| 項目 | 時間 |
|---|---|
| ■解説+インタビュー | 11分 |
| ■第1幕 | 66分 |
| 休憩 | 10分 |
| ■解説+インタビュー | 12分 |
| ■第2幕、カーテンコール | 92分 |
| 上映時間:3時間9分 | |
2026.06.12
2026.06.12
| 項目 | 時間 |
|---|---|
| ■解説+インタビュー | 11分 |
| ■第1幕 | 66分 |
| 休憩 | 10分 |
| ■解説+インタビュー | 12分 |
| ■第2幕、カーテンコール | 92分 |
| 上映時間:3時間9分 | |
2026.06.08
| 項目 | 時間 |
|---|---|
| ■解説+インタビュー | 17分 |
| ■第1幕 | 81分 |
| 休憩 | 14分 |
| ■解説+インタビュー | 16分 |
| ■第2幕 | 78分 |
| 休憩 | 17分 |
| ■解説+インタビュー | 12分 |
| ■第3幕、カーテンコール | 89分 |
| 上映時間:5時間24分 | |
本編中に一部ノイズがございます。
公演撮影時に生じたものとなりますため、大変恐れ入りますがご了承頂けますと幸いです。
2026.06.05
英国ロイヤル・オペラ「ジークフリート」につきまして、
上映劇場の休館に伴い、下記の通り上映劇場を変更させていただきます。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
■上映作品
英国ロイヤル・オペラ「ジークフリート」
■対象上映期間
2026年6月26日(金)~7月2日(木)
■変更内容
TOHOシネマズ 日本橋 → TOHOシネマズ 日比谷
※その他の上映劇場に変更はございません。
※その他の演目の上映劇場に変更はございません。
2026.06.02
大変ご好評をいただきまして、TOHOシネマズ 日本橋にて延長上映が決定致しました!
~6/11(木)まで
★上映スケジュールは劇場HPをご覧ください
https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/073/TNPI2000J01.do
2026.05.27
コラム
ロマンティック・バレエの不朽の名作「ジゼル」、主演は高田茜
1841年にパリ・オペラ座で生まれて以来、『ジゼル』はロマンティック・バレエの最高峰の作品として世界中で上演され、名だたるバレリーナたちが名演を見せて数々の伝説を築き上げてきました。1幕の収穫期のドイツの牧歌的な農村を舞台にした悲劇のドラマ、2幕の精霊「ウィリ」が舞い踊る、月に照らされた幽玄で超自然的な墓場という二つの全く異なった世界の対比を描いている本作は、死をも超える愛と赦しを描いた不朽の名作として今も広く愛されています。
今年3月に公開されて人気を呼んだアニメ映画『パリに咲くエトワール』では冒頭に1910年代の横浜での『ジゼル』の上演を観てヒロインのフジコがバレエに魅せられます。そしてもう一人のヒロイン千鶴はパリでバレリーナを目指して稽古に励み、ついにパリ・オペラ座の『ジゼル』のコール・ド・バレエ(群舞)、ウィリの一人として舞台に立って夢をかなえる場面で幕となりました。このように『ジゼル』はバレエそのものを象徴する作品として知られています。
今回ジゼル役を演じた高田茜は、その見事な技術と表現力で絶賛を浴びました。映画館の大スクリーンで、この一世一代と言える彼女の名演をぜひ堪能してください。
「これは、私がこれまでに見た中で最も完成度の高い高田茜の演技だった。彼女の踊りが完璧なテクニックと音楽性によって特徴づけられていることは言うまでもないが、彼女はさらに、説得力のあるキャラクターを創り上げた。高田のジゼルは真に恋に落ちていることを示し、第1幕の純真な少女が抱える脆さ、裏切り、そして底知れぬ絶望を露わにした。しかし、高田が真に最高の輝きを放ったのは、第2幕で亡霊のようなウィリとなり、欺いた恋人を死から救おうと奮闘する場面だった。アルブレヒトを許し、救おうとするジゼルの心意気は、高田とボールの深く心に響く墓前のデュエットにおいて、最も鮮やかに表現されていた」(Seen and Heard Internationalより)
