2018.04.06

2018.04.02

オペラ『トスカ』を初心者でもわかりやすく解説します

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甘美な音楽を背景に、嫉妬や恐喝、拷問、殺人が展開!の『トスカ』
            石川了(クラシック音楽専門TVチャンネル「クラシカ・ジャパン」編成

「#MeToo」問題と絡み合う『トスカ』
 「#MeToo」を合言葉に性暴力やセクハラを告発する動きは、ハリウッドのみならず、クラシック音楽界でも著名な指揮者が告発されるなど、世界的に大きな波紋を広げています。いつの時代でも被害が生まれる土壌になっているのは、男性中心の上下関係が強い社会。オペラにおいても男性権力者の職権乱用がさまざまな形で題材になっていますが、その中でも強烈な悪役とヒロインで印象的なのが『トスカ』ではないでしょうか。

 今回の上映の中で、ナビゲーターのクレメンシー・バートン=ヒルは、「このオペラは暴力や圧政を描いたタイムリーな作品だが、中心にあるのは男性による権力の乱用で、嫌がる者に服従を強要している」と指摘しています。『トスカ』をパワハラやセクハラの観点で語られるのも、今のご時世らしいと言えるかもしれません。

恋人を助けるために…
 プッチーニの人気オペラ『トスカ』は、1900年1月14日にローマのコスタンツィ劇場で初演されました。原作は、名女優サラ・ベルナール主演の伝説の舞台で知られるヴィクトリアン・サルドゥの同名戯曲。台本は『ラ・ボエーム』『蝶々夫人』と同じルイージ・イッリカとジュゼッペ・ジャコーザのコンビ。初演は評論家に散々だったようですが、観客には圧倒的に支持され、同年7月にはロンドンのロイヤル・オペラハウスでも上演されています。以来、今では世界のどこかで上演されているレパートリーとして、最も知名度の高いオペラの一つとなりました。

 物語の舞台は1800年6月のローマ。ナポレオン統治のローマ共和国は崩壊し、ローマを支配する警視総監スカルピアは共和主義者を弾圧します。彼は、脱獄した政治犯アンジェロッティを逮捕するため、歌姫トスカを利用して、彼女の恋人で共和主義者の画家カヴァラドッシを吊るし上げます。恋人への呵責なき拷問に心が張り裂けるトスカ。画家を無罪放免にする代償にと彼女に迫るスカルピア。遂に意を決したトスカが最後にとった行動とは・・・。

フィギュアスケートや映画でもお馴染みの有名アリアが満載
 カヴァラドッシがトスカへの愛を歌い上げる「妙なる調和」、トスカに罠をかけたスカルピアが教会で荘厳に歌う「テ・デウム」、トスカが絶望の中で何故このような過酷な運命を与えるのかと神に訴える「歌に生き、恋に生き」、処刑前のカヴァラドッシがトスカを想い泣きながら歌う「星は光りぬ」など、フィギュアスケートや映画(例えば『007:慰めの報酬』など)でもお馴染みの有名アリアが満載。そんな甘美な音楽を背景に、嫉妬や恐喝、拷問、殺人が展開するのですから、国や時代を越えて「オペラはよくわからない」という方でも絶対に楽しめるのが『トスカ』なのです。特に第2幕、スカルピアのパワハラとセクハラに抵抗するトスカとの二人芝居は、オペラ史上最も迫力のシーンとして必見!

「権力の重要事項は地下で決まる」
 この公演は、2006年に初演されたジョナサン・ケント演出の人気プロダクションで、今回が9度目の再演。指揮は東京フィルハーモニー交響楽団桂冠指揮者としてお馴染みのダン・エッティンガー。

 演出のケントは、南アフリカで父も兄も建築家という環境で生まれ育ち、キャリアのスタートは画家という変わり種。日本ではレイフ・ファインズが主演したシェイクスピア『リチャード2世』『コリオレイナス』(アルメイダ劇場来日公演)や野村萬斎主演の『ハムレット』の演出家として記憶にある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 彼の「権力の重要事項は地下で決まる」という解釈により、第1幕の舞台はサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会の地下というのがユニーク。ステージ後方には1階も見えており、「テ・デウム」では1階の聖歌隊と地下のスカルピアという構図が効果的。第3幕のサンタンジェロ城では、大天使ミカエルの巨大な翼が、看守の交代からカヴァラドッシの処刑、トスカの最期までをドラマティックに見守ります。舞台美術は、昨年11月に57歳の若さで死去したポール・ブラウン。

マリア・カラスの『トスカ』 から
 『トスカ』といえば真っ先に思い浮かぶのが、20世紀最高のディーヴァ、マリア・カラスでしょう。彼女は決して美声ではありませんでしたが、その圧倒的な演技力と表現力によって、新たなトスカ像を作り上げました。まさに「歌う女優」カラスによって、トスカを歌うソプラノに求められるものが変わったのです。

