大変ご好評をいただきまして、TOHOシネマズ 日本橋にて延長上映が決定致しました!
~6/19(木)まで
★上映スケジュールは劇場HPをご覧ください
https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/073/TNPI2000J01.do
2025.06.10
大変ご好評をいただきまして、TOHOシネマズ 日本橋にて延長上映が決定致しました!
~6/19(木)まで
★上映スケジュールは劇場HPをご覧ください
https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/073/TNPI2000J01.do
2025.06.09
項目 | 時間 |
---|---|
■解説+インタビュー | 17分 |
■第1幕 | 35分 |
休憩 | 13分 |
■解説+インタビュー | 14分 |
■第2幕 | 47分 |
休憩 | 5分 |
■解説+インタビュー | 17分 |
■第3幕、カーテンコール | 51分 |
上映時間:3時間19分 |
2025.06.05
コラム
<時代を超えた、普遍的なラブストーリー>
ケネス・マクミラン振付の『ロミオとジュリエット』は人間の生の感情をリアルに表現した演技と振付により、あまたある『ロミオとジュリエット』のバレエ作品の中でも決定版とされています。不朽の名作であり、演劇的なバレエを得意とするロイヤル・バレエの最も重要なレパートリーの一つです。この『ロミオとジュリエット』は世界中のバレエ団で上演されていますが、もちろん本家であるロイヤル・バレエは他の追従を許しません。
2023年夏にはロイヤル・バレエの来日公演でこの『ロミオとジュリエット』は上演され、全8回の公演の主演をすべて別々のペアが演じて、バレエ団の層の厚さを実感させました。
400年以上前に生まれた『ロミオとジュリエット』がなぜ、今も多くの人々に支持されるのでしょうか。1965年初演の、ケネス・マクミラン版のバレエ『ロミオとジュリエット』はなぜ、ロイヤル・オペラハウスで550回以上も上演された『ロミオとジュリエット』の決定版とされているのでしょうか。そこには、今だからこそ心に響く普遍的なメッセージがあるからです。
二つの名家キャピュレット家とモンタギュー家の争いは、世界に暗い影を落としたロシアとウクライナの紛争や米国での混乱に見られるように、今も絶えない国際紛争や、人種や貧富の差、格差による分断を象徴するように感じられます。
1993年のボスニア紛争においては、異なる民族の若い恋人同士がお互いに駆け寄って狙撃兵に撃たれ抱き合ったまま亡くなり一緒に埋葬されるという事件があり、『サラエボのロミオとジュリエット』としてドキュメンタリー映画にもなりました。
『ロミオとジュリエット』を現代のニューヨークに置き換えた不朽のミュージカル名画『ウエスト・サイド物語』(1961)のリメイクであるスピルバーグ版の映画『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)が生まれたのは、この分断がより顕著になってきた今だからこそ伝えたいメッセージを伝えるためでした。これらの作品は共に、憎しみの連鎖がより大きな悲劇を生み、無垢な若者が無残な死を迎えてしまうことの虚しさを今に伝えています。
<ジュリエットは最初のフェミニスト>
シェイクスピアの先進性を象徴するのが、ジュリエットの描き方です。マクミラン版の『ロミオとジュリエット』を踊った歴代のダンサーの中でも、特にこの役を当たり役としたアレッサンドラ・フェリ、そして現役でジュリエットを踊っているロイヤル・バレエのサラ・ラムは共に、「ジュリエットは最初のフェミニスト」だと語っています。ジュリエットは14歳と若い少女の設定ですが、その彼女が、たった一人で家の権威に立ち向かい、両親の意思に反して愛を貫く決意をして勇気ある選択をします。このような強いヒロイン像が400年以上も前に生まれたことに、シェイクスピアの先進性を感じます。
『ウエスト・サイド・ストーリー』のヒロイン、マリアも自分の方から積極的にロミオにキスをし、そして働いてお金を稼ぎ、大学に行って学ぶという夢を語るなど、自立した女性として描かれています。バレエの中では、わずか数日間の間に大人への階段を駆け上り、成長していくジュリエットの姿が印象的です。