「ジゼル」誕生
『ジゼル』の超自然的な力は、19世紀のロマン主義の中でもバレエにおいては最高の例を作り上げました。物語の「愛、裏切りと赦し」というテーマとはハインリヒ・ハイネの『ドイツ論』とヴィクトル・ユゴーの『東方詩集』の中の「亡霊」という詩に着想を得ています。このバレエ作品の幽玄な美しさは、2幕のウィリたちの踊りの中でも、彼女たちがジゼルの墓の周りに集まる場面で最高潮を迎えています。ここはカンパニーのコール・ド・バレエがきらめくような高度な技術を見せる場面です。
フランスの詩人・小説家・劇作家テオフィル・ゴーティエはハインリヒ・ハイネの『ドイツ論』を読んだ後、バレエ作品を創作する意欲に駆られました。当時パリにおいては超自然的なテーマが流行していました。ジャコモ・マイアベーアのオペラ『悪魔のロベール』(1831)の中の「死んだ尼僧たちの踊り」という短いバレエや、ダンサーたちが透き通るような白い衣をまとい、月を思わせる淡い光に照らされていた『ラ・シルフィード』(1832)のヒットもありました。バレエのテクニックの進化、トウシューズの技術によって、ダンサーたちはまるで幽霊のように見えました。霧に包まれた森でシフォンをまとって浮かび上がる精霊たち、それがウィリです。『ドイツ論』に登場するウィリたちについて読んで、ゴーティエはヴィクトル・ユゴーの詩「幽霊」の中の物語をこれと結び付けたいと思ったのです。この詩では、踊りが大好きで、のちに舞踏会で踊り狂って疲れ果ててしまい死んでしまう娘の物語が語られています。この二つのアイディアを、筋の通った物語にするために、ゴーティエは、バレエの台本執筆の経験が豊富なジュール=アンリ・ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュの助けを借りました。サン=ジョルジュはゴーティエのアイディアを洗練させて、わずか3日で台本を書き上げました。
彼らは振付家ジュール・ペローにこの台本を提案しました。ペローのミューズで恋人はパリ・オペラ座バレエの新星カルロッタ・グリジ。ペローはパリの観客にグリジの才能を見せるにはこの作品がぴったりだと思ったそうです。ペローはこの物語を作曲家のアドルフ・アダンに持って行き、アダンはすぐさまこのバレエ作品のために作曲することに同意しました。ゴーティエ、サン=ジョルジュ、ペローとアダンは後ほど、パリ・オペラ座バレエの芸術監督にこのバレエ作品を上演させることに成功しました。
「ジゼル」は1841年6月28日にサル・ル・ペルティエで初演されて絶賛を浴びました。グリジがジゼル役を演じ、リュシアン・プティパ(マリウス・プティパの兄)がアルブレヒト、ジャン・コラーリがヒラリオンを演じました。
<言葉のないバレエで物語を伝えるマイム>
ジゼルが1841年に初めてパリ・オペラ座で上演されたときには「バレエ・パントマイム」と銘打たれました。バレエ・パントマイムは別名「バレエ・ダクシオン」と呼ばれた演劇の形式で、18世紀のフランスで生まれました。ほかの演劇の形とパントマイムを分けているのは、演者による身体の動き、ジェスチャーや表情によって物語を伝えることでした。ダンサーたちのマイムによって、このバレエの心を揺さぶる物語が浮かび上がります。ジゼルは薬指を指さして婚約していることを表現し、頭の上で手を回して踊りが大好きなことを伝えます。また胸の前に手を当ててアルブレヒトへの愛を語ります。ヒラリオンはジゼルを愛しているというマイムを行い、またロイス/アルブレヒトを信頼できないことを示し、そして彼の刀について説明しアルブレヒトが狩りの一行の貴族たちと関係していることを説明しています。
