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2024.11.08

ロイヤル・オペラ『フィガロの結婚』タイムテーブルのご案内

項目 時間
■解説+インタビュー 18分
■第1幕&第2幕 103分
休憩 18分
■解説+インタビュー 13分
■第3幕&第4幕、カーテンコール 84分
上映時間:3時間56分

本編中に一部音声の不具合がございます。これらは公演撮影時に生じたものとなりまして、誠に恐縮ながら、ご理解とご了承の程お願い申し上げます。

2024.11.08

英国ロイヤルバレエ&オペラinシネマ2024/2025 シーズン開幕を記念し朝日カルチャーセンターにて講座開催が決定致しました!

『フィガロの結婚』の聴き所はどこ?

講師:岡田暁生/京都大学教授
日程:11月21日(木) 19:00~20:30
回数:1回
備考:Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
   お問合せはasaculonline001@asahiculture.comで承ります。

詳しくはこちらへ
『フィガロの結婚』の聴きどころはどこ? | 新宿教室 | 朝日カルチャーセンター

2024.10.09

「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2024/25」として新たに開幕!魅力溢れる6本のバレエと4本のオペラがラインナップ!

11月29日(金)より、いよいよ開幕する『英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2024/25』。世界最高峰のバレエとオペラの魅力に満ちた至福の時間を、是非映画館の大スクリーンでご堪能ください!

【全10演目】
◆バレエ演目
①『不思議の国のアリス』、② 『くるみ割り人形』、③『シンデレラ』、
④『白鳥の湖』、⑤『ロミオとジュリエット』、⑥『バレエ・トゥ・ブロードウェイ』

◆オペラ演目
①『フィガロの結婚』、②『ホフマン物語』、③『トゥーランドット』、④『ワルキューレ』

〈バレエの見どころ〉
今シーズン最大の注目作は、ロイヤル・バレエで生まれ、世界中で上演されている超人気作品『不思議の国のアリス』。ブロードウェイミュージカル『パリのアメリカ人』の振付で知られるクリストファー・ウィールドンが手掛け、フランチェスカ・ヘイワード、ウィリアム・ブレイスウェル、ローレン・カスバートソン、スティーヴン・マックレーと、プリンシパルが4人も登場するかつてない黄金プログラムとなっている。
続いてはロイヤル・バレエの代表作で、伝統と革新が見事に調和した『シンデレラ』。意地悪な姉妹役を男性ダンサーが女装して演じる点は、ユーモアを加えつつ新鮮な驚きをもたらす演出であり、前回のリニューアルで導入された、花々で彩られた美しいプロダクションも観客を魅了する要素の一つ。また今回の公演では、日本出身のプリンシパル・ダンサー、金子扶生がシンデレラ役を演じることも大きな注目点となっている。
演劇性を重視したロイヤル・バレエならではの名作『ロミオとジュリエット』は、運命に翻弄された恋人たちが、熱烈な恋を通して短い生を駆け抜けるシェイクスピア原作の永遠のラブストーリー。セルゲイ・プロコフィエフの音楽と重厚な美術、ケネス・マクミランの振付で何度観ても涙せずにはいられない深い感動をもたらすことだろう。
そしてシーズン最後を飾るのは、『不思議の国のアリス』を手掛け、ミュージカル界でも人気のクリストファー・ウィールドンの4作品を上演する『バレエ・トゥ・ブロードウェイ』。トニー賞受賞の名作ミュージカル『パリのアメリカ人』の一場面が、ロイヤル・バレエのダンサーによって初めて演じられる予定。この見どころ満載の公演をお見逃しなく。
そしてアンコール上映は、冬の風物詩で家族連れにも人気の『くるみ割り人形』と、言わずと知れたバレエの代名詞『白鳥の湖』の2作品。これらの6作品を観れば、世界トップクラスのバレエ団、ロイヤル・バレエの魅力を堪能できること間違いなしのラインナップとなっている。

