2021/22 全6演目と公開日】

●ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』:2022年2月18日(金)~2月24日(木)
●ロイヤル・オペラ『トスカ』:2022年3月11日(金)~3月17日(木)
●ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』:2022年4月8日(金)~4月14日(木)
●ロイヤル・オペラ『リゴレット』:2022年5月20日(金)~5月26日(木)
●ロイヤル・オペラ『椿姫』:2022年6月10日(金)~6月16日(木)
●ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』:2022年7月15日(金)~7月21日(木)

<上映劇場>

*TOHOシネマズ 日本橋(東京)
*イオンシネマ シアタス調布(東京)
*TOHOシネマズ ららぽーと横浜(神奈川)
*TOHOシネマズ 流山おおたかの森(千葉)
*ミッドランドスクエアシネマ(愛知)
*イオンシネマ 京都桂川(京都)
*大阪ステーションシティシネマ(大阪)
*TOHOシネマズ 西宮OS(兵庫)
*サツゲキ(北海道)
*フォーラム仙台(宮城)
*中州大洋映画劇場(福岡)

2021.05.19

英国ロイヤル・バレエ <祝>金子扶生さん プリンシパル昇進!そして佐々木万璃子さんはファースト・アーティストに昇進!

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズンを楽しみにして下さっている皆様

既にご存知の方もいらっしゃいますが、嬉しいニュースがロンドンから届きました。
先シーズン「眠れる森の美女」で主役のオーロラ姫を演じた金子扶生(ふみ)さんが最高位のプリンシパルに昇進しました!!!怪我を克服しながら実績を積んできた金子さん、シネマシーズンでも「眠れる森の美女」以前から重要な役をたくさん任されて期待に応えてきました。これからも益々のご活躍を楽しみにしたいと思います。

英国ロイヤル・バレエでは、既に高田 茜さん、平野亮一さんもプリンシパルとして活躍中ですが、今回、同バレエ団に在籍している佐々木万璃子さんもファースト・アーティストに昇進しました。金子さん、佐々木さん、お二人とも おめでとうございます!

それから今回の昇進のニュースには、シネマシーズンでもおなじみのセザール・コラレスさん、9月からはマヤラ・マグリさん、アナ = ローズ・オサリヴァンさんもプリンシパルに昇進するほか、ファースト・ソリストにミーガン・グレース・ヒンキスさん、カルヴィン・リチャードソンさん、ニコル・エドモンズさんが昇進しています。

またコロナ禍で長らく閉まっていたロイヤル・オペラ・ハウスは17日(現地時間)からロイヤル・オペラの「皇帝ティートの慈悲」で ようやく再開し、ロイヤル・バレエは18日(現地時間)「21世紀の振付家たち」で再開されました。金子扶生さんがプリンシパルとして初めて舞台に立つのは、20日(現地時間)の「21世紀の振付家たち」の中の「ウィズイン・ザ・ゴールデン・アワー」になります。
(なお、金子さんはロイヤル・オペラの「皇帝ティートの慈悲」にも出演中です)

英国ロイヤル・バレエでは、今回昇進した金子扶生さん、佐々木万璃子さんのほか、プリンシパルの高田茜さん、平野亮一さん、ファースト・ソリストのアクリ瑠嘉さん、崔由姫さん、ファースト・アーティストの桂千理さん、アーティストの中尾太亮さん、前田紗江さん、佐々木須弥奈さん、研修生の五十嵐大地さんと、多くの日本出身のダンサーが活躍中です。
今後の皆さんのご活躍を楽しみに応援していきたいと思います。

               2021年5月19日

                            東宝東和株式会社

2020.12.24

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズンのファンの皆様へ

師走の候、皆様におかれましては、ご清祥のこととお慶び申し上げます。

平素より英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズンへのご愛顧を頂戴しまして厚く御礼申し上げます。今年度のシネマシーズン2019/20につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、予定しておりました演目の上映中止が相次ぎ、ファンの皆様に作品をお届けする事が叶わず、残念なシーズンでありました事を大変心苦しく思っております。
またご周知の通り英国ロンドンでは、更なる感染拡大によりロックダウンに至っているとのニュースが入っております。例年通りであれば、既に来シーズンの日程、演目などのアナウンスは終わっている所でありますが、いまだ本国より現況、情報が入ってきておりません。本国から正式なアナウンスがあり、公開への準備が整いましたところで改めてご案内申し上げ、更なるご厚情を賜りたいと考えております。