『ジゼル』における最も長いマイムは、ジゼルの母ベルタが、ウィリの伝説を語るところです。娘が踊っているが心臓が弱くて踊りに耐えられないことを心配したベルタは、彼女に踊るべきではないと踊りを止める。踊りすぎたら心臓が止まって死んでしまうと。ベルタは暗い森の空気を呼び起こし、村人たちみなにウィリの伝説、また月夜に照らされた精霊たちの森の中に迷い込んだ男たちを待ち受ける運命について語っています。このベルタのマイムは、今回のシネマの幕間の映像で、ベルタを演じるクリステン・マクナリーが場の空気を一変させる迫真の演技で見せてくれています。
ジゼルの「狂乱の場面」では振付とマイムのバランスが絶妙に配置されています。ここで1幕の祝祭的な雰囲気は崩れ去り、村は混乱に陥ります。ジゼルは恋人ロイスが実際にはアルブレヒト公爵なのに村人に偽装しており、バチルド姫と婚約していたことを知ると現実を受け入れられず自分にしか見えない幻を追いかけ、空想上の花で花占いをし、壊れそうな踊りの中で愛しあっていた日々を再現します。ジゼルは正気を失い、自死してしまう場面がこの作品の最初のクライマックスです。
<ピーター・ライト振付版の特徴―演劇性の重視>
英国バレエを代表する巨匠サー・ピーター・ライトによる演出版が今回上演される『ジゼル』で、すでに200回以上上演されています。ライトは1966年にジョン・クランコの依頼でシュツットガルト・バレエのために『ジゼル』を振り付け(ライトが初めて手掛けた全幕作品)、ケネス・マクミランの依頼により、ロイヤル・バレエ版を1985年に創作しました。今年100歳となるライト卿は、現在も健在で日々リハーサルに立ち会って指導をしているとのことで、時折カーテンコールにも登場しています。
ジゼルを含む登場人物たちは、嵐のような感情や想い―不信、恐怖、傷心、そして喪失を表現しています。ライト卿は、「ジゼル」を上演するときには、物語や登場人物に説得力があることが大事だと強調していました。ドラマティックに物語ることと真実味のある感情の見事なバランスが、ジゼル役を、ダンサーにとって最も挑戦しがいのある役柄にしていると語っています。特にロイヤル・バレエの優れたダンサーたちは、舞台俳優のようにドラマティックに物語を表現する才能を持ち合わせています。
<ジゼルの死―心臓が止まるのではなく、狂乱の末の自死という衝撃的な展開>
ピーター・ライト卿の演出では、ジゼルの死が他の版にみられるように失恋のショックによる狂乱で元々弱かった心臓が止まってしまうのではなく、アルブレヒトの剣で自ら胸を刺したことによる自死であるのが最大の特徴です。
彼女の内なる絶望が公の場に露呈し、その瞬間の衝撃は、それに先立つ精神崩壊の謎めいた様相によって、さらに増幅されていきます。この重要な「狂乱」の場面は何世代にもわたってバレリーナたちの試練の場となり、数多くの名演を生み出してきました。今回のシネマ上演では高田茜が細やかに、ジゼルがアルブレヒトとの幸せな日々を回想しながら正気を失い自らの命を絶ってしまう姿をリアルかつ痛ましく演じており、観客の涙を誘います。
<ライトモチーフを活用したアダンの音楽>
アドルフ・アダンは「ジゼル」のスコアを数週間で作曲しました。「ジュール・ペローとカルロッタ・グリジとはとても親しく、作品は私の書斎の中で成長しました」と彼は語っています。
彼が手掛けた音楽はライトモチーフ(登場人物と結び付けられた短く明確な主題)を使用しています。これらはバレエの動きを推進し、マイムの雰囲気も作り上げています。ジゼルには、彼女の無垢さと美しさをとらえる軽やかに弾む主題を与えました。ジゼルとアルブレヒトの場面では甘くハーモニーの感じられるモチーフを使用しますが、のちにアルブレヒトの裏切りが明らかになったときには、断片的で色彩も変化しています。狩りの場面では、遠くから聞こえてくるかのようなホルンの音色(『白鳥の湖』をはじめとする多くの作品でも用いられる典型的な音楽的表現)を用いたモチーフと、ウィリの悲劇的な物語と復讐への意思を彷彿とさせる不吉な予感を漂わせるモチーフが用いられています。
<日本が誇る世界のプリマ、高田茜のジゼルは見逃せない>
