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2026.01.19

ロイヤル・バレエ『リーズの結婚』の公開を記念してスペシャルトークショーを開催!
バレエ演出振付家・山本康介が今シーズンの魅力を語り尽くす!

英国ロイヤル・バレエ&オペラの名作舞台を映画館で楽しめる『英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2025/26』。そのバレエ第一弾となる『リーズの結婚』の上映を前に、スペシャルトークイベントが1月16日、TOHOシネマズ 日本橋にて開催された。本イベントは19時からの上映回に先立ち実施され、会場には作品を心待ちにする多くの観客が来場。上映前とは思えないほどの熱気に包まれる中、舞踊評論家で本シリーズのシネマ字幕監修も務める森菜穂美が司会として登壇し、トークショーがスタート。ゲストとして登壇したのは、バレエ演出振付家/洗足学園音楽大学教授で元バーミンガム・ロイヤル・バレエ団、元ファースト・ソリストの山本康介。ローザンヌ国際バレエコンクールのテレビ放映の解説を担当し、著書「英国バレエの世界」を出版するほど、英国バレエを知り尽くした山本だからこその視点で、本作の見どころから2025/26シーズンのラインナップに至るまで英国ロイヤルの魅力について幅広く語ってくれた。

山本は、司会の森から『リーズの結婚』の感想を尋ねられると、「とても役柄に合っていると思いました。主役のコーラスを演じたマルセリーノはアクティブな人で、リーズ役のフランチェスカともとても仲が良い。2人の自然なやりとりや仕草が、そのままバレエに反映していると感じました」と、キャスト陣へ称賛を送った。山本は、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団時代にコーラス役を演じており、『リーズの結婚』の振付を手掛けた名匠フレデリック・アシュトンと直接仕事をしていた芸術監督のデイヴィッド・ビントレーから指導を受けていたと話す。当時を振り返り、「僕は17歳でバレエ団に入りました。当時、日本人は演技派というよりきちんとしたステップを踏みながらそつなくテニックをこなす人という認識だった。その中でデイヴィッドは僕にドラマ性を見出してくれました。2幕にフルートボーイという役があるんですが、イギリスではその役をやる小さい男の子は出世頭になると言われていて、その後、突然準主役のアラン役に抜擢されたんです。最初は役の重みを分かっていなかったので「金髪のカツラ被るのが嫌だな」くらいにしか思っていませんでしたが(笑)。けれど、1つずつ動きを分解しながら練習を重ねると、演じる楽しさを感じるようになりました」と、恩師との思い出を振り返りながら、演じることの楽しさを見出した瞬間を明かした。

さらに山本は以前、デイヴィッドにアシュトンの印象を尋ねたことがあると話す。「彼は全然厳しくなくて、お芝居に関して絶対こうしろと指示するようなことはなかった。ダンサーの感情を優先して、自然に気持ちが沸き上がってくるように誘導するような振付家だったと話してくれました」と振り返った。山本は自身が手掛ける振付にもアシュトンの要素を取り入れていることを明かし、「フレッド・ステップというのが、フレデリック・アシュトンの作品の中には必ず出てきて、自分の振付にも取り入れているんです。アシュトンの作品を観る機会があったら皆さん是非探してみてください。「ウォーリーを探せ」みたいに見つけてもらえたら面白いんじゃないかな」と話し、これから本編を鑑賞する観客へメッセージを送った。さらに、本作の見どころについて山本は「『リーズの結婚』は日常を描いた作品で、不幸事もないし悪者もいない。とても平穏でファミリー的な物語で、今の世の中に必要な作品だと思います。古い要素を持っているバレエ作品で、マリウス・プティパの古典バレエの踊りの部分と、物語を引っ張るお芝居の部分が比較的分かれているバレエのため、既存のバレエとしては比較的入りやすい作品だと思います。初めてバレエを観る方にも分かりやすい作品です」と語った。

『英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2025/26』を配給している東宝東和では、ロイヤル・バレエのほか、パリ・オペラ座バレエのシネマも配給している。1月23日(金)からはパリ・オペラ座の『くるみ割り人形』が上映され、ロイヤルとパリ・オペラ座それぞれの「くるみ」を見比べて楽しむことができる。山本にロイヤル・バレエとパリ・オペラ座バレエの違いについて尋ねると、「イギリスは演劇の国なので、心身共に演じ切ることに重きを置いています。その反面、フランスはすごく型を重んじているというか。歌舞伎と能みたいな違いかなと思います」と、元ダンサーだからこその視点でその違いを語る。今シーズンの『英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2025/26』では、『シンデレラ』『くるみ割り人形』『ウルフ・ワークス』『ジゼル』が上映される。それぞれの作品の見どころについて、「古典の作品は皆さん好きだと思いますが、『ウルフ・ワークス』のように文学的なモチーフがバレエに発展している作品は好き嫌いが分かれると思います。僕が伝えたいメッセージとしては、新しい事をやっていかないと古いものも残っていかない。新しいバレエも何度でも鑑賞していくと自分の感性が磨かれて、見比べていくことで良さが分かり、バレエをより楽しめるようにと思います」と、バレエファンに向けて、バレエをより楽しむコツを明かしてくれた。さらに、「シネマシーズンは、映画館でリラックスしながら見ることができるうえに、劇場とは違ったアングルを楽しむことができる。是非、皆さんには色んな演目を楽しんでいただきたいです」と、締めくくり、温かな拍手に包まれたままイベントは幕を閉じた。

2026.01.16

『リーズの結婚』見どころをご紹介します

コラム

森菜穂美(舞踊評論家)

