ロイヤル・オペラ

イル・トロヴァトーレ

Il trovatore

ロイヤル・オペラ

イル・トロヴァトーレ

Il trovatore

史上最大のスケールでお贈りしたシーズンもいよいよフィナーレへ!
ラストを飾るのは、ヴェルディ中期の三大傑作のひとつ『イル・トロヴァトーレ』
猟奇的なストーリーを奇怪な魔物たちが彩る異色の演出

ヴェルディ中期の三大傑作といわれる《リゴレット》《イル・トロヴァトーレ》《椿姫》の中で、もっとも幻想的なストーリーを持つのが中世のスペインを舞台にした《イル・トロヴァトーレ》である。夢見るような美しい旋律にあふれた傑作オペラだ。

今回はウェールズ出身の新進気鋭の演出家アデル・トーマスが手がけた新制作(チューリッヒ歌劇場との共同制作)。グレーに塗られたシンプルな舞台に、中世ヨーロッパを感じさせる衣裳を組み合わせている。本来シリアスな内容のオペラなのだが、ある種の奇妙さと滑稽さが加味されているのが演出の特徴で、ルーナ伯爵の家来フェルランドが狂言回しのような役割を担い、彼に従う魔物たちが舞台の下から揚戸をあけて顔を出し登場人物をあざわらったり、よつんばいになって舞台を駆け回ったりする。主人公たちも、本来のロマンチックな演技に、現代的な動きやコミカルな味を所々に加えている。

演出がこのようなユニークなアプローチで賛否両論となったのに対し、音楽面の充実は高く評価された。パッパーノは推進力のある指揮で全体を牽引。ルーナ伯爵を歌ったテジエは圧倒的な存在感と品のある歌唱で貫禄を示す。レオノーラのウィリス=ソレンセンは豊かな声と情熱的な歌唱が魅力的。マッシのマンリーコはフレージングのたくみさと高音の輝きが素晴らしく、アズチェーナのバートンは歌と演技の激しさで強い印象を残した。フェルランドのタリアヴィーニは不気味なメークで舞台に出ずっぱり。今回の演出の要となる役柄を見事に演じている。

PHOTO&MOVIE

STORY

【STORY】
15世紀初頭のスペイン。ルーナ伯爵の家臣フェルランドは兵士たちに、同家に起こった恐ろしい事件を物語っている。昔、ルーナ伯爵の弟が生まれた時に、ロマの女が赤子に呪いをかけているのを見つけた先代の伯爵は、この女を火刑に処した。ロマの女の娘アズチェーナは母親の復讐のため赤子を城から誘拐する。それから月日が経ち、ルーナ伯爵はアラゴン公爵夫人付きの女官レオノーラを愛している。だがレオノーラは吟遊詩人(=トロヴァトーレ)のマンリーコと相思相愛だった。マンリーコの母親アズチェーナは実はあの時のロマの娘であり、城から誘拐してきた赤ん坊を殺そうとした時に、誤って自分の子供を火中に投じてしまったという恐ろしい告白をする。

《イル・トロヴァトーレ》全4幕  
【音楽】 ジュゼッペ・ヴェルディ
【台本】 サルヴァトーレ・カンマラーノ(台本補筆:レオーネ・エマヌエーレ・バルダーレ)
【原作】 アントニオ・ガルシア・グティエレスの戯曲『エル・トロバドール』)
【指揮】 アントニオ・パッパーノ
【演出】 アデル・トーマス
【美術・衣裳】 アンマリー・ウッズ
【照明】 フランク・エヴィン
【振付】 エマ・ウッズ
【ファイト・ディレクター(殺陣師)】 ジョナサン・ホービー
【ドラマツルク】 ベアーテ・ブライデンバッハ
  ロイヤル・オペラ合唱団(合唱指揮:ウィリアム・スポールディング)
ロイヤル・オペラハウス管弦楽団(コンサートマスター:シャロン・ロフマン)
【キャスト】 レオノーラ:レイチェル・ウィリス=ソレンセン
マンリーコ:リッカルド・マッシ
ルーナ伯爵:リュドヴィク・テジエ
アズチェーナ:ジェイミー・バートン
フェルランド:ロベルト・タリアヴィーニ
イネス:ガブリエーレ・クプシーテ
ルイス:マイケル・ギブソン
ロマの老人:ジョン・モリッシー
使者:アンドリュー・オコナー
【上映時間】 3時間13分