例年とは異なるクリスマス、年末年始となりますが、本国のロイヤル・オペラの関係者、オーケストラ、合唱の団員の方々、ロイヤル・バレエ団のダンサー、及びスタッフの皆様方の健康と、一日も早い劇場の復活を祈ると共に、日本でのシネマシーズンを楽しみにして下さっています皆様方の健康をお祈り申し上げます。

                      2020年12月24日

                            東宝東和株式会社

2020.09.03

バレエ『眠れる森の美女』 金子扶生さんへの電話インタビューが届きました


オーロラ役・金子扶生
「ファンの皆さんに、そして同僚や教師など皆さんに応援していただけることが私のパワーになります」

9月4日(金)より再公開される英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン、ロイヤル・バレエ『眠れる森の美女』。降板したローレン・カスバートソンに代わり、映画館中継の当日に急きょ主役のオーロラ役を務めた金子扶生(ふみ)。突然のキャスト変更にも関わらず落ち着いた演技で見事に代役を務め、ひときわ華やかな存在感、エレガントで美しく正確な踊りで観客を魅了してニューヒロインの誕生を印象づけた。ロンドンでステイホーム生活を送っている最中の彼女に、この公演についての電話インタビューが届きました。

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リラの精役を踊る予定が、当日の午後に急きょ主役を踊ることに。

Q: 今回、映画館中継の当日に急きょオーロラ役に抜擢されましたが、当初はリラの精を踊る予定だったところ、当日の午後に変更を伝えられた際の気持ちはいかがでしたか?

金子扶生(以下 金子):「こんな急な代役での主演は初めての経験でした。ここまでのプレッシャーを感じたのも初めてでした。火曜日の公演だったのですが、その前の土曜日にローレン・カスバートソンさんが一度『眠れる森の美女』のオーロラ役を踊っていて、その時も私はリラの精を踊っていました。1幕が終わってからローレンさんがあまり調子良くないと言っていて、それでも2幕を踊っていました。この『眠れる森の美女』では2幕と3幕の間の休憩がないのですが、もう彼女が踊れないということになりました。私はまだリラの精の衣装を着ていたのですが、ケヴィン・オヘア監督がオーロラを踊ってくださいと言って、その日は3幕だけオーロラ役を踊りました。その時もびっくりだったのですが、月曜日にはローレンさんは大丈夫ということで火曜日は踊る予定と監督からも聞いていたので、私はリラの精役に集中していました」

「映画館中継当日の午後2時くらいに、この日もローレンさんが踊れないとなったので、急遽パートナーのフェデリコ・ボネッリさんと振りを確認することになり、振りを合わせてそのまま舞台に出ることになりました。普段は1か月以上かけて練習して役の準備をするのですが、その時はもう1か月以上オーロラ役を踊っていない状態だったので、不安で泣いてしまったりもしたのです。映画館中継もあったので、怖かったのです。でも出るからには気持ちを切り替えて思い切って舞台に立ちました。」

Q:王子役のフェデリコ・ボネッリさんとの共演はいかがでしたか?

金子:「フェデリコ・ボネッリさんとは、一度クリストファー・ウィールドン振付の『冬物語』で主役を一緒に踊らせていただいたきりです。でも彼は本当に素晴らしいパートナーなので、安心して踊ることができました」

カンパニーみんなの応援で力をもらい、大役を踊りきる。

Q:今回の「眠れる森の美女」の映像を拝見すると、周りの共演者の皆さん、そして司会のダーシー・バッセルさんが扶生さんに対して見守る気持ちを込めていて、とても応援されているのを感じました。舞台に立っていらした扶生さんも、同僚の皆さんからのサポートは感じられましたか?

金子:「カンパニーのすべて、みんながとても応援してくれました。いつもそうなのですが、皆さんいい人ばかりで、本当にそこに救われました。この舞台の前も皆さんはとても応援してくださって、急なことだったのに手紙やプレゼントも贈ってくれたり楽屋で応援してくれたり。これがないと踊り切れなかったと思います。」

「(オーロラ役としても名高い)ダーシー・バッセルさんは面白い方なのですが、とても私を応援してくださっています。私が11月にオーロラ役のデビューをしたときにずっとコーチングをしてくださいました。役デビューが終わって一度バイバイ、という感じだったのですが、当日はいきなり私がオーロラ役になって驚かれていました。が、この当日も応援してくださいました。経験を積んでこられたバレリーナの方たちがこうしてコーチングしてくださるのはとても貴重だと思います。」

「私の16歳のバースデー・パーティにようこそ!」

Q:『眠れる森の美女』のオーロラ姫を演じて、ご自身で最も印象に残っているシーンなどはありますか?