鮮やかな足捌きを見せる、ユーモラスで可愛い着ぐるみのニワトリたちの踊りで幕が開いて観客の心をギュッと掴むバレエ作品『リーズの結婚』。ニワトリたちの他、本物の愛らしいポニー、男性ダンサーが女装した母親シモーヌ、赤い傘が大好きなアランなど多彩なキャラクターが、のどかな農村で大活躍。主人公の村娘リーズとその恋人コーラスをめぐる大騒動の行方は?リーズとコーラスがピンクのリボンを編み込んだり、お互いに身体に巻き付けたり、8人のダンサーにリボンで支えられてリーズがバランスを取るという趣向や、シモーヌやリーズの友人たちが踊るタップダンス的な“木靴の踊り”など英国伝統のパントマイムや民族舞踊も盛り込んだ、幸福感あふれるラブコメディです。

『リーズの結婚』の原題は『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』。フランス語で「監督不行き届きの娘」という意味で、フランス革命前夜である1789年にボルドーでこの作品を振り付けたジャン・ドーヴェルヴァルが「母親に叱られた娘」という、納屋の中で母親に叱られている少女を描いた版画を見て思いついたとのこと。現存する最も古いバレエ作品の一つです。ロシアや米国でもシャルル・ディドロの改訂版、マリウス・プティパ、レフ・イワノフによる改訂版、ニジンスカ振付による作品が上演されてきました。

英国バレエを代表する名匠フレデリック・アシュトンが1960年に自身の版を初演すると、たちまち大人気となりました。2010年にはロイヤル・バレエ、2018年にはバーミンガム・ロイヤル・バレエの来日公演で上演され、パリ・オペラ座バレエでも頻繁に上演されています。1991年から日本の牧阿佐美バレヱ団のレパートリーにもなっています。今回は、ロイヤル・バレエでは9年ぶりの上演ということで、現地では多くの観客が待ち望んでいた名作のリバイバルとなりました。

アシュトンならではの振付の特徴である素早いピルエット、高いリフトや細かく軽快な足捌き、上半身に角度をつけて立体的に見せるエポールマンといったテクニックが盛り込まれて、英国スタイルを象徴する作品となっています。のんびりした作品のようで技術的には非常に難しく、リボンや箒、酒瓶、傘、スカーフなど多くの小道具を使いながら踊ったり、コミカルな演技をしながら軽快に踊ったりしなければなりません。

フランス生まれの作品ですが、アシュトンは画家ジョン・コンスタブルが描く英国の田園風景にインスピレーションを得て、田園に太陽が降り注ぐ様子を描こうと考え、メイポールを囲んでの賑やかな群舞などフォークダンス的な要素も取り入れました。1幕終盤のクライマックスの盛り上がりはひたすら楽しく、観客も大いに盛り上がります。娘の恋にやきもきする、時に厳しくも愛情深い母親であるシモーヌを男性ダンサーがどのように演じるかも見せ場の一つです。リーズとコーラスの愛、リーズとシモーヌの親子の愛と愛情にあふれ、悪い人が一人も登場しない作品であると共に、お姫様や妖精ではなく庶民が主人公というのも、この作品の魅力です。リーズに求婚するお金持ちの息子アランは、ちょっとずれているけど純真な性格の愛すべき人物です。個性的な人々の営みを優しい眼差しで描く名作として、本作は長年愛されてきており、あたたかい気持ちにさせてくれます。

リーズを演じるのは、アシュトン作品を得意とするフランチェスカ・ヘイワード。映画『キャッツ』『ロミオとジュリエット』で見せた卓越した演技力と安定したテクニックを発揮して、生き生きとした村娘を時にユーモラスに、時にロマンティックに演じています。恋人コーラスを演じるのは、『赤い薔薇ソースの伝説』でもヘイワードとの相性の良さを見せ、愛嬌溢れるマルセリーノ・サンベ。柔らかく高い跳躍や足捌きも鮮やかで理想的なパートナーシップを築いています。

リーズの母シモーヌ役を女装して演じるのは、ファースト・ソリストのジェームズ・ヘイ。もともと『眠れる森の美女』などでの王子役も演じ、端正な容姿と美しいつま先を持ち優れたテクニックを誇りますが、最近ではロイヤル・バレエ&オペラ in シネマの次回上映作品『くるみ割り人形』のドロッセルマイヤー、再上映される『シンデレラ』の義理の姉妹などキャラクターロールで新境地を開いています。木靴の踊りでシモーヌと共に木靴を履いて踊るリーズの友人たち役で佐々木万璃子、前田紗江、桂千理の日本出身ダンサーたち、そしてコーラスの友人役で五十嵐大地も活躍しており、群舞に至るまでロイヤル・バレエのダンサー達の生き生きした演技を楽しむことができます。

今年7月にはロイヤル・バレエの来日公演でも上演される珠玉の名作を、一足先に映画館の大スクリーンで楽しんでください。

2026.01.09

『リーズの結婚』スペシャルトークイベント実施!

英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2025/26 バレエ第一弾『リーズの結婚』、スペシャルトークイベントを実施!