<プロコフィエフの色彩豊かな音楽と振付の魅力>
プロコフィエフ作曲による音楽の魅力もバレエ『ロミオとジュリエット』の大きな魅力の一つです。甘美な「バルコニーのパ・ド・ドゥ」、CMでもおなじみの重厚な「騎士たちの踊り」、躍動感のある市場の踊り。時に雄大で時に繊細、ドラマティックで華麗な旋律が心を揺さぶります。登場人物のキャラクターを象徴させるライトモチーフの使い方も印象的です。
マクミラン版『ロミオとジュリエット』の魅力は、何より3つのパ・ド・ドゥの振付の巧みさと音楽との一体化です。「バルコニーのパ・ド・ドゥ」での恋のときめきと高揚感、疾走感は比類のないもので、終幕の悲劇もドラマティックな音楽で一層胸を締め付けるものとなります。
それまでのバレエ作品では見られなかった、常識を覆すような振付も登場します。象徴的なのは、両親に結婚を強制されて窮地に追い込まれたジュリエットが、ベッドの上に座り身動きもせず、ただ前を見据える名場面。雄弁な音楽が流れていき、ジュリエットが愛を貫く決意をする心情が伝わってきます。ジュリエットとロミオの出会いの時に時が止まったようになるなど、動かない場面こそが、大きな意味を持つのもこの作品の特徴です。
最終場面、墓所で仮死状態になったジュリエットとロミオのパ・ド・ドゥは、「死体は踊らないのでは?」と初演当初には賛否両論を巻き起こしましたが、作品の悲劇性を強調する場面として強烈な印象を残します。仮死状態のジュリエットを懸命にリフトするロミオは、「バルコニーのパ・ド・ドゥ」の幸福感、高揚感溢れる踊りを再現して、ジュリエットを生き返らせようとしますが、ジュリエットの身体は空しくも力なく落ちていきます。マクミランは、若い二人が両家の対立の結果むごたらしく死ぬ様子をこの作品で描きたかったと語り、ダンサーには醜く見えることを恐れるなと伝えていました。
数々の名作バレエの美術を手掛けてきてマクミランの右腕と呼ばれたニコラス・ジョージアディスによる想像力を刺激する壮麗なデザインは、ルネサンス時代のヴェローナの色彩と世界観をもたらしています。賑やかな市場がソード・ファイトへと急展開し、モンタギュー家とキャピュレット家の両家の悲劇へと進み、プロコフィエフの魅惑的なスコアが、胸を締め付けるクライマックス、そして終幕へと観客を導いていきます。
<ロイヤル・バレエを代表する噂のスター・ペア、金子扶生とワディム・ムンタギロフ>
今回のシネマシーズンの『ロミオとジュリエット』は、今やロイヤル・バレエを代表するプリンシパルへと成長し、シネマでも『シンデレラ』に続く主演でますます磨きがかかる大阪出身のプリマ、金子扶生がジュリエット役、また世界的なスーパースターで、「ワドリーム」と異名を取りロイヤル最高の貴公子と評されるワディム・ムンタギロフがロミオ役を演じています。近年世界中で共演している話題のこのペアは、息もぴったりに運命に翻弄された恋人たちをロマンティックに、情熱的に演じて絶賛されました。2023年のロイヤル・バレエ来日公演でも、このペアによる『ロミオとジュリエット』が大阪で上演されましたが、2年の時を経てより一層表現力を増した二人の演技が観られます。
人形遊びを無邪気にしていた14歳の少女が、わずか数日で大人への階段を駆け上り、無理解な大人たちに一人で立ち向かう強さを体現した金子は、繊細な演技力も見せて新境地を開いています。クラシック・バレエの理想的な王子様を演じることが多いムンタギロフが、貴公子ではなく普通の恋する若者を演じるところが観られるのも貴重な機会です。長く美しいラインの二人が繰り広げるバルコニーのパ・ド・ドゥの陶酔感と高揚感、引き裂かれる悲しみと苦悩に満ちた寝室のパ・ド・ドゥ、そして悲劇的なラストシーンに思わず引き込まれ、涙してしまいます。
そして今回ティボルトを強烈な存在感で演じるのは、ロイヤル・バレエきっての演技派である平野亮一です。堂々とした悪役ぶりと大人の色気を振りまいて視線を独り占めにします。また、マンドリン・ダンスのソリストとして、鮮やかで驚くべき高さの跳躍を見せて高度なテクニックを披露しているのは、これからの躍進が期待されるライジング・スターの若手ソリスト、五十嵐大地です。ほかにも随所で期待の若手日本人ダンサーが活躍しています。さらに、ジュリエットの婚約者パリス役は、ドキュメンタリー映画『バレエ・ボーイズ』で注目され、今では『オネーギン』のタイトルロールに抜擢される等、次世代のスターとして注目されているルーカス・B・ブレンツロドが演じています。舞台上にいるどんな小さな役のダンサーも、ヴェローナに生きる人物として一人一人存在しており、アンサンブルの見事さもロイヤル・バレエの魅力です。