高田茜は、このジゼル役を2016年に演じてプリンシパルに昇進しました。2008年のローザンヌ国際バレエコンクールでも「ジゼルのヴァリエーション」を踊って入賞し、ロイヤル・バレエへの入団を果たしたこともあり、彼女にとっては特別な思い入れがある役です。快活で純朴な村娘から精霊への変化を見せる繊細な表現力、長くしなやかな手脚、強くアカデミックなテクニックの持ち主です。ジゼル役が似合う闇に溶けてしまうような儚さがあり、妖精さながらの跳躍の軽やかさもさることながら、心が壊れていく狂乱の場面のあまりの迫真性には、思わず涙してしまう圧巻の演技で心を奪われてしまいます。2幕では慈愛と崇高さも漂わせ、死してなおも一途にアルブレヒトを愛しぬく姿に胸打たれます。現代最高のジゼルというべき名演となりました。
アルブレヒト役は、貴公子役が似合う端正さと憂いがあり、ジゼルの体重を感じさせない高いリフト技術を持ち合わせて、ジゼルに対する感情の変化をドラマティックに表現する演劇性も持つマシュー・ボール。当初予定されていたスティーヴン・マックレーの降板により急遽の出演となりましたが、とても代役とは思えないほど高田との息もぴったりで、この二人ならではの練り上げられたドラマ性を感じさせる美しく感動的なパフォーマンスとなりました。精霊となって姿は見えていないジゼルの気配を感じながらの演技では、生死を超えて二人の魂が通い合うさまが深く胸を打ちます。ミルタの魔力で踊らされている場面の高く美しい跳躍にも魅せられます。
またジゼルに横恋慕してアルブレヒトの正体を暴き、ウィリたちに取り殺される森番のヒラリオンを熱く演じるのは、振付家としても活躍する実力派のヴァレンティノ・ズケッティ、ウィリの女王ミルタは長身で美貌を誇り支配力の強い新進気鋭のアネット・ブヴォリ。また1幕の収穫祭のペザントの踊りでは、6人のソリストの中に日本出身の若手、前田紗江、五十嵐大地がその直後の悲劇との対比を作り上げる多幸感に満ちた生き生きとした踊りで祝祭的な雰囲気を盛り上げています。もちろん、一糸乱れぬ恐ろしくも美しいウィリたちのコール・ド・バレエも大きな見どころです。
来日公演の予習にも、この珠玉の舞台をぜひ映画館で
高田茜をはじめとする世界トップダンサーたちが死をも超える愛と赦しの物語をドラマティックに演じる名作「ジゼル」。すべてのバレエファンに観ていただきたい、心を震わせていつまでも忘れがたい印象を残す珠玉の舞台です。なお、今年7月にはロイヤル・バレエ団の来日公演で『ジゼル』の上演が予定されています。予習としてこの至高の舞台を映画館で観ることで、来日公演もより一層楽しめることでしょう。
2026.05.18
| 項目 | 時間 |
|---|---|
| ■解説+インタビュー | 20分 |
| ■第1幕 | 57分 |
| 休憩 | 6分 |
| ■解説+インタビュー | 19分 |
| ■第2幕、カーテンコール | 59分 |
| 上映時間:2時間41分 | |
本編中に一部ノイズがございます。
公演撮影時に生じたものとなりますため、大変恐れ入りますがご了承頂けますと幸いです。
2026.05.14
コラム
ヴァージニア・ウルフの3つの代表作が、現代の古典と呼ばれる斬新な傑作バレエ作品に
20世紀の最も偉大な小説家の一人と評価されるヴァージニア・ウルフの世界を3つの代表作を通して描いた『ウルフ・ワークス』。映画『めぐりあう時間たち』(ニコール・キッドマンがウルフ役を演じてアカデミー賞主演女優賞を受賞)でも描かれた彼女の人生と作品を、ロイヤル・バレエの常任振付家であるウェイン・マクレガーが2015年にロイヤル・バレエのために振り付けた本作は、現代バレエの世界を変えた革命的な最高傑作として熱狂的に評価されました。人間の脳の働きがどのようにダンスの動きへと伝わっていくかという科学技術的な研究を通じて、斬新な振付作品を生み出してきたマクレガーが生んだこの傑作はローレンス・オリヴィエ賞と英国舞踊批評家協会賞を受賞し、ロイヤル・バレエで3度にわたってリバイバルされただけでなく、ミラノ・スカラ座バレエやアメリカン・バレエ・シアター、ウィーン国立バレエなど世界を代表するバレエ団でも上演されています