〈オペラの見どころ〉
オーストリア、フランス、イタリア、ドイツの名作をラインナップ。シーズンの幕開けを飾る『フィガロの結婚』では、オーソドックスな衣装、美術、照明を背景に、モーツァルトの美しい音楽に合わせて、フィガロとスザンナの結婚式当日のドタバタが躍動する。
ホフマンと3人の女性の幻想的な恋物語『ホフマン物語』は、「キャンピング・コジ」として知られる新国立劇場『コジ・ファン・トゥッテ』の演出家ダミアーノ・ミキエレットと、テノールのスーパースター、フアン・ディエゴ・フローレスのタッグによる新制作で、世界中のオペラファンの注目を集めている。
そして1984年プレミエという長い人気を誇るアンドレイ・セルバン演出版『トゥーランドット』。北京を舞台に絶世の美女トゥーランドット姫と彼女に恋した異国の王子カラフを描く本作は、太極拳を取り入れた特徴的な動きが見どころだ。
神々の長ヴォータンが人間女性との間にもうけた双子の兄妹の愛と、女戦士ブリュンヒルデが神々の世界を追放されるまでを壮大に描いた『ワルキューレ』新制作では、ワーグナー上演作品の総本山と言われているバイロイト音楽祭で高い評価を得たバリー・コスキーの斬新な発想と奇抜なアイデアに期待ができる。

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【全10演目と公開日】※1週間限定公開※

①ロイヤル・オペラ『フィガロの結婚』:2024年11月29日
②ロイヤル・バレエ『不思議の国のアリス』:2025年1月17日
③ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』:2025年2月7日
④ロイヤル・バレエ『シンデレラ』:2025年2月21日
⑤ロイヤル・オペラ『ホフマン物語』:2025年3月28日
⑥ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』:2025年5月16日
⑦ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』:2025年6月6日
⑧ロイヤル・オペラ『トゥーランドット』: 2025年6月20日
⑨ロイヤル・オペラ『ワルキューレ』: 2025年9月5日
⑩ロイヤル・バレエ『バレエ・トゥ・ブロードウェイ』: 2025年9月19日

【上映劇場】
*札幌シネマフロンティア(北海道)
*フォーラム仙台(宮城)
*TOHOシネマズ 日本橋(東京)
*イオンシネマ シアタス調布(東京)
*TOHOシネマズ 流山おおたかの森(千葉)
*TOHOシネマズ ららぽーと横浜(神奈川)
*ミッドランドスクエア シネマ(愛知)
*イオンシネマ 京都桂川(京都)
*大阪ステーションシティシネマ(大阪)
*TOHOシネマズ 西宮OS(兵庫)
*kino cinéma天神(福岡

<料金:一般¥3,700円 学生¥2,500円(税込)>
※「ワルキューレ」は一般¥5,200円 学生¥3,700円(税込)

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2024.09.17

オペラ『アンドレア・シェニエ』見どころをご紹介します。

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香原斗志(オペラ評論家)

ROHの《アンドレア・シェニエ》が最高にエキサイティングな理由

《アンドレア・シェニエ》を超える情熱的なオペラは思い当たらない。舞台はフランス革命をはさんだ激動の時代。実在した詩人シェニエを中心に、伯爵令嬢マッダレーナ、彼女の家の従僕ジェラールらの運命は、革命の前後で劇的に変わる。運命に翻弄される彼らの愛と嫉妬と死は、いきおい究極の魂の叫びになる。展開はスピーディで、変化に富む音楽は雄弁な管弦楽に支えられ、人物の情熱はそのまま旋律となって聴く人の心を揺さぶる。
 ロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督を22年の長きにわたって務めたアントニオ・パッパーノが、退任前の最後の上演にこの作品を選んだのは、とても納得がいく。そしてパッパーノの手腕により、激しい情熱は品格と美に昇華させられた。

作り込みが徹底してごまかしがない舞台

2015年に初演されたデイヴィッド・マクヴィカー演出の舞台の再演だが、読み替えも時代の移行もなく、第1幕はフランス革命前後、第2幕から第4幕はその5年後として描かれる。歴史の細部が大切にされ、その結果、洗練された舞台装置や衣裳は簡略化や抽象化されることなく、細部まで徹底して作り込まれてごまかしがない。しかも、どの場面も人物の動きをふくめ映画のように作り込まれている。
 第1幕は、貴族のサロンならではのエレガンスや華やかさを、パッパーノが指揮する管弦楽が、軽快なテンポに抑揚とニュアンスを深く刻みながら表現し、そこに時おり革命の足音を忍び込ませた。それがリアルで洗練された舞台装置と衣裳と抜群の相性を見せる。

