ロイヤル・バレエ

うたかたの恋 -マイヤリング-

Mayerling

  • 【振付】ケネス・マクミラン
  • 【音楽】フランツ・リスト
  • 【美術】ニコラス・ジョージアディス
  • 【指揮】クン・ケセルズ
  • 【出演】ルドルフ皇太子(オーストリア・ハンガリー帝国皇太子):平野亮一
    マリー・ヴェッツェラ(ルドルフの愛人) ナタリア・オシポワ
    ラリッシュ伯爵夫人(エリザべート皇妃の侍女でルドルフの元愛人):ラウラ・モレ―ラ
    皇妃エリザベート(ルドルフの母):イツィアール・メンディザバル
    ステファニー王女(ルドルフの妻) フランチェスカ・ヘイワード
    ミッツィー・カスパー(高級娼婦でルドルフの愛人):マリアネラ・ヌニェス
    ブラットフィッシュ(ルドルフのお気に入りの御者):アクリ瑠嘉
    フランツ・ヨーゼフ皇帝(ルドルフの父):クリストファー・サウンダース
    ベイ・ミドルトン(エリザベート皇妃の愛人):ギャリー・エイヴィス
    ハンガリー将校:リース・クラーク、カルヴィン・リチャードソン、ニコル・エドモンズ、レオ・ディクソン
  • 【上映時間】3時間23分

平野亮一が堂々シーズン・オープニングアクトの主演を飾り絶賛された ドラマティック・バレエの傑作がスクリーンに登場!

●19世紀末のマイヤリング事件から、今に至る「うたかたの恋」
1889年、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフが、17歳の愛人マリー・ヴェッツェラと心中したマイヤリング事件。ハプスブルグ家を揺るがし、1918年に帝国が崩壊する予兆となった。この事件は『うたかたの恋』という題名で2度映画化され、またオードリー・ヘップバーン主演でテレビ映画化もされている。宝塚歌劇団では2023年新春にミュージカル『うたかたの恋』として花組が上演予定であり、また現在、ルドルフ皇太子の母エリザベート皇妃を主人公にし、ルドルフも登場する東宝ミュージカル『エリザベート』がロングランで上演中、連日ソールドアウトで大人気を博している。

●巨匠ケネス・マクミランの最高傑作
英国バレエを代表する巨匠ケネス・マクミランは、1978年にこの実話をバレエ化した。両親に愛されず、政略結婚を強いられ、宮廷内の策略など政治的にも翻弄されてきた皇太子ルドルフは次から次へと愛人を作り、苦悩し病んでいく。人間の暗部を描くのに長けたマクミランの手腕が発揮され、19世紀末の宮廷の人間模様が、ドラマティックに官能的に、陰影に富んで描かれる。本作は、『ロミオとジュリエット』、『マノン』と並んで彼の最高傑作のひとつであり、英国ロイヤル・バレエならではの演劇性がたっぷり味わえる重厚な人間ドラマだ。今年はマクミラン没後30周年ということもあり、英国ロイヤル・バレエだけでなく、パリ・オペラ座バレエ(カンパニー初演)、ハンガリー国立バレエでもちょうど本作が上演中である。マクミランの死後30周年の命日である本年10月29日にも、英国ロイヤル・バレエで本作は上演された。

●絶賛を浴びた平野亮一、一世一代の名演
今回のシネマ中継は、シーズン開幕初日10月5日の公演が生中継されることで大きな話題を呼んだ。ルドルフ皇太子を演じるのは、日本出身の平野亮一。バレエ作品には珍しく男性が主人公である本作で6人もの女性ダンサーと超絶技巧のパ・ド・ドゥを繰り広げる。母の愛を求め、自殺願望に取りつかれて激しく苦悩するなど高い演技力を要求されるルドルフ役。いつかは演じてみたいと男性バレエダンサーたちが熱望するこの役のシーズン初日に抜擢され、世界中の映画館に中継されるのは、平野の高い演技力とパートナーリング技術の確かさが信頼を勝ち取っている証拠。愛に飢え、愛欲に溺れて破滅する皇太子を鮮烈に演じた彼の演技は、「インテリジェンス溢れるアプローチ」「心境の変化を細かく見せることで、同情を抱かせてくれた」と主要紙すべてで4つ星を獲得、辛口で有名な英国の批評家たちから大絶賛を浴びた。