20 世紀の最も画期的な作家の一人であるヴァージニア・ウルフは、文学の慣習に逆らい、彼女の衝撃的で痛烈な現実である豊かな内面世界を描写しました。伝統的な物語の語り口から離れた『ウルフ・ワークス』は、彼女の代表作『ダロウェイ夫人』、『オーランドー』、『波』からテーマをコラージュし、ウルフの「意識のながれ」という文体を呼び起こしました。
3つのパートがそれぞれ全く違った作風のダンス作品となっているのが本作のユニークなところです。『ダロウェイ夫人』をモチーフにした『I now, I then』は物語性の高い演出でナタリア・オシポワが演じる主人公と、彼女の記憶の中の人々を描きます。性転換しながら400年生きた青年貴族の数奇な運命を描いた『オーランドー』(ティルダ・スウィントン主演の映画でも知られています)に基づく『ビカミングス』は、マクレガーらしいハイスピードの近未来的な動きの連なりと照明がスタイリッシュで金子扶生らの活躍が見ものです。『波』をバレエ化した『火曜日』は、ウルフの遺書の朗読の後、ウルフ役のオシポワがウィリアム・ブレイスウェルとのデュエットから波のような群舞に融合し、やがて死を迎えますが、詩的で美しい余韻を残します。本作のために委嘱されたマックス・リヒターによるドラマティックな旋律とサウンドスケープも忘れがたい印象を残します。
<傑作の誕生は、他ジャンルのトップクリエイターとのコラボレーションによるもの>
「魅惑的な感情と過激な知的意図に満ちたバレエ」(ガーディアン紙)としての『ウルフ・ワークス』の絶大な力は、その芸術チームの強力な想像力にあります。振付家兼演出家であるウェイン・マクレガーは、コラボレーションの達人かつ革新者として名声を確立しています。伝統的な慣習に挑み、他メディアと融合し、多様な創造者たちと協働することで芸術の境界を押し広げてきました。
ロイヤル・バレエではコンテンポラリーダンスの振付家として初の常任振付家であるマクレガーは、『クローマ』『インフラ』などの中編作品で成功を収めてきましたが、『ウルフ・ワークス』は彼がロイヤル・バレエのために振り付けた初の全幕作品でした。2015年の初演では、元プリンシパルで伝説的なバレリーナのアレッサンドラ・フェリ(現ウィーン国立バレエ芸術監督)が、50代でのバレエ団への復帰を果たしてヴァージニア・ウルフ役を創作、初演して、舞踊批評家協会の最優秀女性ダンサー賞と、オリヴィエ賞のダンスにおける傑出した功績賞を受賞しました。
『ハムネット』で今年のアカデミー賞作曲賞にノミネートされ、同世代で最も影響力のある作曲家のマックス・リヒター、高名な建築事務所 Ciguë(シグー) と We Not I、照明デザイナーのルーシー・カーター、ロンドン・パラリンピック開会式の衣裳を担当した衣裳デザイナーのモリッツ・ユンゲ、映像デザイナーのラヴィ・ディープレス、メイクアップデザイナーのKABUKI、ドラマトゥルグのウズマ・ハミードという輝かしいチームをマクレガーは率いて、現代バレエの最高傑作を生みだしました。
<マックス・リヒターが本作のために作曲した圧巻のスコア>
『ウルフ・ワークス』のためにマクレガーは著名な作曲家マックス・リヒターに新しいスコアを委嘱しました。リヒターは、マクレガーと長年にわたってコラボレーションを行ってきており、ともにバレエ作品『インフラ』やリヒターの室内楽オペラ『Sum』を創作しています。またリヒターとマクレガーは、もう一人の著名な女性作家マーガレット・アトウッドの33つの作品に基づく終末後の世界を描くバレエ『MaddAddam』(カナダ国立バレエとの共同制作で、ロイヤル・バレエでも2024年に上演)でコラボレーションを行いました。
『ウルフ・ワークス』のためにリヒターはオーケストラと電子音響を融合させ、魅惑的で絶え間なく展開する音楽素材とスリリングなサラウンドサウンドの間を行き来する楽曲を創り出しました。リヒターはウルフの手紙、日記、エッセイの断片を音楽に織り込み、小説家の声を捉えています。
<ウルフの「意識のながれ」手法をバレエ作品に>
ドラマトゥルグのウズマ・ハミードは、本作の創作にあたって公演プログラムに以下のことを記述しています。