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日時:1月16日(金) 19:00~の回 ※ 上映前
会場:TOHOシネマズ 日本橋
トークショー:19:00~19:30
司会:森菜穂美(舞踊評論家/シネマ字幕監修)
ゲスト:山本康介(バレエ演出振付家/洗足学園音楽大学教授)

チケット料金:一律3700円

チケットはこちらから
https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/073/TNPI2000J01.do

※本イベントは、天候やその他本イベント事務局の判断により、舞台挨拶の開催中止や、登壇者・スケジュール等の内容が予告なく変更になる場合がございます。
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25/26シーズンバレエ第一弾の公開を記念し、「リーズの結婚」をはじめ今シーズンのバレエ演目の見どころをご紹介!
シネマ字幕監修の森菜穂美さんと英国バレエを知り尽くす山本康介さんによる一夜限りのスペシャル企画となっております。
演目の楽しみ方はもちろん、ダンサーたちの素顔も聞ける!?特別な機会にぜひご来場ください。

 

山本康介(バレエ演出振付家/洗足学園音楽大学教授)

プロフィール
愛媛県今治市生まれ。7歳よりバレエを始める。1996年、13歳という若さで名古屋世界バレエ&モダン・ダンスコンクールにおいて審査員特別賞、ポーランド国立オペラ劇場よりニジンスキー賞を受賞。1998年英国ロイヤルバレエ学校入学。2000年首席卒業者に贈られるニネット・デ・ヴァロワ賞を受賞し、イギリスを代表する振付家デヴィッドビントレー率いるバーミンガム・ロイヤル・バレエに入団。数々の作品でプリンシパル・ソリストを務め、バレエ団の公演においても振付を手がける。帰国後は振付家、演出家、指導者として活動し、『プレミアムカフェ』(NHK)『らららクラシック』(NHK)『ローザンヌ国際バレエコンクール』(NHK)の解説者としても出演。著書『英国バレエの世界』(世界文化社)を出版。英国ロイヤル・バレエ団、英国バーミンガムロイヤルバレエ団、新国立劇場バレエ団、スターダンザーズバレエ団 ゲスト教師
洗足学園音楽大学バレエコースアカデミックプロデューサー

2025.12.19

『リーズの結婚』タイムテーブルのご案内

項目 時間
■解説+インタビュー 17分
■第1幕 66分
休憩 8分
■解説+インタビュー 25分
■第2幕、カーテンコール 45分
上映時間:2時間41分

本編中に一部ノイズがございます。
公演撮影時に生じたものとなりますため、大変恐れ入りますがご了承頂けますと幸いです。

2025.12.15

『トスカ』見どころをご紹介します

コラム

石川 了(ジャーナリスト/音楽・映画・ミュージカルナビゲーター)

プッチーニのオペラ『トスカ』というと思い出すのが、佐々木倫子の漫画『動物のお医者さん』のエピソードだ。公演中にトスカがスカルピアを刺殺する場面でナイフが用意されておらず、トスカはスカルピアを絞め殺して(!?)その場を凌ぐ。トスカが塔の上から飛び降りると、エキストラで参加した主人公たち演じる銃殺隊も、トスカに続いて次々と飛び降りていく。今でもそのシーンが目に浮かび、思わず笑ってしまう。
実際、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場で、20世紀を代表するソプラノ歌手のモンセラート・カバリエ演じるトスカが飛び降りたら、安全のためのトランポリンの反発力で、彼女の跳んでいる姿がふたたび現れたとか。このラストシーンでは怪我をする人もいて(その理由で代役が演じた公演を観たことがある)、トスカ役の歌手も命懸けだ。
もちろん『トスカ』はこのような笑える内容ではない。たしかに「歌に生き、恋に生き」「妙なる調和」「星は光りぬ」などポピュラーなアリアが満載で、全編を彩るオーケストラもドラマティックだ。しかし、その甘美な音楽のなかで繰り広げられるのは、嫉妬や罠、拷問、殺人、強姦未遂、処刑、自殺といった陰惨な世界である。

 

1900年ローマのコスタンツィ劇場で初演されたオペラ『トスカ』は、1887年パリ初演のヴィクトリアン・サルドゥの戯曲『ラ・トスカ』に基づく。ここからは原作の戯曲を参考に、オペラがより楽しめる情報を紹介しよう。
物語の舞台は、1800年6月17日から18日にかけてのローマ。ナポレオン率いるフランス軍がイタリア北部でオーストリア軍に勝利した「マレンゴの戦い」の日である。当時のイタリアはまだ統一されておらず、ローマはナポレオン体制のローマ共和国崩壊直後、教皇国家のナポリ王国による統治下にあった。
捨て子のトスカはヴェローナの修道院で育ち、音楽の才能を活かしてスター歌手に成長する。一方、カヴァラドッシはローマの名門貴族の出身で、フランス革命のパリで育った自由主義者。教皇国家からすると危険分子だ。
ローマ共和国執政官のアンジェロッティは以前、昔の遊び相手との情事を暴露し、人前で侮辱された彼女は復讐に燃えていた。その彼女がナポリ王国の支配的な立場となり、王国がローマを奪還すると、アンジェロッティは反逆罪で投獄される。その理由は政治的要因だけではなかったのだ。
ナポリからローマに着任した警視総監スカルピアは、裸一貫で成り上がった労働者階級出身の役人だ。彼は、ナポリ王女とアンジェロッティの昔の情事の相手という二人の女性権力者からアンジェロッティの脱獄を厳しく叱責され、自身の立場が脅かされている。彼を捕えなければ命も危ない。
オペラでは、このあたりの事情をカット。アンジェロッティの比重は軽くなり、スカルピアを徹底的な悪役に変更。カヴァラドッシとアンジェロッティの死刑とトスカの肉体を得るためには手段を問わない冷酷なサディストとなった。現在、戯曲はほとんど上演されないが、プッチーニのオペラが今も高い人気を誇っているのは、台本作家ルイージ・イッリカ&ジュゼッペ・ジャコーザの脚色の力もあるのだろう。

 