シネマシーズンのお楽しみ、幕間では、司会のダーシー・バッセルとかつて『ロミオとジュリエット』で共演し、その後20年近く日本のKバレエ・カンパニーで活躍、昨年ロイヤル・バレエに指導者として復帰したスチュアート・キャシディのソード・ファイトについてのインタビューが観られます。また恒例の主演陣のインタビューとリハーサル映像、ルネッサンス時代を表現するのに欠かせないヘアメイクの担当者のインタビューなど、作品をより楽しむための映像も盛りだくさんです。世界最高峰のロイヤル・バレエのスターたちの演技による世界最高のラブストーリーを、お近くの映画館の大スクリーンで楽しんでください。
2025.06.05
●チャコット
『ロミオとジュリエット』でティボルトを熱演した平野亮一に聞く「思春期真っ只中で、負けというものを知らない青年です」英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ
https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/tokyo/detail039477.html
●FNNプライムオンライン
スクリーンで蘇る“悲劇と愛の軌跡” ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』ジュリエット役・金子扶生さんとティボルト役・平野亮一さんにインタビュー
https://www.fnn.jp/articles/-/874857?display=full
●バレエチャンネル
①英国ロイヤル・バレエ「ロミオとジュリエット」ワディム・ムンタギロフ インタビュー~ジュリエットに出会った瞬間、ロミオの脳はショートする
https://balletchannel.jp/45869
②英国ロイヤル・バレエ「ロミオとジュリエット」平野亮一インタビュー~ティボルトはきっと“次男”だと思う
https://balletchannel.jp/45905
2025.06.04
インタビュー
「ロミオ役はとても僕に似ています。でも少しずつ大人になっていく僕と共に、変わってきています」
ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』シネマでロミオ役を演じたワディム・ムンタギロフ。理想的な貴公子そのものであるワディムですが、普通の若い青年であるロミオ役は特別な思い入れがあるとのことです。自分自身に近い役であるロミオから、最近はもっと複雑な役にも挑戦している彼が、どのように深化し成長して行っているのか、語っていただきました。
―ワディムさんは若い時からロミオ役を演じてこられてきました。それから年月を経て、あなたのロミオの演じ方は変わってきましたか?
ワディム:「ロミオ役はとても自然に演じられる役です。もう少し年を取れば、少し演じるのが大変になってくるかもしれません。いくつかのステップは今よりも難しく大変だと感じてくると思います。今の僕は、まだ早く走ったり、ふざけたりして楽しむことができています。まだロミオが僕に似合う役であるのは嬉しいことです。
今は自分のキャリアを通して、もっとドラマティックな役を演じる経験を重ねることができるようになりました。『マノン』のデ・グリュー、『マイヤーリング(うたかたの恋)』のルドルフ皇太子、ウィールドン『冬物語』のレオンティスなどです。これらのバレエ作品を通じて、僕はもう少し深い痛みを感じられるようになりました。」
ここ数年の間に、3幕で僕の演じるロミオは少し成熟してきたのではと思います。前よりも痛みや悲しみをもっと感じるようになっているかもしれません。ジュリエットが亡くなってしまったと思いこんだ時には、それまでのとても若い青年よりも大人になった姿を見せていると思います。
―ロミオはあなた自身に近いとおっしゃっていましたね。あなたに似ている役は他にはありますか?