「ウルフ自身がダンスに魅了され、その言語の要素を自らの創作プロセスに取り込み、脳だけでなく感情と身体に根ざした文章を生み出したこと。さらに彼女の小説は生活の表層的な詳細から、心の中で絶え間なく展開される豊かな内面の物語へと焦点を移しています。彼女は私たちを、できごとが時系列ではなく主題的に連なり、感情と感覚の織り成す世界が、もろい物体の世界よりも濃密に感じられる世界へと没入させる。これらすべてが、ダンスの自然な領域と見なせるでしょう。」
ウルフが自身のエッセイ『職人の技術(クラフツマンシップ)』を朗読した唯一の現存する音声記録が、バレエの冒頭で楽曲内の語り部セクションの一つとして使用されています。女優のジリアン・アンダーソンが「世界で最も美しい遺書」として知られているウルフの遺書を朗読し、英国演劇界を代表する偉大な女優マギー・スミスがウルフの文章の一節説を朗読する音声も使用されています。
このようにして、ヴァージニア・ウルフの高度に洗練された世界を再現したバレエが誕生しました。
<ヴァージニア・ウルフの世界を体現する、ロイヤル・バレエのスターダンサーたち>
今回のシネマでは、第1部『ダロウェイ夫人』パートでアレッサンドラ・フェリが演じた、ウルフの分身でもあるクラリッサ役を、現代最高のバレリーナであるナタリア・オシポワが演じ、深みのある演技と共にマクレガー特有の複雑な動きを劇的に演じています。クラリッサの少女時代は前田紗江が生き生きと演じ、同性の恋人サリーを演じるレティシア・ディアスとの情熱的なキスシーンが印象的です。クラリッサの過去の恋人ピーターをウィリアム・ブレイスウェル、クラリッサの夫リチャードを来シーズンよりプリンシパルとしてロイヤル・バレエに入団する話題の新スター、パトリシオ・レーヴェが演じます。戦争のトラウマに苦しむ兵士セプティマスはマルセリーノ・サンベが熱演。上官でセプティマスとのデュエットを踊るエヴァンス役をマルコ・マシャーリ、そしてセプティマスの妻レツィアを高田茜が繊細に演じています。
第2部の時代とジェンダーを乗り越えて400年生きた美しき青年貴族を描いた『オーランドー』にインスパイアされた現代的でスタイリッシュな『ビカミングス』では、アクリ瑠嘉、金子扶生、クレア・カルヴァート、レティシア・ディアス、前田紗江、高田茜、中尾太亮、マルセリーノ・サンベらがSF映画の中にいるようなにレーザー光線の中で縦横無尽に時空を超えて、切れ味鋭く踊ります。中心的なパートは、金子扶生がサンベと共にきらびやかでダイナミックな超絶技巧を披露し、鮮烈な印象を残します。
そして第3部『波』に基づく『火曜日』では、名女優マギー・スミスの朗読から始まり、ジリアン・アンダーソンによるウルフのエモーショナルな遺書の朗読に続き、ウルフ役のナタリア・オシポワが子役を含む群舞のダンサーたちによって描かれる波や夫役ウィリアム・ブレイスウェルの腕の中で揺れるように踊り入水自殺による最期の時を迎えます。
プリンシパルが5人出演し、さらに日本人ダンサーも多数活躍するなど、豪華キャストも見どころの一つです。
「何よりも、このバレエを観ることをウルフの作品を読むような感覚に近づけたかったのです。彼女の世界の輝き、響き、切なさと彼女のビジョンの現代性を伝えるために」というハミッド[m1.1]の言葉通り、ヴァージニア・ウルフの作品世界を、ロイヤル・バレエのトップスターたちによる現代バレエの最高傑作で堪能する『ウルフ・ワークス』。文学と最先端のバレエが融合した総合芸術を、マックス・リヒターの音楽と共にスクリーンで味わってください。
2026.04.20
| 項目 | 時間 |
|---|---|
| ■解説+インタビュー | 19分 |
| ■第1幕 | 34分 |
| 休憩 | 15分 |
| ■解説+インタビュー | 15分 |
| ■第2幕 | 39分 |
| 休憩 | 13分 |
| ■解説+インタビュー | 14分 |
| ■第3幕、カーテンコール | 34分 |
| 上映時間:3時間3分 | |
本編中に一部ノイズがございます。
公演撮影時に生じたものとなりますため、大変恐れ入りますがご了承頂けますと幸いです。
2026.04.02
コラム
ヴェルディ『椿姫』が描きたかったもの