戯曲の初演でトスカを演じたのは、伝説の名女優サラ・ベルナール。三島由紀夫翻訳台本による文学座公演(1963年)では、杉村春子がトスカを務めた。オペラでは、マリア・カラスがもはや伝説。やはりトスカは名女優が演じるものなのだ。
現代におけるオペラ名女優といえば、ロシア生まれ(現在はオーストリア国籍)のソプラノ、アンナ・ネトレプコが挙げられるだろう。RBO新シーズン開幕を飾る『トスカ』では、オペラ監督オリバー・ミアーズの新演出と44歳のチェコ生まれのヤクブ・フルシャ音楽監督就任後の初めての指揮という話題だけでなく、彼女の6年ぶりのRBO復帰も事件となった。ロシアとウクライナの紛争で彼女の態度が批判され、今回のキャスティングには抗議デモも起きたが、結果的に蓋を開けてみると、英国の観客と批評家たちは彼女のパフォーマンスに熱狂したのだった。

 

『トスカ』の音楽はなぜスカルピアのモチーフで始まり、カヴァラドッシの「星は光りぬ」の旋律で終わるのか。トスカはなぜ最期に愛するカヴァラドッシの名前ではなく「スカルピアよ、神の御前で」と叫んだのか。いろいろ問いを立ててみると、このオペラにはまだまだ謎がありそうだ。『トスカ』の魅力は尽きない。

2025.11.28

『トスカ』タイムテーブルのご案内

項目 時間
■解説 6分
■第1幕 48分
休憩 17分
■解説+インタビュー 11分
■第2幕 48分
休憩 15分
■解説+インタビュー 11分
■第3幕、カーテンコール 37分
上映時間:3時間13分

2025.11.07

「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2025/26」開幕!夢のバレエ5演目と情熱のオペラ4演目、永遠の名作から斬新な新演出まで豪華ラインナップが勢ぞろいしました!

12月19日(金)より、いよいよ開幕する『英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2025/26』。世界最高峰のバレエとオペラの魅力に満ちた至福の時間を、是非映画館の大スクリーンでご堪能ください!

新シーズンの幕開けを記念し、日本版予告映像とポスタービジュアルが解禁します。日本版予告映像では、壮大な始まりを予感させる音楽とともに、シーズンを彩る各作品の名シーンが次々と登場。「伝統が息付き、今が躍動する―」というフレーズが、歴史ある舞台をスクリーンで楽しめる期待感を高め、幻想的なバレエと情熱的なオペラ、全9作品の魅力が一挙に紹介されています。

併せて公開されたポスタービジュアルには、ロマンティック・バレエの代表作『ジゼル』や、ジャコモ・プッチーニ作曲の『トスカ』など、各作品を象徴する美しいカットが並びます。「クラシックの美しさと、現代の洗練。世界最高峰の舞台を大スクリーンで。」というキャッチコピーが添えられ、華やかで洗練されたビジュアルに仕上がっています。

 

【バレエ演目】

■『リーズの結婚』(原題:LA FILLE MAL GARDÉE)
■『シンデレラ』(原題:CINDERELLA)※再上映
■『くるみ割り人形』(原題:THE NUTCRACKER)
■『ウルフ・ワークス』(原題:WOOLF WORKS)
■『ジゼル』(原題:GISELLE)

新シーズンでバレエ作品のオープニングを飾るのは、ロイヤル・バレエならではのレパートリー作品『リーズの結婚』。田園を舞台にした明るくチャーミングなラブコメディで、愛らしいポニーや被り物をした雄鶏、木靴の踊りも登場する。冬の風物詩『くるみ割り人形』は、チャイコフスキーの不朽のメロディに、クリスマスの夢と魔法が詰まったファンタジックなプロダクションが加わり、家族連れにも大人気の作品。そして、鬼才ウェイン・マクレガーの振り付けで大評判となった『ウルフ・ワークス』が初演以来の登場となる。本作は、作家ヴァージニア・ウルフの代表的な3作品からインスピレーションを受けて創作された。彼女の作品とともに、その人生のさまざまな変転を深く描き、斬新さと美しさが同居する現代バレエの傑作だ。続いては、ロマンティック・バレエの永遠の名作『ジゼル』。ジゼル役は演技力が試される難役として、バレリーナにとっての「ハムレット」とも称されるドラマティックな大役だ。今回は日本が生んだプリマ・バレリーナ、高田茜が挑戦する。そして、昨シーズンでも大好評につき延長上映となるなど、長きにわたり愛されてきた『シンデレラ』のアンコール上映も決定。日本出身の金子扶生がシンデレラ役を演じ、その高い技術と健気な演技が絶賛されている。毎年おなじみの名作から、久しぶりに帰ってきた愛すべき作品、そして最先端のコンテンポラリーまで、バラエティに富んだラインナップをお楽しみいただきたい。

【オペラ演目】

■『トスカ』(原題:TOSCA)※新演出
■『椿姫』(原題:LA TRAVIATA)
■『ジークフリート』(原題:SIEGFRIED)※新演出
■『魔笛』(原題:THE MAGIC FLUTE)