ワディム:「はい、実際ロミオは僕に似ている人物です。僕はとても爆発的なエネルギーを持っていて、思い通りにならないと怒りを感じてしまって、なんとか思い通りにしようとしていました。でも今僕は少し大人になったと思うので、もっと落ち着いたと思います。今の僕は何かを感じて、例えば怒りを感じていても、すぐにそれを表に出さないで、その怒りを抑えようとすると思います。だから少しずつ僕は変わっています。『白鳥の湖』のジークフリート王子は僕が今まで最も多く演じた役だと思いますが、この役も僕自身に近いところがいつもあると感じています。 またアシュトンの『田園の出来事』のベリャーエフも僕に近いと思います。田舎に住んでいて、緩やかなシャツを着て、自然の中で楽しんでいるような人です。」
―ワディムさんは、まもなく『オネーギン』のタイトルロールを初めて演じることになっていますね。ロンドンでは、あなたのオネーギン役への期待でファンは持ちきりだそうです。これもまた、今まで演じてきた役とは違う、成熟した役ですね。
ワディム:「今シーズンの大きな役デビューは、オネーギンだけです。これから2週間後に初めて演じることになっていますが、これは僕にとっても大きな挑戦です。新しい役を演じるにあたって最初の2,3週間のリハーサルの間はなかなか大変です。役がまだ体に入っていないのでうまく行かないことが大きくて、ちょっと動揺したり、怒りを感じてしまったりすることもあります。まだまだ発展させなければならないこともあって、僕はちょっと苛立ちを感じてしまうこともあります。スタジオで稽古をしていて、まだいい感じには見えなかったりうまく行かない時にはストレスを感じたり不安になったりもします。この役は2週間ほどリハーサルを重ねてきており、ゆっくり少しずつ改善点を修正していて発展させていっています。もう少しこの役を理解することができるようになりましたし、昨日はリード・アンダーソンとの最初のリハーサルがありました。それはとても集中した、とても良いリハーサルでたくさんの知識を得ることができて、良い成果を出すことができました。あと2週間リハーサルを重ねて本番に臨みますが、とても楽しみです。
この役が楽しみなのは、今まで僕が演じてきた役とかなり違うからです。この役はあまりソロを踊らなくて、代わりにパートナーリングがとても多いです。大体バレエだとソロとパ・ド・ドゥが半々くらいでたくさん踊ってパートナーリングもたくさんするわけですが、『オネーギン』では、パートナーリングに集中します。また自分と全く違ったタイプの人間、傲慢で自己愛が強い人を演じなければならなくて、僕にはそういう部分は全然ないので、大きな挑戦です。でも僕はこのプロセスを楽しんでいて、僕自身の中からそのような要素を頑張って見つけ出そうとしています。」
―いつかワディムさんのオネーギンを拝見したいですね!きっと素晴らしいはずです。
さて、ワディムさんは今年の夏も日本で踊ってくださいます。日本で踊ることは楽しみにしてくださっていると思いますが。
ワディム:「僕を含めた多くのバレエダンサーは、夏はもっと休んで、あまり舞台の仕事をしたくないと思っているんです。でも日本で踊ってほしいというオファーがあれば、もちろん、喜んで引き受けます。毎回日本ではとても幸せな思いをしています。でも舞台の準備には入念に準備をしなければならないのがちょっと大変です。僕は両親とは夏にしか会えないので、毎年会うことにしています。それと同時に、日本の舞台に立つ準備を進め、身体をしっかり作らなければなりません。シーズンの前に怪我をしてしまったので、足を痛めないように良い床で踊らなければならず、スタジオにこもらなければなりません。父もプリンシパル・ダンサーだったので、僕たちは一緒に稽古をすることができて、良い機会になっています。父も僕と一緒に稽古できることを喜んでいます。夏は父が僕にバレエクラスを教えてくれて、ソロやパ・ド・ドゥも一緒に練習するのが通例となっています。
もちろん日本で踊ることはとても楽しみです!日本のお客さまはバレエが大好きなことをよく知っています。彼らはバレエに対してとても敬意を持ってくださっているし、僕たちを舞台の上で観ることを楽しみにしていることを実感します。バレエダンサーのキャリアが短くて、大変なこともきちんと理解してくださっていて、華やかな踊りを見せることは奇跡的なことも知っています。ダンサーがキャリアを重ねていく中で、成熟してきて、新しい役に挑戦していき変化していくことも理解してくださっています。本当に日本の皆さんの愛と応援を感じています。」
―今年の夏、日本ではどんなことをしたいと思っていますか?