 それぞれ強靭な声と演技力が必要とされる3人の主役たち。今回トスカを歌うアドリアンヌ・ピエチョンカは、ウィーン国立歌劇場でキャリアを積み、現在はR・シュトラウスやワーグナーを得意とするカナダ人ソプラノです。カヴァラドッシには今や飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍をみせる1978年マルタ島生まれの人気テノール、ジョセフ・カレヤ。普段あまり悪役を演じないカナダの知性派バリトン、ジェラルド・フィンリーの鬼気迫るスカルピアは圧巻です。

 因みに、このオペラは架空の物語ですが、スカルピア男爵は実在の人物。オペラでは極悪非道に描かれていますが、実際はパワハラもセクハラも無縁の、とても良い政治を行ったと言われています。

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2018.03.23

2018.02.27

オペラ『リゴレット』を初心者でもわかりやすく解説します

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ヴェルディが音楽で描いた人間ドラマ『リゴレット』
            石川了(クラシック音楽専門TVチャンネル「クラシカ・ジャパン」編成

ヴェルディがなぜ偉大なのか
 世界的なヴェルディ・バリトン、レオ・ヌッチは「ヴェルディは人間を描いたから」と語っています。
 ヴェルディは、歌手たちが超絶技巧を競う、これまでの歌合戦的なイタリア・オペラを、音楽で描く「人間ドラマ」に変えました。その完成形としての最初の作品が『リゴレット』。最初から最後まで名曲揃い。口ずさめるような親しみやすい音楽と、心が掻きむしられるドラマ展開。長さも2時間とお手頃で、これからオペラを観てみたいと思う方がいらっしゃったら、最初の一本として『リゴレット』は最適です。

 『椿姫』『イル・トロヴァトーレ』と並ぶヴェルディの中期三大傑作の一つ『リゴレット』は、1851年3月ヴェネツィア・フェニーチェ歌劇場で初演されました。原作は実在のフランス王フランソワ一世の放蕩を告発した文豪ヴィクトール・ユーゴーの戯曲『王は愉しむ』。
 1842年初演の『ナブッコ』の成功以来、人気作曲家の地位を確立したヴェルディは、故郷ブッセートで、数々の男性とのスキャンダルで知られたソプラノ歌手ジュゼッピーナ・ストレッポーニと同棲を始めます。二人に対する村人たちの態度は冷たく、ヴェルディたちは次第に孤立を深めていく中で作曲されたのが『リゴレット』でした。

オペラ史上最も美しい四重唱ほかヒット曲満載!
 美男で女たらしのマントヴァ公爵に仕える道化師リゴレットは一人娘のジルダを溺愛しています。公爵は教会で見かけたジルダを見初め、ジルダも公爵に心惹かれます。しかし、彼女はリゴレットを恨む公爵の廷臣たちに誘拐され、リゴレットは復讐を誓い公爵の暗殺を画策。公爵への想いを断ち切ることができないジルダは、公爵の身代わりとなって殺されてしまいます。
 公爵が浮気者の本性を歌う「あれかこれか」、ジルダが公爵を想う「慕わしい人の名は」、誘拐された娘を返せとリゴレットが迫る「悪魔め、鬼め」、公爵のプレイボーイぶりがわかる有名な「女心の歌」、殺し屋の妹マッダレーナと彼女に言い寄る公爵、それを盗み見するリゴレットとジルダによるオペラ史上最も美しい四重唱「美しい愛らしい娘よ」など、誰もが一度は耳にしたことがある名曲が満載。
 これまで道化師といえばキャラクター的な脇役が定番でしたが、ヴェルディは社会の底辺で生きる人間をオペラの主人公に据えたのです。人の笑い者であっても、人間として誇り高く愛情にあふれ、繊細さと残忍さを持ち合わせたリゴレット。作曲当時のヴェルディとストレッポーニの心情が、このオペラの悲しみや怒り、絶望の音楽に込められているのかもしれません。

ゴキブリ・リゴレット
 この映像は、2001年のヴェルディ没後100年に因んで英国ロイヤル・オペラで新制作された人気演出家デイヴィッド・マクヴィカーによるプロダクション。リゴレットの衣裳の印象から「ゴキブリ・リゴレット」と言われ、今回で7度目の再演となる人気演目です。
 マクヴィカー演出は、オペラを演劇として捉え、現代の若い観客にもアピールするテンポの良さが魅力。基本のストーリーを尊重しながら、暗いトーンの照明効果と、暴力やセックスといったハードな表現も特徴。第1幕の乱痴気騒ぎは物議を醸した見どころの一つです。
 リゴレットを演じるギリシャ人バリトンのディミトリ・プラタニアスは、その堂々とした体格と豊かな声量、見事な演技力で存在感を見せつけます。ジルダには古楽も得意とする英国人ソプラノ、ルーシー・クロウが扮し、その清楚で繊細な歌声に注目。マントヴァ公爵には前回の『ラ・ボエーム』にも主演し、今最も絶好調といえる若手人気テノール、マイケル・ファビアーノ。
 指揮者アレクサンダー・ジョエルによる幕間の『リゴレット』音楽解説もお見逃しなく。