そしてオペラ作品の開幕は、今シーズンよりロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督に就任したチェコの指揮者ヤクブ・フルシャと、当歌劇場オペラ監督のオリバー・ミアーズが演出した新演出の『トスカ』が登場。「歌に生き、恋に生き」「妙なる調和」「星は光りぬ」など美しい音楽と、嘘や嫉妬、陰謀によって悲劇へと突き進む恋人たちの運命をスリリングに描く。現代最高のスーパースター、アンナ・ネトレプコとカナダの名バリトン、ジェラルド・フィンリーや、1994年生まれの若きイタリア系英国人テノール、フレディ・デ・トマーゾなど注目キャストも見どころの一つだ。続いては、名アリアに彩られたヴェルディの傑作を、エルモネラ・ヤオ主演で贅沢に上演する極上のオペラ『椿姫』。美貌のアルバニア人ソプラノ、エルモネラ・ヤオが演じるヒロインが必見である。「乾杯の歌」「花から花へ」「プロヴァンスの海と陸」「過ぎし日よ、さようなら」「パリを離れて」など名旋律が満載で、パリ社交界の高級娼婦ヴィオレッタの愛と自己犠牲には誰もが涙するだろう。ワーグナーの楽劇四部作『ニーベルングの指環』の三作目となる『ジークフリート』は、ニーベルング族のミーメに育てられたジークフリートが、大蛇となった巨人族のファーフナーを倒して世界を支配する力を持つ指環を手に入れ、岩山に眠るブリュンヒルデを目覚めさせる物語。初登場となるアンドレアス・シャーガーと、ピーター・ホーレという二人のベテランテノールの丁々発止の競演が見ものである。今シーズンの終わりを飾るのは、さらわれた美しい姫を救出に向かう王子の冒険ファンタジーが楽しめる『魔笛』。モーツァルトが生涯最後に完成させたオペラを指揮するのは、目覚ましい活躍を見せるフランスの女性指揮者マリー・ジャコ。全ての主要人物にアリアや重唱があり、冒頭の序曲から彼女がどのように音楽を牽引していくのか必見である。人気オペラが勢ぞろいする新シーズンは、演劇の国ならではのドラマティックな演出と、人気と実力を兼ね備えた歌手によるパフォーマンスにぜひご注目いただきたい。

 

【全9演目と公開日】※1週間限定公開※

■ロイヤル・オペラ『トスカ』:2025年12月19日(金)~
■ロイヤル・バレエ『リーズの結婚』:2026年1月16日(金)~
■ロイヤル・バレエ『シンデレラ』:2026年2月13日(金)~
■ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』:2026年2月20日(金)~
■ロイヤル・オペラ『椿姫』:2026年4月3日(金)~
■ロイヤル・バレエ『ウルフ・ワークス』:2026年5月15日(金)~
■ロイヤル・バレエ『ジゼル』:2026年5月29日(金)~
■ロイヤル・オペラ『ジークフリート』:2026年6月26日(金)~
■ロイヤル・オペラ『魔笛』:2026年7月3日(金)~

 

【上映劇場】

■札幌シネマフロンティア(北海道)
■フォーラム仙台(宮城)
■TOHOシネマズ 日本橋(東京)
■イオンシネマ シアタス調布(東京)
■TOHOシネマズ 流山おおたかの森(千葉)
■TOHOシネマズ ららぽーと横浜(神奈川)
■ミッドランドスクエア シネマ(愛知)
■イオンシネマ 京都桂川(京都)
■大阪ステーションシティシネマ(大阪)
■TOHOシネマズ 西宮OS(兵庫)
■kino cinéma天神(福岡)

※ロイヤル・オペラ『トスカ』の上映期間について
札幌シネマフロンティア、ミッドランドスクエア シネマの上映期間は2025年12/19(金)~ 12/23(火)となります。

 

<料金:一般¥3,700円 学生¥2,500円(税込)>
※「ジークフリート」は一般¥5,200円 学生¥3,700円(税込)

2025.09.18

「フールズ・パラダイス」より高田茜さん特別インタビュー

インタビュー

ロイヤル・バレエ&オペラシネマシーズンのラストを飾る『バレエ・トゥ・ブロードウェイ』。振付はすべて、世界中でヒットした『不思議の国のアリス』や、トニー賞を受賞し劇団四季でも上演されたミュージカル『パリのアメリカ人』で知られる、現代最高の振付家クリストファー・ウィールドン。『フールズ・パラダイス』『トゥー・オブ・アス(ふたり)』『Us(僕たち)』『パリのアメリカ人』 の4作で構成され、バレエ団のスターダンサーたちがシーズンのフィナーレを飾る。
1作目の『フールズ・パラダイス』は、ウィールドンが作曲家ジョビー・タルボットとの長きにわたるコラボレーションの第一歩となった作品。ファッションデザイナーのナルシソ・ロドリゲスが手掛けた肌色のミニマルな衣裳に身を包んだ9人のダンサーたちが、刻々と変化していく美しいフォルムを作り上げていく。高田茜とウィリアム・ブレイスウェルをはじめとする3組のペアが生み出すその神々しいまでの動きに観客は目を奪われる。 2015年にプリンシパルとなった高田茜が10年目の心境とともに作品を語った。


(c) Andrej Uspenski

 

―クリストファー・ウィールドンの作品は繊細さとドラマ性が特徴的ですが、踊ってみて特に印象的だったのはどんな点でしょうか?
高田茜:まず音楽が素晴らしく、物語がない分、身体のラインやどういうふうに音楽をフレージングするか、何か物語性があるように踊るというのが難くもあり楽しかったです。

―『フールズ・パラダイス』を表現するうえで、身体的にも精神的にも難しいと感じる部分はありますか?
高田茜:アクロバティックなリフトがあり、最初は落下してしまうこともありました。床にパートナーが寝てこういうふうな(上に持ち上げる動作)感じでリフトするのを練習して、それから徐々にできるようになりました。

―もはや人類を越えて神々を見ているかのようでしたが、心や頭の中はどのような状態だったのでしょうか?
高田茜:裸同然で踊っているような感覚で、正直恥ずかしかったです。薄いオーガンジーを着ていて、途中で脱ぐのがいやでした(笑)。

―共演者との呼吸や関係性が重要になる作品だと思いますが、リハーサルで心がけていることはありますか?
高田茜:コミュニケーションはやはり大事だと思います。やっぱり口で言わないと。ここのタイミングはどうするとか、もう少し下に支えてほしいなとか、ここはプリエあまりしないでほしいとか。それを言わずに感じるだけじゃ多分ちょっと難しいかなと思うので。みんなも本当にオープンに聞いてくれるダンサーばかりなので、チームワークはとても良かったと思います。ラインをどう見せるか、どうすればうまくいくかなど、コーチを交えて会話ができるので。