 ここで、ごく簡単にあらすじを記しておこう。
 革命前夜のコワニー伯爵のサロンで、令嬢マッダレーナと詩人シェニエは出会い、従僕のジェラールは世界を変える決意をし、伯爵家を飛び出す。5年後、零落したマッダレーナはパリでシェニエに再開して愛し合う。一方、革命政府の高官になったジェラールは、マッダレーナに思いを寄せつつ、反革命的なシェニエを告発する。だが、マッダレーナに懇願されて弁護するが、結局、シェニエへの死刑判決が。マッダレーナは進んで別の死刑囚の身代わりになり、シェニエと2人で断頭台に登る。
 第1幕で貴族のサロンを感じさせたウンベルト・ジョルダーノの音楽は、第2幕以降は革命後の社会を写実する。そして、パッパーノの指揮する管弦楽は、見事に写実的であると同時に、エレガンスをけっして失わない。

感情が豊かに溶け込んだ声が雄弁な管弦楽と一体化

 ところで、《アンドレア・シェニエ》は、19世紀末にイタリアで流行したヴェリズモ・オペラに属すると説明される。「ヴェリズモ」とは真実主義という意味で、残虐な場面が多用され、音楽的には技巧を排して感情が直接的に表現される、といった特徴がある。
 たしかに、このオペラはヴェリズモと切り離せない。だが、この演奏を聴き、この舞台を観ると、ヴェリズモ・オペラのとらえ方自体を変えざるをえなくなる。
 一般にヴェリズモ・オペラは、歌手たちが声を張り上げて感情を表し、激しい情熱はいわゆる「泣き」を入れて表現するというイメージが強い。しかし、この《アンドレア・シェニエ》では違う。

 第1幕の冒頭近くから、ジェラール役のアマルトゥブシン・エンクバートは、貴族に反発するソロを実に格調高く表現した。続いて、シェニエ役のヨナス・カウフマンがアリア「ある日青空を眺めて」を、ニュアンスたっぷりに歌い上げた。これは情熱的なシェニエが、マッダレーナに愛の崇高さを伝える即興詩だが、情熱が上ずることなく、ピアニッシモも駆使した多様で豊かなニュアンスとして、音楽に織り込まれた。
また、第2幕で再会したマッダレーナとシェニエの愛の二重唱。甘い旋律が抑揚をつけられてゆったり奏され、そこにカウフマンと、マッダレーナ役のソンドラ・ラドヴァノフスキーの、強弱と色彩によって感情が豊かに溶け込んだ声が、濃密な情熱を表現した。
このように、このオペラにみなぎる情熱は、剥き出しの感情としてではなく、すぐれた歌手たちの高度なテクニックを前提にした、ニュアンスたっぷりの洗練された歌唱として表現される。それはパッパーノの徹底した指示もあってのことだろう。その結果、声は雄弁で細やかな管弦楽と見事に一体化する。
第3幕の、ジェラールのアリア「祖国の敵」の力強い品格。マッダレーナのアリア「母は死んで」の磨かれた歌唱による深すぎる感情表現。第4幕の、シェニエのアリア「五月のある美しい日のように」の端正な情熱。シェニエとマッダレーナの最後の二重唱はいうまでもない。それだけでも価値があるが、そこに止まらない。
深い感情が渦巻く情熱的な歴史劇が、作り込まれた舞台上で、洗練された完璧な音楽で表現され、名歌手たちの磨き抜かれた至芸に酔える。この《アンドレア・シェニエ》を超えるエキサイティングなオペラ体験は、滅多にできるものではない。

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2024.08.28

オペラ『カルメン』見どころをご紹介します。

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家田 淳(演出家・洗足学園音楽大学准教授)

求め合い傷つけ合う男と女の物語を、アイグル・アクメトチナが魅せる!