ディーマに捧ぐ
 本公演は、2017年11月22日に脳腫瘍のため、55歳という若さで亡くなったロシアの世界的バリトン、ディミトリー・ホロストフスキーに捧げられています。クラシカ・ジャパンは彼に日本とヴェローナで2度インタビューしており、ちょっと怖そうな顔立ちに反して、思い切り人懐っこい笑顔(アーノルド・シュヴァルツネッガーが満面の笑みを見せるイメージ)がとても印象的でした。
 ホロストフスキーはマクヴィカー版『リゴレット』には2010年に主演しており、今回もプラタニアスとのダブルキャストが予定されていたそうな。たてがみの様な銀の髪と端正な顔立ち、美しいバリトンヴォイスと歌唱力、そして何といっても人柄の良さで、愛称「ディーマDima」は世界中のオペラファン、多くのアーティストや舞台スタッフに愛されました。

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2018.02.23

2018.01.16

『くるみ割り人形』TOHOシネマズ 日本橋で1日2回の上映が決定! 最大スクリーンでの上映も!!

TOHOシネマズ 日本橋で1日2回の上映が決定しました。
最大スクリーンでの上映もございますので、
いつもより大きなスクリーンでご覧いただけます。
この機会に是非、お楽しみください!

1月19日(金)12:50 / 19:30
1月20日(土)10:10 / 19:30
1月21日(日)13:00 / 19:30
1月22日(月)~1月25日(木)  12:50 / 19:30

スケジュール(TOHOシネマズ 日本橋)
https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/073/TNPI2000J01.do

作品ページ
『くるみ割り人形』

2017.12.27

【緊急告知!※更新】『不思議の国のアリス』2018年1月5日(金)からTOHOシネマズ日本橋にてアンコール上映が決定!

大盛況だった本シーズン3作目 ロイヤル・バレエ『不思議の国のアリス』が2018年1月5日(金)~11日(木)の限定一週間だけTOHOシネマズ日本橋にてアンコール上映決定!

詳しいタイムスケジュールはこちらでご確認ください↓

TOHOシネマズ日本橋スケジュール

作品詳細はこちら↓

『不思議の国のアリス』作品紹介

2017.12.25

2017.12.20

英国ロイヤル・バレエ団の“王子”ことワディム・ムンタギロフからコメント映像が到着!!

『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18』からXmasプレゼントをお届け!
英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとして活躍する“王子”、ワディム・ムンタギロフが『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18』の見どころを語るインタビュー映像が到着致しました!!

2014年より英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルを務めるワディム・ムンタギロフ。舞台上での輝きはもちろんのこと、185cmという長身且つエレガントな姿から、世界中のファンに“王子”の愛称で親しまれている人気ダンサーの1人です。昨年『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2016/17』で上映された『眠れる森の美女』においても王子役で出演しており、映画館で日本のファンを魅了しました。そしてこの度、新国立劇場 開場20周年記念公演「くるみ割り人形」のシーズン・ゲスト・プリンシパルとして来日していたワディムに『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18』についてインタビューいたしました。

インタビューでは、『不思議の国のアリス』(12月1日(金)公開)『くるみ割り人形』(2018年1月19日(金)公開)『冬物語』(4月20日(金)公開)『バーンスタイン・センテナリー』(6月8日(金)公開)『マノン』(6月22日(金)公開)『白鳥の湖』(8月24日(金)公開)といった豪華演目が揃う本シーズンの注目作や、シネマシーズンの取り組み、映画館で初めてバレエを鑑賞するお客様に向けてメッセージをいただきました。

“親日王子”としても知られるワディム、「日本は本当に大好きで、自由な時間があれば出かけるようにしています。箱根には何度か行って温泉に入ってみたり、泊まったりもしました。美しく静かでとても穏やかな気持ちになりました。現代生活は働きづめでせわしないから、旅先で1人で穏やかに過ごせる時間が大好きです。そこが日本の魅力ですね。日本食も健康的で本当に大好きです。目に入ったものは何でも買って食べちゃいます。」と来日時の楽しみを明かしました。さらに、インタビューの最後には「僕の同僚であるロイヤルバレエのダンサーは皆、日本の観客が大好きです。皆さんの応援に応えようと一生懸命練習しているので、是非観に来てください。」と日本のファンに向けてメッセージを贈りました。

2017.11.20