―ご自身のこれまでのレパートリーと比べて、『フールズ・パラダイス』ならではの魅力はどんな点にあると感じますか?
高田茜:静止する動きと流れるような動きがすごく自然に音楽とともに活かされている作品だと思います。フォーメーションやダンサーが作る動きや形が、動く彫刻を見る、動く絵を見るような作品です。

―バレエ作品としてはモダンな要素を含んでいると思いますが、古典作品と取り組むときとの違いをどのように意識していますか?
高田茜:古典はごまかしがきかず、決められた型をしっかり押さえておかなきゃいけない部分があります。ネオクラシックはごまかしているわけではないんですけど、感情やニュアンスを少し入れやすく、わざと間を取るなどの表現ができるかなと思います。

―休日の過ごし方について教えてください。
高田茜:この間ノルウェーでの結婚式に行ったり、友達に赤ちゃんが生まれたのでパリまで会いに行ったりしていました。ロンドンでは好きな音楽を聴いたり、好きな番組を見たり、友達とお茶したりと普通の生活です。あとはもう本当にゴロゴロしていますね。本当にダメ人間な生活をしています(笑)。

―Mrs. GREEN APPLEがお好きと聞きました
高田茜:はい、大好きです。イギリスのバーミンガムのダンサーから聞いて好きになりました。

―2017年にもインタビューさせていただきましたが、その時からの気持ちの変化はありますか?
高田茜:当時はたぶん本当に必死でした。「自分がプリンシパルでいいんだろうか」と葛藤し、誰もプレッシャーをかけていないのに自分で苦しんでいました。もう失敗できないとか、ここまでの踊りを毎回見せなきゃいけないんだって思って。すごく苦しい日々だったと思い返すこともあります。 今は自分を受け入れ、楽しむことができるようになりました。心の余裕がないとやっぱり自分の気持ちにも気づけないし、舞台上で本当に楽しめないですから。プリンシパルになって10年目になるんですけど、ベストを見せたい気持ちは変わりませんが、向かい方が変わりました。自分も楽しまないとといけないと思えるようになりましたね。

ー最後に、『バレエ・トゥ・ブロードウェイ』、そして『フールズ・パラダイス』をご覧になるお客様に向けてメッセージをお願いします。
高田茜:このミックスビルはウィールドンのエンターテインメント性と詩的な内面性が両方見える作品です。ぜひ多くの方に楽しんでいただきたいです。

2025.09.17

「トゥー・オブ・アス(ふたり)」よりカルヴィン・リチャードソンさん特別インタビュー

インタビュー

ロイヤル・バレエ&オペラシネマシーズンのラストを飾る「バレエ・トゥ・ブロードウェイ」での中の『トゥー・オブ・アス(ふたり)』でローレン・カスバートソンと踊る若手プリンシパルのカルヴィン・リチャードソン。ジョニ・ミッチェルの名曲と共にロマンティックに、軽やかでどこか切なさも込めて踊る彼の姿に魅了される人は多いはず。
昨年プリンシパルに昇格。『ロミオとジュリエット』のロミオ、『マノン』のデ・グリュー、『シンデレラ』の王子と義理の姉妹、『アリス』のジャックとマッドハッター、さらにクリスタル・パイト振付作品など、王子様からコミカルな役まで幅広くこなすカルヴィンにお話を伺いました。


(c) Andrej Uspenski

 

僕が踊るうえで一番大事にしているのは、パートナーが僕と安心して踊れること。

―日本のファンは、カルヴィンさんが昨年プリンシパルに昇進されてとても喜んでいます。プリンシパル一年目はいかがでしたか?
まるでジェットコースターのようで、様々な感情が嵐のように襲ってきました。このような役割を与えられるのはとてもエキサイティングなことです。ダンスの観点からの僕の世界を開いてくれました。今までと違ってシーズンの間中主役ばかり踊ることになったのですから、僕のダンサー人生の中で多くの変化があり大きな飛躍でした。先シーズンはこの役割、この仕事が何なのかを理解することに注意を払っていました。すべてが違ってきたので、まるで一からやり直しているような感じです。新しい目でこの仕事を見て、今までの道のりや、自分自身の芸術性をもう一度見直してみたのです。このプロセスを通して僕は多くのことを学ぶことができました。ロイヤル・バレエの素晴らしいアーティストたちと仕事をすることができてとても幸運だと感じています。僕が踊るうえで一番大事にしているのは、パートナーが安心して踊ることができるようにすること、コーチや観客も舞台を動かし物語を語っている僕を見て安心してくださることです。僕たちには素晴らしい観客の皆さんが付いていてくれて、何回も劇場に通い、カンパニーのダンサーが成長して行くのを見守ってくださっていて、それはロイヤル・バレエが特別な存在である理由の一つです。この役割を引き受けることでワクワクしました。もちろん、怖いと感じてもいました。突然、人々が僕を見る眼が変わってしまったし注目も浴びることになりました。大きな挑戦でもあるし怖さもある。でもやっぱり僕は幸運に恵まれたのだと思います。

 