●ロイヤル・バレエを代表する綺羅星のようなスター揃い
ルドルフ皇太子を取り巻く登場人物たちも、ロイヤル・バレエを代表する綺羅星のようなスター揃い。死によってのみ成就する永遠の愛に憧れ、ルドルフを挑発する少女マリー・ヴェッツェラには、ボリショイ・バレエ出身のナタリア・オシポワが扮した。ファム・ファタルぶりを発揮し、死に魅せられてルドルフと絡みつき、すべてを焼き尽くすような鮮烈なデュエットを見せる。元愛人ラリッシュ伯爵夫人には演技派ラウラ・モレーラ、高級娼婦ミッツィー・カスパー役は、ロイヤル・バレエのみならず世界を代表するプリマ・バレリーナのマリアネラ・ヌニェスが魅惑的に演じた。ルドルフと結婚した新婚初夜のベッドで脅されるステファニー王女には、映画『キャッツ』に主演して話題を呼んだフランチェスカ・ヘイワード。またルドルフが唯一心を許す御者のブラットフィッシュには、日本出身で上昇気流に乗るアクリ瑠嘉が扮し、軽妙で鮮やかな踊りと心温まる人間性を見せてくれる。ハンガリー独立運動に加担することをそそのかす4人の高官には、プリンシパルに昇進したばかりの容姿端麗なリース・クラーク、そしてカルヴィン・リチャードソン、レオ・ディクソン、ニコル・エドモンズと若手ホープの男性ダンサーたちが起用された。

●音楽、美術、そして、衣裳の魅力
音楽はハンガリーと切っても切り離せないフランツ・リストを使用し、「メフィスト・ワルツ」、それぞれのパ・ド・ドゥには「超絶技巧練習曲」から選曲して使用。皇帝フランツ・ヨーゼフの誕生日の宴では、彼の愛人であるカタリーナ・シュラットが歌手によって演じられ独唱し(「Ich scheide(我は別れゆく)」)、帝国の黄昏を象徴させている。美術デザインは、『ロミオとジュリエット』などマクミラン作品の数々を手掛けたニコラス・ジョージアディスで、オーストリア=ハンガリー帝国の宮廷を再現する重厚で華麗な舞台装置や衣裳にも惹きつけられる。
英国ロイヤル・バレエならではの演劇性の高い濃厚な舞台で、大役に挑んだ平野亮一の一世一代の名演技と名花たちとの共演が観られる本作、ぜひ映画館の大スクリーンで味わってほしい。

【STORY】
オーストリア=ハンガリー帝国皇太子ルドルフと、ベルギーのステファニー王女との結婚を祝う舞踏会が華々しく開かれるが、ルドルフは新妻ではなく、その妹ルイーズに魅かれたそぶりを見せる。宴の後、ルドルフは元愛人のラリッシュ伯爵夫人に、ヴェッツェラ男爵夫人とその娘、マリーを紹介される。そこへ割り込んできたルドルフの友人の高官たちが、滔々とハンガリーの分離独立運動について囁く。ルドルフは政略結婚した妻ステファニーを愛しておらず、母、皇后エリザベートに同情を引いてもらおうとするが拒絶される。初夜のベッドでルドルフは新妻を拳銃と骸骨で脅す。
妻を伴って居酒屋に気晴らしに出かけたルドルフは、なじみの高級娼婦ミッツィー・カスパーに心中を持ちかけるが拒絶される。父、皇帝フランツ・ヨーゼフの誕生日の宴で、エリザベートと愛人ベイ・ミドルトンの様子を苦々しく思い、マリーと初めて二人きりで過ごす。狩猟場での誤射事件で人を死なせてしまい、あやうく母にも弾丸を当てそうになったルドルフは、マリーに心中を持ちかけたところ、マリーは愛と死の甘い幻想に魅せられ同意する。マイヤリングの狩猟小屋で最後に激しく愛を交わした二人は、破滅へと突き進んでいく。