ワディム:「日本でやりたいことはたくさんあるのですが、なかなか十分な時間がありません。僕は自然が大好きなので、日本の自然をもっと見たいと思っています。去年の夏は箱根で2,3日過ごすことができました。とても美しくて、リラックスできて、素晴らしい温泉にも入ることができました。僕の心や体にとても良いことができたと思いました。今年の夏もオフに何かできるといいなと思っています。自然に触れて自分を充電できるような、昨年と同じようなことができればいいですね。」
―日本の観客は、スクリーンでのあなたのロミオ役の素晴らしい演技にきっと魅せられるはずです。
ワディム「ありがとうございます。映画館でみなさんに僕のロミオを観てもらえると嬉しいです!」
2025.05.26
項目 | 時間 |
---|---|
■解説+インタビュー | 18分 |
■第1幕 | 57分 |
休憩 | 6分 |
■解説+インタビュー | 15分 |
■第2幕 | 35分 |
休憩 | 10分 |
■解説+インタビュー | 10分 |
■第3幕、カーテンコール | 48分 |
上映時間:3時間19分 |
2025.05.21
大変ご好評をいただきまして、TOHOシネマズ 日本橋にて延長上映が決定致しました!
~5/28(水)まで
★上映スケジュールは劇場HPをご覧ください
https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/073/TNPI2000J01.do
※5/24(土)、25(日)、29(木)の上映はございません。
2025.04.14
項目 | 時間 |
---|---|
■解説+インタビュー | 13分 |
■第1幕&第2幕 | 64分 |
休憩 | 12分 |
■解説+インタビュー | 6分 |
■第3幕 | 42分 |
休憩 | 12分 |
■解説+インタビュー | 8分 |
■第4幕、カーテンコール | 31分 |
上映時間:3時間8分 |
2025.03.24
コラム
フランスの作曲家ジャック・オッフェンバックの幻想オペラ『ホフマン物語』は、“オペレッタの王様”と称されたオッフェンバックがパリの音楽界から“オペラ作家”として認められたいとの想いで取り組んだ、彼にとって最後となった作品だ。未完のままオッフェンバックは61歳でこの世を去り、友人の作曲家エルネスト・ギロー(『カルメン』の台詞をレチタティーヴォに作曲した人)が補筆完成して、1881年2月10日にパリのオペラ・コミック座で初演された。
その後、上演した劇場の火災などで初演の楽譜や資料が散逸し、現在まで決定版がないまま複数のバージョンの楽譜が存在している。どのバージョンも、詩人ホフマンが3つの失われた恋を振り返るという基本ストーリーは変わらないが、オッフェンバック自身が命名した「幻想オペラ」(Opera fantastique)という要素がクリエイターの想像力を掻き立てるのか、物語の順番や音楽が異なるさまざまな『ホフマン物語』が上演されている。
英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ2024/25『ホフマン物語』では、挑発的な読み替えで常に論争を巻き起こすイタリアの演出家ダミアーノ・ミキエレットによるポップで奇抜、ちょっとダークな幻想的ステージが見どころだ。