ウィールドンの、記憶の中にズームインして、ズームアウトしていくような創造性が大好き

―『トゥー・オブ・アス(ふたり)』にキャスティングされてどう感じましたか?
この作品の映像を見せてもらい、ゼナイダ・ヤノウスキーと、この作品を過去に踊ったロビー・フェアチャイルドが指導してくれました。このチームは仕事をするうえで素晴らしい人々であり、またインスピレーションも与えてくださったのです。映像を観たときの第一印象は、僕の役を踊っていたのがデヴィッド・ホールバーグだったことです。僕はあのデヴィッドの代わりに踊らないといけないということで大変な試練でした。でもこの作品はとても美しいですし、ジョニ・ミッチェルの素晴らしい音楽を聴くことで安心感がありました。彼女の音楽を聴いて、僕はこの音楽を踊ることができるのは幸せだと感じたのです。クリストファー・ウィールドンの振り付けた作品をローレン(カスバートソン)とのデュエットで踊るということだけでもエキサイティングなのに、それがジョニ・ミッチェルの音楽を使った作品だということで、さらにワクワクしたのです。彼女の音楽は、僕の心に訴えかけてくれます。

―映画のインタビューで、あなたとローレンはこの作品の意味を探し求めていると語っていらっしゃいましたね。この作品の上演が終わった今、答えは見つかりましたか?
答えは見つかりませんでしたが、逆に質問が増えました!でもそこがこの作品の素敵なところです。言葉にならないことをこの作品はダンスで語っているのだと思います。僕たちはそれぞれ異なった解釈をしていたところがあって、そこもこの作品の美しさ、生の舞台を観ることの美しさだと思うのです。クリス・ウィールドンの、記憶の中にズームインして、ズームアウトしていくような創造性が本当に好きだと感じました。一つの動きのシークエンスを行って、それを逆回しにするような感じです。まるでテープをリワインドしているような。僕は何かを見ていて、それを別のものに反映させているようなイメージを受けました。ジョニ・ミッチェルの音楽の最後の曲、素晴らしい歌にその印象を受けるのです。それが答えかもしれません。

―あなたとローレンは共に人生の一つの時を見ていたと映画のインタビューでお話されていましたね。それはどんな季節でしたか?
僕はローレンとはまた違ったものを見つけています。ローレンが踊ったパートの曲は四季の順番通りになっていて、彼女のソロでは、歌詞にあるように夏の日や花々について踊っています。僕のところは紅葉や冬についてなので、それぞれのイメージは違いますね。いずれにしても、とても美しい季節だと感じています。

―出演したパフォーマンスが中継されたり、映画館用に収録されたりしたときには、いつもと違った気持ちになりますか?
やはり違いますね。毎回収録されるとき、公演前には「いつもの舞台と同じように演じるよ、緊張しちゃダメ」と思うのですが、楽屋にあるテレビモニターを見ると、インタビューされている人たちの姿を見つけてしまい、気分が変わります。エネルギーが加わるのですね。もちろんプレッシャーがあるのですが、でもエキサイティングなことでもあります。他のダンサーたちもそうだと思いますが、世界中の映画館にいる人々がこれを観るのだと意識すると、さらに興奮が高まるのです。楽しいですよ。
この『トゥー・オブ・アス(ふたり)』の中継された公演では、もちろんダンス作品の中の二人なのですが、二人の人間同士だと感じながら踊りました。このキャラクターを演じているということではなくて自分自身でいられたような気持ちです。だから映画館の中継のためにこの作品を踊ったのはとても面白い経験でした。

―舞台上にオーケストラがいて、ジュリア・フォーダムも歌っていましたからね。
それもまた素晴らしい体験でした。いつもと完全に違った空気だったのです。幕が下りていて、オーケストラやジュリアや指揮者のクン(・ケッセルズ)を見るちょっとした瞬間もとても素敵なもので、特別な何かを加えてくれたのです。僕たちは一緒に舞台を分かち合っているという感覚が特別に感じられました。

 

クラシック・バレエの素晴らしさは、現代の視点から自分と関連付けられる部分を見つけられること

―近年、そしてプリンシパルになってあなたは様々な役を演じてこられました。ロミオや『マノン』のデ・グリュー、『オネーギン』のレンスキー、『夏の夜の夢』のオベロン、そしてもちろん『不思議の国のアリス』のマッドハッターも踊られました。あなた自身に近い役というのはありますか?
やはりロミオ役は、他のダンサーもそう感じていると思うのですが、個人的に特別な役だと感じました。全幕作品の主役として初めて踊った役なのです。僕は初めてのロミオ役をマヤラ・マグリと踊ったのですが、学生の時にローザンヌ国際バレエコンクールの映像で彼女を見ていたことを思いだして、一つの輪が完結したような感慨を得ました。あの素晴らしいマヤラと、ロイヤル・オペラハウスの舞台で『ロミオとジュリエット』を踊ることになるなんて、あの時の僕に言って聞かせたいです。
あと、クラシック・バレエの作品ではないのですが、クリスタル・パイト振付の『The Statement』を踊ったのも特別な経験でした。この作品を踊るのが夢で、夢が現実になったのです。この作品の振付を通して、僕の踊りのボキャブラリーを見せることができるし、とてもクールなキャラクターを演じることができました。僕たちを指導してくれたスペンサー・ディックハウスがこの作品を演じているところも観たので、この作品を踊ることができたのが本当に嬉しかったのです。
これらの役が僕個人と似ているかどうかはわかりません。でも、自分と関連付けられる部分はあります。クラシック・バレエの素晴らしいところは、現代とは違う時代に作られているけれども、現代の視点から自分と関連付けられる部分を見つけられることです。今日の観点から新しい意味を見つけ、物語を語り直すことによって、バレエは現代においても息づいているのです。