金子:「『眠れる森の美女』の中では、やはりローズ・アダージオが一番印象的なシーンですね。登場するところからローズ・アダージオまでが一番大事というか、緊張します。いきなり舞台に出てきて、とても緊張するバランスがあります。これを最初にしなければなりません。ここを踊るのを楽しめたら、嬉しいです。ローズ・アダージオは音楽が素晴らしくて、音楽を聴くだけで体が震えて、音楽に助けられました。主役を演じる時、ずっと舞台に立っていたらだんだん体も慣れてくるのですが、オーロラ役は最初が見せ場なので、難しいですね。1幕は若々しい16歳の姫です。友達と言っていたのが、「私の16歳のバースデー・パーティにようこそ❤」、それくらいの楽しい気持ちで踊ります。2幕はもっと繊細な感じで。この幕での衣装が大好きなのです。3幕は結婚式でクラシックな踊りをします。体力的にも大変なバレエですが、特に1幕が一番体力的にきつい作品です。今回のこの中継の時には頭が真っ白になりました。だからお客様に応援していただくのが力になります。」
※なお、この1幕のローズ・アダージオをリハーサルするシーンは、この映画館上映での幕間映像で上映される。ダーシー・バッセルとケヴィン・オヘアが金子さんを指導する様子を観ることができる。

Q.ロイヤル・バレエでは3月半ばに急に公演がキャンセルされて、ダンサーの皆さんは自粛期間に入りました。その間はどのように過ごされていましたか?

金子:「ロイヤル・バレエの舞台が3月にキャンセルされてしまったのですが、2週間後に『白鳥の湖』のオデット、オディール役のデビューの予定でした。ずっとこの役を練習し続けていたのですが、急に劇場が止まってしまったのでかなりショックで落ち込んでしまいました。でもここでも立ち直って、狭い家の中でできる限りのことをしていました。ピラティスといった家でできることを見つけ、自分の体に向き合うようになりました。今までは踊って疲れてまた次の日になるという繰り返しの毎日だったので、この自粛期間で自分の体に向き合う時間ができましたね。ローリング・ストーンズの曲を使った「ゴースト・ライト」やアシュトン財団の映像など、いくつかの映像プロジェクトにも参加しました。」

Q: 6月27日には、有料配信されたロイヤル・オペラハウスの無観客公演に出演されて、リース・クラークさんと踊られました。

金子:「この公演ではマクミラン振付の『コンチェルト』に出演しましたが、これも急に出演してほしいと電話がかかってきたのです。1週間ほど練習しました。3か月間は家でだけで踊っていたので、かなりチャレンジングでしたが、楽しく踊ることができました。舞台に戻ってこられるだけで嬉しかったです。ケネス・マクミランの『コンチェルト』は名作で素晴らしい作品なので、もう少し時間をかけて練習して、指導もしっかり受けてから出演したかったのですが、1週間でできることをやりました。『コンチェルト』は、ジャンプや回転がたくさん入ったとてもハードな第3楽章は踊ったことがあったのですが、ガラっと違う美しい第2楽章は今回が踊るのがほとんど初めてでした。6年位前に日本で平野亮一さんと踊ったので久しぶりということになります。」

「少しでも劇場でバレエを観ている気持ちになっていただけたら」

Q:  本作で劇場へ久々に足を運ぶ方も多いと思いますが、そんな日本のファンの方へ、金子さんからのメッセージをお願いいたします。

金子:「コロナ禍など、このような暗いニュースがある中、そして劇場にも足を運べなくなっている中、少しでも映画館で劇場にいるような気持になっていただけたら嬉しいです。こうして応援していただけることでパワーをもらえます。日本の皆さんにはいつも応援していただきありがとうございます。」

最近では“クマ”という名前の子犬も飼い始めたという金子さん、おっとりとした上品な口調の中に、愛らしさと意志の強さが伝わってくる。今後ますますの活躍が期待される。

英国ロイヤル・バレエの『眠れる森の美女』は、第二次世界大戦後の1946年に、ロイヤル・オペラハウスの再オープニングを飾った作品。今回の上映の幕間の映像では、その当時、戦後の物資がない中で衣装や舞台装置を苦労して揃えた逸話なども披露される。戦争で傷ついた人々の心を美しいバレエが癒し、英国の復興を後押しした。コロナ禍で傷ついたバレエファンの心も、この素晴らしい『眠れる森の美女』で輝いた新しいヒロイン、金子扶生で癒されることだろう。事態が落ち着いて、バレエが観られる平和な毎日となることが待ち遠しい。

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