昨年のロイヤル・オペラ・ハウス・シネマ「セビリアの理髪師」で主役ロジーナを歌って魅了したアイグル・アクメトチナが、ついにカルメンで登場する。

アクメトチナ(実際の発音は「アクメチナ」に近い)は、カルメン役でまさにオペラ界を席巻中の新生スター。去年から今年にかけては、メトの新制作「カルメン」に出演したほか、ベルリン・ドイツ・オペラ、バイエルン州立歌劇場に登場、今後もグラインドボーン音楽祭、アレーナ・ディ・ヴェローナ他で同役を歌う予定で、世界の主要歌劇場・音楽祭で次世代のカルメン旋風が吹いている。

現在若干28歳のアクメトチナは、ロシア・バシコルトスタン共和国の小さな村の出身で、幼い頃から歌が得意。「歌手のアイグル」と呼ばれて育ち、ポップス歌手を夢見る少女だった。オペラに目覚めたのは14歳の頃だったが、田舎町の暮らしゆえ、実際に歌手になれるとは思っていなかったという。転機は19歳の時。師匠の強い勧めで出場したロシアの国際コンクールで、ロイヤル・オペラ・ハウス(以下ROH)の養成所ジェットパーカー・ヤングアーティスツ・プログラムの所長に見出され、同プログラムのオーディションを受けて見事入所を果たしたのだ。

ROHのヤングアーティスツ・プログラムはオペラ界最高峰の養成機関で、世界中から毎年数千人の応募がある中、入所できるのは歌手5名、指揮者、ピアニスト、演出家各1名のみ。2年間のプログラムで、演技、各国言語などのコーチングを受けながら、本舞台に小さい役で出演できる。筆者は「歌手の演技訓練法」を学ぶための研修先にこの機関を選び、2014年に半年間、非正規メンバーとして各種クラスに参加したが、オペラに関わるあらゆる側面を実践的に学べる非常に充実したプログラムだった。

メンバーはある程度プロとしての経験がある20代後半から30代前半のアーティストが中心で、アクメトチナの20歳での入所は異例中の異例。そしてプログラム在籍2年目、ROH本舞台の「カルメン」に主役のカバーとして参加していたところ、本役の歌手が降板し、いきなり主役デビューを果たして話題をさらったのである。たった21歳でカルメンを歌うのは、ROHの長い歴史における最年少記録だった。

さて、アクメトチナはどんな歌手か? まず、聴く者を体ごと包み込み、圧倒的な快感を与える声。天性のチャーミングなオーラ。加えて、技術と直感を組み合わせた、リアルで繊細な演技力がある。ROHのプログラムで学んだだけあり、彼女は持ち前のカリスマだけで押し切ることはしない。同じ役を何度歌っても演技がありきたりにならないよう、稽古場では演出家とやりとりを深め、役の心理をつかみ、プロダクションごとに新たなカルメン像を造形すると語っている。その上で、天性の勘で本番に臨む。「カルメン役に限っては、事前に計算ができない。もちろん演出の決まり事は守るが、その日、その瞬間に自分がどうなるかは、やってみるまでわからない。舞台に立ったらカルメンとして生きる」。これは理想的なオペラ歌手のあり方ではないだろうか。毎回がスリリングな舞台になること、間違いなしである。

インタビューで垣間見える彼女の人柄は、気さくで謙虚。芸術を通じて社会をより良い場所にし、将来的には若手アーティストをサポートする財団を設立する夢も語っている。来年はカルメン以外の様々な役にも挑戦するとのこと。そんなアクメトチナが今後どんな風に羽ばたいていくのか、目が離せない。

最後に、演出について少し。「カルメン」は時代設定を変えても違和感の少ない作品で、近年は現代に設定を移して観客に親近感を持たせつつ社会の闇を描き出す演出が多い。メトのプロダクション(こちらもホセはベチャワだった)はアメリカの軍需工場に舞台を置き、暴力と搾取にさらされる女性たちに焦点を当てたが、今回のダミアーノ・ミキエレットの演出は現代でももう少し抽象的な設定にすることで、この物語の普遍性が際立つようになっている。1970年代、南スペインの荒涼とした「どこか」。舞台上は殺伐とした屋外の空間と、幕によって警察の詰所になったりナイトクラブになったりする小さな小屋。盆を効果的に使ってこのシンプルなセットにさまざまな角度を与えつつも、空気感は閉鎖的。重く暑苦しい気候の中、文化も娯楽もない土地に閉じ込められた軍人たちと女たちは、必然的にお互いを求め合い、牙を剥いて傷つけ合う。1幕で弱い者いじめをする子どもの集団は、大人社会の縮図のよう。また、「ホセの母親」を黙役として登場させ、ホセの深層心理に潜む暗い影を暗示させているのも興味深い。この設定の中でアクメトチナとベチャワがどのような新しい表情を見せるか、ぜひご覧いただきたい。

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