―今年の2月には『オネーギン』の詩人レンスキー役でカルヴィンさんの演技を観ることができました。いろんなダンサーがこの役を演じるのを観ましたが、カルヴィンさんの悲劇的で美しくひたむきなパフォーマンスがとても心に残りました。
レンスキー役も、いつか演じたいと長年思っていた夢の役でした。プリンシパルに昇格してこの役を演じることができて嬉しかったです。本当はもう少し経験を積んでから演じるべき役だったかもしれませんが、今の時点の僕の人生経験の中で演じられたのは幸運でした。この役も演じるにあたってプレッシャーがかかる役です。上手く踊ることはもちろんですが、誠実に演じることが大切な役です。レンスキーの物語を踊りと演技を通して語る、この素晴らしい役にふさわしい演技をしたいと思っていたから、多くのお客様が僕の演技が琴線に触れたと言ってくれたことは感動的でした。

 

今シーズンは、高田茜、佐々木万璃子の二人の素晴らしい日本人バレリーナと共演します

―カルヴィンさんは、新しいシーズンに初めて演じる大きな役も決まっていますね。例えば『リーズの結婚』のコーラスや、『ジゼル』のアルブレヒトを踊ることになっています。ほかにも踊りたいと思っている役はありますか?
もちろんアルブレヒトは踊りたいと夢見てきた役です。『リーズの結婚』のコーラスも、ロイヤル・バレエでずっと愛されてきた作品で、とても心温まる美しい作品ですし、パントマイムが難しいバレエでもあります。もちろん今まで踊ったロミオや『マノン』のデ・グリューも夢見てきた役です。僕にとってはドラマチックな役がそうなので、これから踊りたいのは『マイヤリング』のルドルフ役ですね。でも、『シンデレラ』で王子を演じたのですが、同時に(女装する)義理の姉妹役も演じていて、それはとっても楽しかったのです。ロイヤル・オペラハウスの舞台で主役を踊る時のものすごいプレッシャーから解放される楽しさもあります。義理の姉妹や、『ドン・キホーテ』のガマーシュのような役を演じる機会があるのはとてもいいですね。『眠れる森の美女』のカラボスも演じたいです。このカンパニーの歴史の中で、偉大なダンサーたちがこれらの役を演じてきましたし、僕も自分の境界線を破るような役を体験したいと思っています。このような役を演じるのはエキサイティングですね。

―今シーズン、「ジゼル」では佐々木万璃子さん、「リーズの結婚」では高田茜さんと共演される予定ですね。
そう、二人の素晴らしい日本人バレリーナと共演する予定です。茜さんとは今までも踊ってきましたが素晴らしい経験だったし、万璃子さんとはまだ踊ったことがないので、とても楽しみにしています。茜さんは皆さんもご存じの通り、スーパースターですし、一緒に踊って楽しかったです。彼女とは、オーストラリアのクイーンズランド・バレエ団へのゲスト出演で『ロミオとジュリエット』を踊り、またコロナ禍明けにガラ公演で『マノン』の寝室の場面を一緒に踊り、最近また韓国でのガラ公演でも踊りました。『ロミオとジュリエット』は特に、僕の故国であるオーストラリアで初めて全幕作品で主演したので、そこで茜さんと踊ることができたことも特別な経験になりました。僕の家族や友達も大勢観に来てくれたのです。みんな集まって大騒ぎになりました!

 

日本のアニメの大ファンです!『千と千尋の神隠し』から『ダンダダン』『怪獣8号』『鬼滅の刃』まで。

―休みの日はどのように過ごしていますか?
活動ということではないのですが、実は僕は日本のアニメのファンなのです。アニメを見て育ちました。最初の体験は『千と千尋の神隠し』です。その時僕は夜中に台所で観ていて、とても怖いと感じましたが同時に大好きになりました。それ以来日本のアニメに夢中になったのです。オーストラリアで育ったのですが、地理的に日本から遠くないということもあり、学校で日本語を習いましたし、交換留学生がいたので日本の文化に親しみがありました。母も学生時代に交換留学で日本に行ったのです。だから日本にはいつもつながりを感じていました。リラックスする時にはアニメを今も観ています。この仕事は緊張することが多く、息抜きすることもとても大事なので、美術や陶芸も学んでみています。ロンドンのいいところは、いろんな催しが行われていることで、ナショナル・ポートレート・ギャラリーでジェニー・サヴィルの素晴らしい展覧会に行きましたし、キューガーデンズのような場所もあります。それからロンドンの中心部から出て森の中に行ってリラックスします。でも新しい活動は常にやってみたいと思っています!それは美術の教室かもしれませんし、ダーツやビリヤードかもしれません。

―好きなアニメ作品の名前を教えてください。
沢山あって挙げきれないくらいです。『ダンダダン』が今一番気に入っていますね。それから最近では『怪獣8号』。『鬼滅の刃』も好きで、映画を観に行くつもりです。

 

日本の皆様からの応援は、アーティストである僕たちにとっては大きな意味があります!

―あなたの踊りを映画館で、そして舞台で観ることを楽しみにしている日本のファンにぜひメッセージをお願いします。
僕たちを見に来てくれる日本のファンの皆様に心を込めてお礼を言いたいです。僕個人もですがロイヤル・バレエのメンバーは日本の観客の皆様とは特別な絆で結ばれていて、何回も踊る機会に恵まれています。観客の皆様から受け取る反響は本当に素晴らしくて、この何年もの間に何回も来てくれて顔なじみになるお客様もいます。公演が終わって楽屋口から出ると、多くのファンがプレゼントを持って、挨拶しに待ってくれていて嬉しいですし、観客の皆様と美しい関係を構築できていると思います。映画館で上映されるパフォーマンスを楽しんでもらえたらいいと思うと共に、また皆さんのために踊ることを楽しみにしています。皆様からの応援は、アーティストである僕たちにとってはとても大きな意味があるのです。