今年の冬季オリンピックは、落ち着かない国際情勢の中、多くの感動をもたらし、人々の心にあかるい光を灯した。ミラノ・コルティナという2都市の名を冠した初めての五輪であり、開会式も四ヶ所に分散して行われた。一方、閉会式はヴェローナの古代闘技場アレーナ・ディ・ヴェローナが会場に選ばれた。アレーナ・ディ・ヴェローナは毎年夏に野外オペラ音楽祭の会場となり、世界中から観光客がつめかける。そのためか、2月22日(現地時間)の閉会式は、まるでスポーツではなくオペラとバレエの祭典のようだった。舞台裏では忙しく歩き回る責任者が『アイーダ』『蝶々夫人』などと書かれた楽屋の扉をノックし、廊下ではリゴレットの扮装をした俳優がスタンバイしている。そして、広大なステージに18世紀ロココ風の衣裳をまとった楽士たちが現れると、ヴェルディの『椿姫』が奏でられ、式典が始まった。
『椿姫』を作曲したヴェルディがこの光景を見たら異議を唱えたかもしれない。というのも、このオペラは19世紀に社会から疎外された女性の〈愛と死〉を同時代の物語として描いた作品であり、宮廷風のファッションとは何の関係もないはずだからである。だが実は、オリンピックの演出はあながち的外れではない。1853年にヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場でこのオペラが初演された際、当時の現代という設定のままでは検閲を通らないとされ、『椿姫』はリシュリュー政権下のフランス風の衣裳で演じられたのだから。真実は人々の心にトゲのように刺さるものであり、それを見たくないという心理は常に存在するのである。
英国ロイヤル・オペラにおいて1994年の初演以来上演を重ねてきたリチャード・エア演出の『椿姫』は、長く愛されてきたことが納得できる優れたプロダクションだ。美しいが決して派手すぎない舞台と衣裳、台本に忠実で奇をてらわないリアルな演出は、この作品の本質を的確に表現している。
それに加えて今回は、エルモネラ・ヤオが奇跡のようなヴィオレッタを演じた。アルバニア出身のソプラノ歌手ヤオはヨーロッパを中心に一流歌劇場に出演し続けているが、とりわけ英国ロイヤルの観客に愛されている。ヤオは没入型の演技で知られ、プッチーニの『蝶々夫人』『修道女アンジェリカ』『トゥーランドット』(リュー)などを得意としているが、それにも増してヴェルディ『椿姫』のヴィオレッタを最大の当たり役としており、これまでに舞台で300回も歌っているという。実際、映像作品としても、エア演出の舞台が英国ロイヤルで1994年に初演された際のアンジェラ・ゲオルギュー、2009年のルネ・フレミングに続き、2019年にヤオが歌った『椿姫』も映像化され、高い評価を得ている。だがそのときと比べても、今年1月に上演された今回の『椿姫』におけるヤオは、彼女自身を軽々と超えている。まず声が美しい。成熟した深みのある響きをまとい、ドラマティックな表現から声量をぐっとしぼったピアニッシモまで自在に操るテクニックは見事の一言だ。ヴィオレッタの心理が手に取るように伝わる。しかもオペラが後半に進むにつれて表現力はさらに増し、最後の場面の迫力は圧倒的だ。何度観たか分からないこのオペラの結末で、自然と涙があふれてくる。
また今回は指揮と共演者も特筆に値する。2019年に続いてタクトを取ったアントネッロ・マナコルダは円熟味を増し、歌手たちからドラマを最大限に引き出しつつ、推進力のある音楽づくりを実現している。アルフレードのジョヴァンニ・サラはイタリアの若手テノールで、初々しさと自然な演技がこの役に理想的である。父ジェルモンのアレクセイ・イサエフも、堂々とした体躯にふさわしい豊かな声を聴かせる。他のキャストや合唱も、演劇の国イギリスならではの表現力で、目と耳を奪う。この『椿姫』は、英国ロイヤルの長年の歴史の中でも、とびきりのプロダクションとして人々の記憶に残るだろう。
2026.04.01
バーミナ役で出演を予定しておりましたジュリア・ブロックは体調不良のためやむなく降板致しました。
ルーシー・クロウが同役を務めております。
ご了承の程どうぞ宜しくお願い致します。