クリエイティブチームをオールイタリア人で固め(セットデザイン:パオロ・ファンティン、衣装:カルラ・テーティ、照明:アレッサンドロ・カルレッティ、振付:キアーラ・ヴェッキ)、バレエあり、サーカスあり、そのユーモアと遊び心は、まるでイタリアの映画監督フェデリコ・フェリーニの映画のよう。
人生にも詩作にも幻滅している初老の詩人ホフマンは、ニュルンベルクの居酒屋ルーサー・タバーンで、詩のミューズの導きにより、パリの少年時代(オランピアへの恋)、ミュンヘンの青年時代(アントニアとの恋)、大人になったヴェネツィア(ジュリエッタとの恋)という若き日の恋した時代を旅することで、これからの詩作人生に新たな希望を見出す。このようなドラマ展開も人間賛歌を謳うフェリーニ的だ。観る人それぞれが何かしらの想いを抱く『ホフマン物語』である。
ちなみに、筆者がミキエレット演出に初めて接したのは、2010年ロッシーニ・オペラ・フェスティバルを取材した『シジスモンド』だ。舞台を本来のポーランド王宮から精神病院に読み替え、その大胆な演出に対してカーテンコールでは激しいブーイングが飛び交った。彼は当時のインタビューで、「ロッシーニのオペラは、例えば愛の場面でもはっきりと愛を表現している音楽になっていないところに、演出のイメージがふくらむのです」と語っていた。音楽から発想を得て、今となっては古臭いかもしれないオペラの物語を、現代の私たちに違和感なく観てもらうための読み替え演出。それがミキエレットの世界的な人気の理由なのだろう。
国際色豊かな旬の歌手のパフォーマンスを、映画館の迫力のスクリーンと音響空間で堪能できるのも、英国ロイヤル・バレエ&オペラの醍醐味のひとつである。
主人公ホフマンを歌うのは、ペルー出身の世界的スーパーテノール、ファン・ディエゴ・フローレスだ。51歳の彼は少年から若者、青年、老人までを演じ切る。ホフマンの“宿敵”であるリンドルフ、コッペリウス、ミラクル博士、ダペルトゥットの4役には、イタリアの人気バスバリトン、アレックス・エスポージト。オランピアは、本公演でロイヤル・オペラ・ハウスデビューを飾ったロシアの新進ソプラノ、オルガ・プドヴァ。アントニアは、2023年パレルモ・マッシモ劇場来日公演『椿姫』のヴィオレッタが記憶にも新しいアルバニア出身のソプラノ、エルモネラ・ヤオ。ジュリエッタを演じるのは、今年10月に新国立劇場2025/26シーズン開幕公演『ラ・ボエーム』でミミを歌うイタリア系アメリカ人ソプラノ、マリーナ・コスタ=ジャクソン。彼女とニクラウスを演じるフランス系カナダ人のメゾソプラノ、ジュリー・ブリアンヌが、第3幕冒頭に「ホフマンの舟歌」を歌う。
指揮は、故クラウディオ・アバドの片腕としてマーラー・チェンバー・オーケストラやルツェルン祝祭管弦楽団のコンサートマスターを務めた後、指揮者に転向したイタリア出身のアントネッロ・マナコルダ。室内オーケストラ「カンマーアカデミー・ポツダム」の首席指揮者で、今年2月にパリ・オペラ座の新制作であるドビュッシーの歌劇『ペレアスとメリザンド』を指揮し、8月にはドニゼッティの歌劇『マリア・ストゥアルダ』でザルツブルク音楽祭にデビュー予定。まさに「いつ観るか?今でしょ!」の指揮者の一人だ。
2025.03.21
現地メディアからは数々の賛辞とともに高評価を頂いております!
ぜひこの機会にご鑑賞くださいませ。
★★★★★
INEWS
Michael Church
★★★★
THE STANDARD
Barry Millington
★★★★
GUARDIAN
Flora Willson
★★★★
THE TELEGRAPH
Nicholas Kenyon